表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/15

エピローグ「そして伝説へ」

 数年後。


 王国の公立図書館には、1冊の絵本が置かれている。


 タイトルは『言葉の魔法使いと、泥だらけの姫君』。


 子供たちに大人気のこの本は、ある2人の英雄の物語を描いている。


 悪い魔法使いを、剣ではなく「みんなの声」という魔法で倒す物語だ。


 読み聞かせをしていた若い母親が、子供に尋ねる。


「ねえ、このアレン総理って、本当にいたの?」


「ええ、いたわよ。今も、この国のどこかで一生懸命働いているわ」


 王都は今日も平和だ。


 広場では、次の選挙に向けた演説が行われている。


 そこには、自分の意見を堂々と述べる候補者と、それを真剣に聞く市民たちの姿がある。


 かつては「家畜」と呼ばれた人々が、今は胸を張って国の未来を議論している。


 王宮の執務室。


 少し白髪の混じり始めたアレンが、窓からその光景を眺めていた。


 隣には、変わらぬ美貌のエリスがいる。彼女のお腹は少しふっくらとしていた。


「また、選挙の季節ですね」


「ああ。うるさくてかなわないな」


 アレンは憎まれ口を叩くが、その口元は緩んでいる。


 彼が作ったのは、完璧な楽園ではない。


 喧騒と、議論と、時に争いのある、人間らしい社会だ。


 だが、それこそが彼が求めたものだった。


「あなたも、そろそろ引退ですか?」


「まさか。まだまだやりたいことは山ほどある。……それに、生まれてくるこの子のためにも、もう少し良い国にしておかないとな」


 アレンはエリスのお腹にそっと手を触れた。


 そこには、確かな未来の鼓動があった。


 机の上には、あの日から使い続けている鉄のペンが置かれている。


 剣よりも強く、魔法よりも深く、世界を変えた一本のペン。


 アレンはそれを手に取り、新しい書類に向かった。


 物語は続く。人々が声を上げ続ける限り、永遠に。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ