科学者ギルドに乗り込め
サヤ=ライリーは真剣な顔で話を聞いていた。
ロッカ=ロッタははきはきと話し、その後でギルドマスター
であるルイア=ラクレンサを見やった。
「教えてくれよ、どこにあるんだ!?」
焦ったようにすがりつく彼女に、ルイアはあくまで
冷静な笑みを向けていた。その態度に腹が立つものの、
サヤは我慢するしかない。
「ただでは駄目だな」
「なっ……!?」
ルカの眉がつりあがった。まあまあとシオンがなだめる。
サヤも怒りで拳を震わせていた。
(足元見やがって……!!)
「ギルドマスター!!」
ロッカが牙をむき出した狼のように怒り、
片手を高く上げて魔術の準備をし始めた。
ルイアはそれをかき消し、彼女の眉を吊り上げさせた。
「落ちつけよ、ロッカ。人に何かしてもらいたいと
思ったら、何かしらの代価は必要なものだぜ?」
「……分かった」
サヤはゆっくりとためらいがちに近づき、
ルイアの男にしては細い手をきゅっと握った。
彼の頬が赤くなり、全員の責めるような視線が突き刺さる。
だが、次のサヤの行動に彼に同情が集まった。
「デートでもなんでもする。だから、教えてくれ」
きらきらと目を潤ませてサヤは演技を始めた。
余談だが、隠し持っていた目薬をさしたのに気付いたのは、
ルカとエリオットとシオンだけだった。
((こいつ、人の好意を完全に利用してやがる……!!))
エリオットとシオンは思わず彼に同情した。
サヤはさらにルイアに抱きつき、上目づかいで見つめる。
「わ、分かった。話してやろう!!」
(よっし!!)
ルカは演技だと分かっても頬を膨らませるばかりだった。
ついに科学者ギルドの場所を教えてもらった『ホラーギルド』。
彼らはエリオットとルーンを、アニタたちが勝手に動かない
ための監視とギルドの護衛のために残し、居場所に彼らの
アジトに乗り込むのだったーー。
「ま、また僕女装!?」
今にも泣きそうな声が古びたビルの外で響いていた。
ルカとサヤはここのギルドに顔が割れている。
なので、今現在、サヤは男装、ルカは女装をしていた。
サヤは髪を黒いキャップで隠して短く見えるようにしていて、
黒い上着に紅のズボン姿だった。
ルカは髪の色と同じかつらをかぶらされ、淡い色の
ワンピース姿だった。目がうるうると潤み、
可憐な女の子のように見える。
(やばい、かわいい……///)
女であるはずのサヤでさえ思わず見とれてしまった。
しくしくとすすり泣く様子はまことに儚げである。
「行こうぜ、ルカ。仕方ないだろ?」
「うえええっ、リーダあああっ!!」
「馬鹿!! リーダーって言うな!!
俺のコードネームはツルギだってば!!」
サヤ=鞘=剣という連想からのあだ名である。
ルカはミコという名前で入ることになっていた。
ルカのコードネームはサヤより簡単で、
親が巫女だからである。
それぞれが男装&女装をしたりして、
ギルドメンバーは乗り込むことになっていた。
ロッカとルイアも乗り込むらしい。
「よし、行くぞ、ミコ!!」
「わ、分かりました、ツルギ……」
キッと睨みつけてくるツルギことサヤに、
ミコことルカは腹をくくって歩き出したーー。
スランプに陥り、少し執筆が遅れてしまいました。
次回もよろしくお願いします。
次のお話は夙の過去編です。