ギルドメンバーの和やかな一日!?
サヤ=ライリーは、一人用の椅子に腰かけていた。
右隣には、いつものようにルイーズ=ドラクールが、
左隣にはルーン姫がいて、大量のケーキをサヤに
食べさせている。サヤは今、訪ねてきたルイア=
ラクレンサと、大食い勝負を開始していた。
ちなみに、彼の両隣りには、ルミアと夕顔がいて、
同じように食べさせている。サヤがまだまだ余裕な
顔をしているのにもかかわらず、ルイアはもう
青ざめ、気持ちが悪そうな顔をしていた。
シオンとエリオットは、あきれたようにそれを
見ている。結局、サヤが勝利した。
「お前さあ、ヒマだよな。ってか仕事いいのかよ、
いい加減あきらめろよ」
「あきらめられるものなら二度と来ないわ!!」
ぎゃあぎゃあと言い合う二人の背後に、
黒いオーラをまとった影がやって来ていた。
巫女の吾妻夙である。
シオンとエレット以外の全員が、
ヤバイ、と思ったが、遅かった。
「あなたたち、食べ物を勝負に使ってもいいのかしら?」
全員が息を飲む。いつものように、悪ふざけに参加
していたはずの夕顔はいなかった。
三人をのぞいた全員は、正座をさせられ説教をされた。
「私、王女なのに……」
「オレはギルドマスターだぜ」
そう二人が言っても、容赦はなかった。
「知っておられないんですか、ここでは、王女も
ギルドマスターも関係ないんですよ」
説教は五時間におよび、全員は足の痛みを
訴えていた。彼女の恐ろしさを知らなかった
ルーンやルイアも、完全にそれを知ったのだった。
大きなアーモンドのケーキを全員で囲み(ゆきな・ルカは休み)、
たっぷりとお茶を飲んでから、今日は畑仕事をすることに
なっていた。ルイアもまだいるので、サヤとルーは嫌な
顔をしていた。
「ギルドに溶け込んでんじゃねえよ。とっとと帰って
仕事しろや!!」
「かたいこと言うな、サヤ。今日は二人もいないでは
ないか。私がその穴を埋めよう」
「うめなくていいから帰れっ!!」
にんじんやだいこんの埋まった畑を前に、
彼らは再びケンカを始めてしまった。
それを放っておいて、他のメンバーは畑仕事を開始する。
ルーンはやったことがないので、ルーにやりかたを
教えてもらっていた。
獣のような声が聞こえてきたのは、その時である。
「な、何これ!?」
イノシシのような獣が飛び出してくる。その獣は、
ルイアに狙いを定めてつっこんできた。
よけそこない、腹に強烈な一撃をくらう。
「ギルドマスター!! 今、回復を……きゃっ!!」
回復の光を出そうとした夙は、イノシシの角で
攻撃されてよろめいた。さらにルーの羽根を傷つけ、
サヤの髪をひと房斬り落とし、ルーンをかばった
夕顔の尻尾に傷を刻んだ。
狂ったように鳴きながら、走り回っている。
と、サヤがいきなり叫んだ。
「シオン!! 火!! 術を使え!!」
「わ、わかった!!」
邪魔をさせないように、サヤはイノシシの
前にたちふさがった。持ち前のすばしこさで
逃げ回り、傷をつけられずにいる。
シオンの術が完成した。炎の渦が、イノシシを包む。
悲鳴が上がり、渦が消えると、そこには
一人の少女がいた。
「また、やっちゃった……」
少女は平身低頭謝り、自己紹介をした。
「私、ロッカ=ロッタっていいます。
ギルドマスターの、秘書として任命されました」
「なんで、イノシシに化けてたんだ?」
「野菜の匂いをかぐと、興奮して化けちゃう
体質なんです。ギルドマスターはどこ方ですか?」
全員がルイアの方を指差した。にっこりとロッカが笑う。
何事か彼女が呟くと、縄が現れて彼をぐるぐる巻きにした。
「では、彼は連れて行きますので」
笑顔で彼を引きずって去っていく彼女に、
サヤとルーはちょっとあこがれたのだった。
ギルドマスターに天敵現る
の巻です。仕事まったく
していませんから、
ギルド教会から派遣されました。