第12話「審判の日」
選挙の翌日、即座に「特別法廷」が開かれた。
場所は王宮の正殿。かつてアレンが追放を言い渡されたあの場所だ。
だが、立場は完全に逆転していた。
玉座の前には、鎖に繋がれたダグラスと、その取り巻きの貴族たちがひざまずいている。彼らの表情は一様に憔悴し、昨日の傲慢さは見る影もない。
裁判長席には、公正な判断ができると評判の老法官が座り、検察側にはアレンが立った。
アレンは追放された時と同じスーツを着ていた。しかし、その背中は大きく、威厳に満ちていた。
「被告人ダグラス。及び共犯者たち。君たちには国家反逆、公金横領、殺人教唆、文書偽造など、計130件の罪状がある」
アレンが淡々と告げると、ダグラスは呻くように声を上げた。
「……罠だ。これは貴様の復讐だろう……」
「復讐?いいえ、これは『清算』です」
アレンは冷ややかに見下ろした。
「私は貴方たちのように、証拠を捏造したりはしない。ここに全ての証拠がある」
運び込まれたのは、山のような書類と、記録魔石の数々。アレンが選挙戦の裏で、ガルドや協力者たちを使って集めさせた、動かぬ証拠の山だ。
「貴方は民を家畜と呼び、私腹を肥やした。その結果、何人の子供が餓死したか覚えていますか?何人の有能な若者が夢を絶たれたか分かりますか?」
アレンの声が厳しく響く。
「貴方が奪ったのは金だけではない。この国の未来そのものを食い物にしていたのです」
ダグラスは反論できなかった。事実の重みが、彼を押し潰していた。
判決は迅速だった。
全員に有罪判決。財産没収の上、鉱山での強制労働刑。死刑にしなかったのは、死んで楽になることすら許さないという、アレンなりの慈悲であり、最大の罰だった。
かつて栄華を極めた貴族たちは、みすぼらしい囚人服を着せられ、衛兵に引きずられていった。
その光景を見つめるアレンの胸には、奇妙なほど静かな感情しかなかった。
もっと高揚するかと思っていた。ざまぁみろと笑いたくなるかと思っていた。
だが、実際に訪れたのは、深い安堵と、これから背負う責任の重さへの覚悟だった。
「……終わったな」
隣にいたエリスが、そっとアレンの袖を引いた。
「はい。そして、始まりですね」
彼女の目には、もう涙はなかった。未来を見据える強い光だけがあった。




