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第六話 居場所

夜。

ハレは神父の書斎の椅子に神父と対面する形で座っていた。


「さて、ハレ君。明日出発だが、最後に教えて欲しいことはあるかい?」


神父は穏やかな声でそう言った。

俺は少し考える。

聞きたいことは、いくつもあった。

王都のこと。学園のこと。無属性魔法のこと。

だが――

俺の口から出たのは、別の言葉だった。


「……一つ、聞いていいですか」

「もちろんだ」


神父は椅子に深く腰掛けたまま、静かに頷く。


「神父様は……キーナを知ってるんですか?」


その瞬間、神父の表情がほんのわずかに変わった。


「……どうしてそう思う?」

「二十年前って言ってましたよね」


俺はゆっくり言葉を続ける。


「9大勇者が魔王討伐に向かったのも、その頃です」


部屋の空気が静かに止まった。


しばらくして、神父は小さく息を吐いた。


「……ああ。知っているとも」


そして、懐かしむように目を細める。


「私は昔、王立統合魔法学園で教鞭を取っていたと言ったね」


その言葉に、反射的に体が前に出る。


「キーナは――私の教え子だった」


「……!」


胸の奥が、強く脈打つ。


神父は続ける。


「彼女はね、少し変わった子だった」

「変わった?」

「ああ。剣を持つと、人が変わる」


少しだけ笑う。


「普段は穏やかなのに、剣を握ると誰よりも鋭い目をする」


俺は黙って聞いていた。


「学園でも有名だったよ」


神父は遠くを見るような目で言う。


「“剣の勇者候補”だとね」


胸の奥がざわつく。


「……強かったんですか」

「強かったとも」


神父は即答した。


「少なくとも、私が教えた生徒の中では一番だ」


少し間を置いて、神父は俺を見る。


「そして――」


静かに言った。


「君と、よく似ている」

「……え?」

「目だよ」


神父は小さく笑う。


「何かを背負った人間の目だ」


言葉が、喉につまる。


神父は机の上で指を組んだ。


「ハレ君」

「はい」

「王都に行けば、彼女の名前を嫌でも聞くだろう」


静かな声だった。


「英雄としてね」


そして、少しだけ表情を曇らせる。


「だが、英雄の裏側を知る人間は少ない」


部屋の空気が重くなる。


「だからこそ、君は見てくるといい」


神父は静かに言った。


「彼女が歩いた場所を」

「……」

「そして、自分の答えを見つけなさい」


俺はゆっくり頷いた。


「……はい」


神父は最後に、穏やかに笑った。


「さて」


椅子から立ち上がる。


「話はこれくらいにしておこう」


窓の外を見る。


「明日は早い。今日はしっかり休みなさい」


俺は椅子から立ち上がった。


扉に手をかける。


その時、神父が後ろから言った。


「ハレ君」

「……はい?」


振り返る。


神父は少しだけ微笑んでいた。


「学園では――剣を振るいすぎないように」


一瞬、心臓が跳ねた。

またもキーナの顔が脳裏に浮かぶ。

(ハレ!気をつけろよ!)


「……気をつけます」


そう答えて、俺は書斎を後にした。

王都編間近です!!

読んでくださりありがとうございました!!

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次の更新日は16日の月曜日の19時です!

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