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男が希少種になった世界で、明るいだけが取り柄の俺は敬語ツンな美人管理官に管理されています

作者: 春風

 朝の空気は冷たくて、吐いた息が白くなるのに、俺の手のひらだけがやけに熱かった。

 封筒を持つ指が震えているのは寒さのせいじゃない、たぶん、これを開けた瞬間に人生が変わると、体のほうが先に理解してしまっているからだ。


「……うわ、マジかよ」


 声に出したら、少しだけ現実になった。

 封筒の宛名は俺の名前で、しかも丁寧な明朝体で、役所っぽい赤い印が押されている。

 田中恒一。

 どこにでもいそうで、呼んでも振り向く人が五人くらい出てきそうな、何のドラマ性もない名前。


 じいちゃんが生きていたら、こう言っただろう。

 ――「恒一、役所の手紙はロクなもんじゃない。だが開けるしかない」って。


 去年、じいちゃんは亡くなった。

 両親はもっと前に他界していて、俺はこの家で、畑をいじって、季節の変化を眺めて、なんとか自分の人生を続けていた。

 田舎の暮らしは不便で、退屈で、でも変化が少なくて、だからこそ俺にはちょうどよかった。

 変化っていうのは、いつも人を置いていくから。


「供給者適合通知」


 文字を読んだ瞬間、頭の中が一瞬だけ真っ白になった。

 ニュースで聞いた単語だ。

 男が少なくなった世界で、国が“人類存続”のために適合者を管理する制度。


「え、待って。俺? いやいや、俺の人生、そんな派手なイベント入ってないんだけど」


 笑ってみた。

 笑うしかない。

 だって、じいちゃんはいないし、相談できる相手もいないし、畑は俺の不安なんて一切気にせずに朝露を光らせている。


 そのとき、玄関のほうで、車の音がした。

 都会みたいな静かな車の音。

 この町の軽トラとは別の、音の立て方を知っている車。


「……は?」


 玄関を開けると、そこに立っていたのは“答え”そのものだった。


 黒髪ロング。

 眼鏡。

 背筋がまっすぐ。

 スーツの襟元まで無駄がなくて、表情も無駄がなくて、ただ目だけが、こちらの呼吸の速さまで測るみたいに冷静だった。

 年は、俺と同じくらい。

 それが妙に刺さる。

 同じくらいの年の誰かが、俺の人生を“業務”として処理しに来たって事実が、やけに残酷に感じる。


「田中恒一様でお間違いありませんね」


 敬語は丁寧で、声は綺麗で、でも温度がない。


「……はい、田中です。えっと、どちらさま?」


「政府生殖管理局の者です。突然ですが、本日付で田中様は供給者候補として指定されましたので、ご説明とお迎えに参りました」


「“突然ですが”って便利な言葉だよね、たぶん人生で一番突然なこと言っても許される魔法の前置きだと思う」


「前置きではなく事実です」


「うん、事実が一番強いの、やめてほしい」


 俺が軽口を叩くと、彼女はまばたきを一つだけした。

 その一つが、彼女の感情の最大値に見えてしまうのが怖い。


「……本日中に移動していただきます。必要物資は施設側で用意しておりますので、田中様は身一つでも問題ありません」


「身一つって、俺の心の準備は物資に入らないの? オプション? 課金したら付く?」


「感情的準備は業務上考慮されません」


「言い方が刺さるなぁ……あのさ、俺、拒否とかできる?」


「できません」


「即答で心が折れる音がした」


「法律に基づく指定ですので」


「法律って言えば何でも通ると思ってない? いや通るんだろうけど」


 俺は玄関の柱に背中を預け、空を見た。

 山の向こうはいつもと同じ色で、いつもと同じ朝なのに、俺の中だけ別の季節に移動したみたいだ。


「……名前、聞いていい? 俺の人生を連れていく人の」


「私の氏名は守秘対象です」


「えー、そこは名刺とか欲しいんだけど」


「ですが、担当官として呼称が必要でしたら“担当官”で構いません」


「それ、距離の取り方が強いな。じゃあさ、担当官さん」


「はい」


「同い年くらいに見えるけど、マジで? 俺、年上の人に連れて行かれるなら、もうちょい諦めつく気がするんだけど」


「年齢は業務上必要ありません」


「必要だろ、俺の心の平和に」


 彼女は目線を逸らさず、淡々と言った。


「田中様、出発の準備をしてください。これはお願いではなく手続きです」


 その言い方が、妙に……ぞくっとした。

 怖さと、逆らえない感じと、でも声が綺麗で、敬語で、距離が一定で、だからこそ。

 俺は自分の神経が、変なところで反応してしまうのを感じて、慌てて笑った。


「分かった分かった、逃げないって。ていうか逃げても山しかないし。ちょっとだけ荷物取ってくる」


「必要最低限で構いません」


「最低限って、何を最低限とするかが人生の分かれ道なんだよなぁ……」


 俺は部屋に戻り、じいちゃんの遺影に目を向けた。

 写真の中のじいちゃんは笑っている。

 この笑顔に、俺は一番言い訳ができない。


「じいちゃん、俺さ、都会行くらしいわ。いや、連れて行かれるんだけど。……笑ってる場合じゃないんだけど、俺、笑うしかないんだわ」


 遺影は、何も答えない。

 だから俺は、リュックを一つだけ背負って外に出た。

 変化に置いていかれないように、変化のほうに飛び込むしかない。



 車内は、静かすぎて、密閉されていて、俺の呼吸音だけがやけに大きく聞こえた。

 担当官さんはタブレットを操作していて、指の動きが綺麗で、無駄がない。

 その無駄のなさが、余計に“業務”を感じさせる。


「ねえ、担当官さん」


「はい」


「俺さ、いまから何されるの? ほら、ニュースで見たことはあるけどさ、説明ってだいたい薄くない? “安心してください”って言う割に、何が安心なのか一切教えてくれない感じで」


「概要は説明します」


「お、珍しく優しい」


「業務ですので」


「はいはい、業務ね。で、概要って?」


「田中様は適合率が非常に高く、供給者候補として保護施設に入所します。入所後は健康管理、生活管理、定期検査を受けていただきます」


「“生活管理”って単語がすでに怖いんだけど、俺の生活、誰かに管理されるほど立派じゃないよ?」


「立派かどうかは関係ありません」


「いや関係あるだろ、俺のプライドが」


 担当官さんの口元が、ほんの一瞬だけ動いた。

 笑いかけたのか、ため息なのか分からないくらいの微細な動き。

 それでも俺には、なぜかそれが“デレの芽”に見えてしまって、心が落ち着かない。


「田中様、勘違いをなさらないでください」


「勘違いって何を?」


「あなたは希少な存在です。あなたの安全が最優先です」


「希少って、あれだろ。田舎の道の駅にある“限定品”みたいなやつ」


「例えが不適切です」


「でも分かりやすいじゃん。限定品って言われるとさ、ちょっと欲しくなるじゃん」


「……需要の話をしているのではありません」


「いや、需要の話になるでしょ。だって俺、都会行ったら視線集めるんでしょ?」


 担当官さんはタブレットから目を上げ、俺を見た。

 眼鏡越しの視線は、やっぱり冷静で、でもどこか“測っている”みたいだった。


「田中様は、都市部では注目されます。ですが不用意に受け止めないでください。あなたに接触できる者は制限されています」


「制限って、どのくらい? 俺、触られたら溶けるとかじゃないよ?」


「そのような冗談はお控えください」


「冗談だって。……いや、冗談じゃなくなる可能性もあるか。都会こわ」


 俺が笑うと、担当官さんは視線を戻した。


「不安ですか」


「そりゃ不安だよ。けど、俺がここで暗くなってもさ、誰も助けてくれないし、じいちゃんもいないし。だから、明るくするしかないんだよね」


「……」


「担当官さんさ、感情ないの?」


「あります」


「あるんだ」


「ですが、業務上表に出しません」


「それ、逆にえらいな。俺、顔に全部出るタイプだから、絶対無理」


 担当官さんは、少しだけ間を置いて言った。


「……それは、長所でもあります」


「え」


「緊張を和らげる、という意味で」


 その一言が、妙に胸に残った。

 敬語で、淡々としているのに、褒められた瞬間だけ、距離が数センチ縮まった気がした。



 都会の入口に差し掛かったとき、まず空気が違った。

 人の匂いが濃くて、音が多くて、視線が多い。

 そして――女が多い。想像よりずっと。


「……え、ちょっと待って。ニュースで“女性比率が高い”って言ってたけどさ、これは高いとかじゃなくて、世界が偏ってない?」


「偏っています」


「認めるんだ」


「事実ですので」


 歩道を歩き始めた瞬間、視線が刺さった。

 刺さった、という表現が正しい。

 柔らかいはずの視線が、数が多いと武器になる。

 そして、目が合う。

 逸らしてくれない。

 むしろ、確かめるみたいに見てくる。


「……俺、今日からなんかの展示物?」


「男性が珍しいだけです」


「その“だけ”が重い」


 すれ違いざま、香水の甘い匂いが混ざって、息が詰まる。

 胸元が開いた服、体のラインが分かる服、足の長さが目に入るスカート。

 田舎では見ない情報量が、視界に洪水みたいに流れ込んでくる。


「担当官さん、あのさ」


「何でしょう」


「俺、見られすぎて変な汗出てる。たぶん顔赤い。いや、絶対赤い。俺の顔、いまトマトだと思う」


「……歩きながら顔色を気にする余裕があるなら大丈夫です」


「いや余裕じゃなくて、恥ずかしさで喋ってないと死ぬ」


 担当官さんが一歩前に出た。

 自然に。

 俺と、周囲の視線の間に、壁みたいに立つ。

 それが“庇う”に見えて、俺はつい余計なことを言ってしまう。


「今、俺のこと守ったよね? さすが担当官、俺の身の安全が最優先ってやつ?」


「誘導です」


「照れた?」


「業務です」


「敬語ツン、強い……」


 担当官さんは、淡々と歩きながら言った。


「田中様、今後は外出時に視線が集まる可能性があります。精神的負荷が高い場合は、申告してください」


「申告って言い方、また役所だなぁ」


「私の言葉遣いに文句を言う余裕があるなら、まだ大丈夫です」


「お、ちょっと煽ってきた?」


「事実です」


「事実って言えば何でも……いや、何でも通るか、この世界」



 施設は白くて、静かで、清潔で、余計なものが何もなかった。

 まるで人間の生活から“余計”を全部削ったみたいに。


「こちらが居室です」


「……ベッド狭いね」


「一人用ですので」


「一人“用”ね。なんか言い方が引っかかるな。俺、ここで一人用の生活をするんだよね? 誰かと二人用になったりしないよね?」


「そのような発想はお控えください」


「え、怒った? 俺、軽口が癖でさ」


「……田中様」


「はい」


「軽口でご自身を守っているのは理解しています。ですが、この場所では誤解を招きます」


「誤解って、どんな?」


 担当官さんの視線が、俺の唇のあたりで一瞬止まった。

 たぶん偶然。

 たぶん。

 でも俺の心臓は、そういう偶然を拾って勝手に騒ぐ。


「……あなたは希少です。言葉ひとつで周囲の反応が変わります」


「じゃあ俺、喋らないほうがいい?」


「……いいえ」


 否定が、少しだけ速かった。

 それがまた、余計に意味を持ってしまう。


「喋らないと、余計に周囲が勝手に想像します」


「うわ、それ一番いやだ。俺のこと、勝手に盛られるやつだ」


「……はい」


 担当官さんは咳払いをひとつして、タブレットを見た。


「本日は入所手続きと初回検査のみです。緊張されるとは思いますが、危険はありません」


「危険はない、って言い方がさ」


「何でしょう」


「危険じゃなくても、恥ずかしいとか、気まずいとか、そういう危険はあるよね?」


「……田中様」


「はい」


「それも含めて、業務です」


 淡々とした声。

 でも、ほんの少しだけ、耳が赤い気がした。

 眼鏡のせいで確信が持てないのが、余計にずるい。


「ねえ、担当官さん」


「何でしょう」


「さっきから業務業務って言うけどさ、担当官さんも同い年くらいなんでしょ? 俺だけが恥ずかしいの、なんか悔しいんだけど」


「悔しがる必要はありません」


「あるよ。だって俺、田舎者だよ? 都会の女だらけの視線で今すでに心が半分溶けてるのに、ここで検査とか言われたら、俺の自尊心が残り三割くらいになる」


「……その程度で済むなら、良いほうです」


「え」


「冗談です」


「担当官さんが冗談言った!? やば、記念日じゃん」


「業務ですので」


「戻るの早い!」


 担当官さんに案内されて廊下を歩く。

 白い壁、白い床、白い天井。清潔すぎて、逆に俺の考えが全部反射して戻ってくるみたいだった。


「田中様、こちらへ」


「ねえ担当官さん、さっきから気になってるんだけどさ、施設の人、全員女じゃない? 俺、男の職員さん一人も見てないんだけど」


「当然です」


「当然!? その当然、俺の中では全然当然じゃないんだけど」


「男性職員は極めて希少ですし、供給者に対して心理的負荷を与える可能性がありますので、原則として配置されません」


「心理的負荷って、俺が男を見ると落ち着くとかじゃなくて、たぶん逆だよね? つまり、女ばっかのほうが“良い”って判断されたってことだよね?」


「そのような言い方は――」


「いや分かってる分かってる、適切じゃないんだろ? でもさ、俺、田舎で一年以上ほぼじいちゃんとしか喋ってない期間あったんだよ? そこにいきなり女だらけの美人しかいない世界に放り込まれたら、負荷って意味ではむしろ過積載なんだけど」


「……田中様の生活歴は把握しております」


「把握しすぎで怖い」


「ですので、段階的に慣れていただきます」


「段階的って、今日一日で心臓何回止まるかの段階?」


「そのような比喩はお控えください」


「控えたいけど、控えたら俺が自分を保てない」


 担当官さんは、ほんの一瞬だけ歩みをゆるめた。

 俺が追いつきやすい速度になる。

 そういう“無言の配慮”が、いちいち刺さる。


「田中様」


「はい」


「あなたは今、不安と緊張が混ざっています。会話でそれを薄めている。……それ自体は悪いことではありません」


「お、急にカウンセラーみたい」


「業務ですので」


「はいはい」


 でも、続く言葉が少しだけ違った。


「……私が、聞きます」


「え」


「無理に黙らなくて結構です。質問があるなら、私が答えます」


 言い方は敬語で、顔は相変わらず真面目で、ツンの圧は強い。

 それでも、“聞く”って言葉が、俺の中の緊張を少しだけほどいた。


「じゃあさ」


 俺は深呼吸して、ちゃんと聞いた。


「検査って、何するの。俺、田舎の健康診断くらいしか知らない。身長体重と血圧と、あと視力で『目悪いね』って言われて終わり。都会の検査って、なんか…こう、やたら細かいイメージある」


「田中様の適合率を再確認し、健康状態を把握し、施設内生活の条件を決めます」


「条件?」


「食事、運動、睡眠、外出範囲、接触許可のレベルなどです」


「接触許可って言葉がもうドキッとするんだけど、俺、普通の生活を返してほしい」


「普通はすでに崩壊しています」


「現実が硬い」


「……田中様」


「はい」


「ここは、あなたの自由を奪う場所ではなく、あなたを守る場所です」


「守るって言葉さ、優しいのに、同時に逃げ道を塞ぐ言葉でもあるよね」


 担当官さんは、一度だけまばたきをして、言い直した。


「……あなたが壊れないようにする場所です」


 その言葉は、さっきよりも生々しかった。

 俺は笑って誤魔化そうとして、うまく笑えなかった。



 検査室の前で、担当官さんは立ち止まった。

 扉は重く、取っ手は金属で冷たい。

 扉の向こうには、まだ見えない何かがある。


「田中様、事前に申し上げます」


「うん」


「検査は医療行為です。恥ずかしさを感じる場面はありますが、あなたの尊厳を損なう目的ではありません」


「尊厳って言葉が出る時点で、だいぶ尊厳が揺れる気配がするんだけど」


「……揺れないようにします」


「それ、担当官さんが?」


「はい」


「え、担当官さんも入るの?」


「立ち会いは必要です。あなたの精神状態が不安定になった場合、責任者が対応する規定ですので」


「精神状態が不安定になったらって、俺いま不安定の予備軍だよ」


「ですので、私がいます」


 敬語で言われると、妙に説得力が出る。

 そして、妙に逃げられなくなる。


「……じゃあさ」


「はい」


「俺が変な想像したら、その時点でアウト?」


「変な想像をすること自体は、規則違反ではありません」


「え、そこは許されるんだ」


「ただし、言動に出した場合は、矯正の対象になります」


「矯正って言葉も怖い」


「田中様」


「はい」


「深呼吸してください」


「はい」


「それと、目線を無理に逸らそうとしないでください。逸らすほど、逆に意識します」


「いや無理じゃない? それ、試験の『緊張するな』と同じだよ」


「……では、正直に言います」


「うん」


「あなたが緊張しているのは、当然です。ですので、緊張したままで構いません」


 担当官さんは、そこで一瞬だけ声を落とした。


「私が、指示します」


 その言い方が、やけに……心臓に悪かった。

 敬語で、淡々としていて、でも“主導権”の匂いがする。

 俺は咳払いをして、余計なことを言わないように気をつけた。


「……お願いします」


「はい。では、入ります」



 検査室の中は、眩しいほど明るくて、温度が一定で、医療の匂いがした。

 白衣の女性が二人。どちらも整った顔で、表情がプロみたいに落ち着いている。

 俺だけが場違いで、俺だけが汗をかいている。


「田中恒一様ですね。初回検査を行います。ご不明点はございますか」


「不明点しかないです、人生レベルで」


「冗談が言えるなら大丈夫ですね」


「大丈夫って何基準!?」


 担当官さんが、少しだけ俺の横に立つ。

 距離が近い。

 袖が触れそうで触れない、そのギリギリ。

 触れないのに、触れたみたいに意識してしまうのが腹立つ。


「田中様」


「はい」


「大丈夫です。……言われた通りにしてください」


「言われた通りって言われると逆に緊張するんだけど」


「今は、緊張していて結構です」


 白衣の人が説明を続ける。

 血液検査、遺伝子マーカーの確認、ホルモンバランス、体温、心拍、筋肉量、皮膚状態、睡眠傾向。

 説明が長いほど、俺の想像が勝手に余計な方向に走ろうとして、俺は慌てて自分を抑えた。


「次に、身体計測を行います。衣服を指定のものにお着替えください」


 カーテンの向こうに誘導される。

 渡された薄い検査着が、やけに軽い。


「……薄っ」


 思わず口に出したら、担当官さんが即座に返してきた。


「田中様、余計な感想は不要です」


「いや感想じゃなくて、俺の防御力の話なんだけど」


「防御力ではありません。医療上必要な仕様です」


「医療上って言葉、便利すぎる」


 着替え終えてカーテンを開ける。

 肌に布が触れる面積が少なくて、空気の冷たさが直接伝わる。

 それだけで、変に意識してしまう。

 目線をどこに置けばいいか分からない。


「……田中様」


「はい」


「私を見てください」


 担当官さんが、眼鏡越しに俺を見る。

 その視線は冷静で、でも“逃がさない”みたいに強い。


「私が指示します。あなたはそれに従ってください。……考えすぎないでください」


「考えすぎないの無理なんだけど、担当官さんの声、冷静すぎて逆に落ち着く」


「余計な評価は不要です」


「でもさ、こういう時ってさ、誰かが冷静だと助かるんだよ。俺、田舎でずっと一人だったから、誰かに『大丈夫』って言われるの、久しぶりで」


 その瞬間、担当官さんの眉がほんの少しだけ下がった。

 ツンの壁が、一瞬だけ薄くなる。


「……検査が終われば、温かい飲み物を用意します」


「え、今ちょっと優しさ出た?」


「業務です」


「業務の優しさでも、今はありがたい」



 検査は淡々と進む。

 淡々と進むのに、俺の神経は淡々としてくれない。


 計測のために腕を上げる。

 呼吸を整える。

 姿勢を正す。

 指示されるたびに、体が言うことを聞いて、頭が遅れて追いつく。


「心拍が上がっていますね」


「そりゃ上がるでしょ!」


「平常時との差を見ます。……力を抜いて」


「抜けるなら抜いてる!」


 白衣の人が笑わないのが余計に怖い。

 担当官さんは笑わない。

 施設は白い。

 俺の頭の中だけがやけに騒がしい。


 次に、カーテンの向こうへ。

 説明のトーンが、少しだけ変わる。


「次は、接触に関する検査です」


「せ、接触?」


 俺の声が裏返る。

 担当官さんがすぐに口を挟む。


「田中様、深呼吸です。……これは適合レベルの確認であり、あなたが想像しているようなものではありません」


「想像してるようなものって、俺の想像の幅を担当官さんは把握してるの?」


「……把握していません。ですが、顔に出ています」


「顔に出るな、俺」


「出ています」


「断言!」


 白衣の人が丁寧に説明を続ける。

 どこまでが医学で、どこからが制度なのか、俺には分からない。

 ただ、言葉の端々に“特別扱い”の匂いがする。


「この検査は、供給者候補の身体的・心理的反応を確認し、負荷の少ない生活導線を設計するためのものです」


「生活導線って言葉、急に建築みたい」


「あなたが過剰な負荷を感じる状況を避けるためです。……田中様、こちらへ」


 手袋越しに軽く触れられる。

 それだけで、背中が変にぞわっとして、俺は咳払いをした。


「……すいません」


「謝る必要はありません。自然な反応です」


 担当官さんが、横で囁く。


「田中様」


「はい」


「今、あなたが恥ずかしいのは分かります。ですが、恥ずかしさを“悪いもの”だと思わないでください。……あなたが人間である証拠です」


 その言い方が、反則だと思った。

 敬語ツンの人が、たまにこういう言葉を落とすから、心が揺れる。


「……担当官さん、たまに優しいこと言うよね」


「業務です」


「またそれ」


「……今は、それで良いでしょう」


 微妙に“否定しない”のがずるい。



 検査が終わった頃には、俺はぐったりしていた。

 何かをされたというより、何かを意識させられ続けた疲れだ。

 視線と距離と沈黙と、丁寧な敬語の指示。

 そして、“都会の女だらけ”という現実。


 廊下を歩く間も、すれ違う女性たちがこちらを見る。

 施設内ですら、視線はある。

 それが、規則で抑えられている分だけ、余計に濃く感じる。


「……担当官さん」


「何でしょう」


「俺、今日だけで目が何回合ったと思う?」


「数えていません」


「数える余裕ないよね。俺もない。けどさ、目が合うってさ、田舎だと『挨拶』だったんだよ。都会だとさ、なんか意味が変わってる気がする」


「意味が変わっています」


「だよね」


 俺は苦笑する。


「田舎の挨拶のつもりで目を合わせたら、都会では“合図”になる感じ。……俺、慣れないよ」


 担当官さんは少しだけ歩幅を落とし、俺と並ぶ位置に来た。

 そして、誰にも聞こえないくらいの声で言った。


「……慣れなくて結構です」


「え」


「慣れてしまうと、あなたはあなたではなくなります」


 その言葉で、胸の奥がきゅっとなった。

 田舎で一人になってから、誰にも言われなかった言葉。

 “あなたはあなた”なんて、そんな当たり前の肯定。


「担当官さん、ツンなのにたまにデレるよね」


「デレていません」


「じゃあ、それ何?」


「……注意喚起です」


「注意喚起って便利な言葉だな」


 担当官さんは、ほんの少しだけ目を伏せた。


「田中様は、今夜はよく眠ってください」


「眠れるかな」


「眠れます。眠れないなら、私に申告してください」


「申告って」


「私は、あなたの担当ですので」


 担当。

 その言葉が、さっきよりも温かく聞こえた。



 部屋に戻ると、机の上に温かい飲み物が置かれていた。

 湯気が立っている。

 担当官さんの言っていた“用意”が、もう実行されている。


「……早っ」


 カップの横に、短いメモ。


《田中様

本日はお疲れ様でした。飲んでから休んでください。担当官》


「……担当官さん、やっぱ優しいじゃん」


 俺は一人で笑って、そして少しだけ、寂しくなった。

 優しさを受け取ると、いない人のことを思い出す。

 じいちゃん。

 ここにいたら、何て言ったかな。


「恒一、都会の女に気をつけろ」

 ……たぶん、そう言う。

 その言葉、遅すぎるくらい今さらだ。


 ベッドに横になっても、目を閉じると今日の視線が浮かぶ。

 女だらけの街。

 美人ばかり。

 目が合うたびに、意味が変わる。


 それに、担当官さんの声。

 敬語で、冷静で、ツンで、でも時々だけ、触れるように柔らかい。


「……寝るか」


 寝なきゃ。

 明日も“生活管理”が続く。

 俺は資源。

 でも、俺は俺。


 そう思ったところで、部屋の端末が小さく光った。


《通知:面談予定》

《担当官:同席》


「面談……?」


 嫌な予感が、背中をなぞる。


 俺は、カップの残りを飲み干して、喉の奥の熱で自分を落ち着かせた。


「大丈夫、大丈夫……俺、明るいのが取り柄だから」


 言い聞かせるみたいに呟いて、目を閉じた。


 翌朝、目が覚めた瞬間に分かった。

 田舎の朝とは違う。鳥の声がないし、土の匂いもしない。代わりに、空調の一定の音と、壁の向こうの気配がある。

 人の気配――それも、女の気配が、建物全体に満ちている感じ。


「……夢じゃないよな」


 枕元の端末が、昨夜の通知をまだ表示していた。


《面談予定:本日 10:00》

《同席:担当官》

《内容:供給者候補 運用説明》


「運用説明ってさ、言葉がもう物扱いなんだよなぁ……」


 明るく言おうとしても、声が少しだけ乾いた。

 カップは片付けられていて、代わりに水と栄養バーが置かれていた。

 “生活管理”が始まっている。


 ――ここで、俺は守られる。

 ――でも、守られるってことは、囲われるってことだ。


 その時、扉が二回、軽くノックされた。


「田中様。起床されていますか」


 担当官さんの声だ。

 敬語。相変わらず温度が薄い。

 だけど昨日の“注意喚起”の柔らかさを知ってしまった俺は、その薄さの中に勝手に感情を探してしまう。


「起きてますー。ていうか、起きるしかないっていうか」


「開けます」


 返事を待たずに、ロックが解除される音。

 扉が開き、担当官さんが入ってきた。

 黒髪ロングはきっちりまとめられていて、眼鏡の位置も完璧、制服みたいなスーツのシワもゼロ。

 この人、たぶん“乱れ”という概念が人生に存在しない。


「おはようございます、田中様」


「おはようございます、担当官さん。朝から敬語が眩しい」


「本日は10時に面談です。身支度をしてください」


「身支度って言われても、昨日の検査着しか俺の記憶にないんだけど、今日もあれ着るの?」


「通常衣類があります。こちらです」


 彼女は俺のベッドの端に、服のセットを置いた。

 シンプルで上質そうなシャツとパンツ。サイズもぴったりだ。


「……用意良すぎて怖い。俺の体型、昨日の検査で全部バレたから?」


「はい」


「はい、って言われると急に恥ずかしくなる。いや昨日の検査の時点で恥ずかしかったけど、改めて“把握してます”って言われると、なんかこう、見えないところまで見られてる感じがする」


「必要な情報ですので」


「必要、ねぇ」


 俺は服を手に取って苦笑した。


「担当官さんってさ、男に慣れてるの?」


「業務上、接触経験はあります」


「接触経験って言い方! いや俺もその言い方してるけど!」


「余計な想像をなさらないでください」


「無理だよ、都会ってそういうところだろ?」


「違います」


「即否定!」


 担当官さんは淡々と俺を見る。


「田中様、今日は重要な説明があります。軽口は必要最低限にしてください」


「え、俺の軽口、業務効率悪い?」


「……必要最低限に、してください」


 語尾が少しだけ強い。

 ツンの圧が増した時は、だいたい彼女の中で何かが動いている時だ。昨日学んだ。


「了解。必要最低限の軽口にする。……でもさ、その“必要最低限”って担当官さんの中でどのくらい?」


「今のような無駄話が、不要です」


「厳しいなぁ。でも、分かった。今日くらいは真面目にする」


 俺が言うと、担当官さんは一瞬だけ目を伏せた。

 それが“安心”に見えてしまう自分が、少し悔しい。



 面談室へ向かう廊下は、昨日よりも人の出入りが多かった。

 すれ違う女性職員たちが、やっぱり俺を見る。

 “男性が珍しい”だけ。理屈では分かる。

 でも、目が合うたびに、体のどこかが反射的に硬くなる。


「担当官さん、これってさ」


「何でしょう」


「俺が慣れるまで、ずっとこの視線地獄?」


「慣れる必要はありません」


「昨日も言ったよね、それ。……でもさ、慣れないと生活できなくない?」


「生活は設計されます」


「設計って言葉、相変わらず俺の人生が物件みたい」


「田中様」


「はい」


「あなたは、守られます」


「……守られます、ね」


 担当官さんの声は変わらないのに、

 その言葉だけが、今日は少し重かった。


 面談室の扉の前で、担当官さんが立ち止まる。

 ノックをする指が、ほんの少しだけ止まった。

 “乱れがない人”が、ほんの少しだけ迷う。


「……担当官さん」


「何でしょう」


「緊張してる?」


「していません」


「即答。でも、今、間があった」


「……業務ですので」


「はいはい、業務ね」


 扉が開く。

 中には、白衣ではないスーツの女性が二人。

 どちらも冷静で、綺麗で、目が鋭い。

 担当官さんが“美人”なのは分かってたけど、都会の基準ってやっぱりバグってる。


「田中恒一様ですね。着席してください」


「はい……」


 椅子に座った瞬間、足が床に固定された気がした。

 逃げないけど、逃げられない。

 その感覚が、喉の奥を苦くする。


 担当官さんは俺の斜め後ろに立った。

 距離が近い。

 呼吸の気配が分かるくらい。

 それが変に安心を生むのが、余計に危険だった。


「本日は、運用説明です」


 スーツの女性が、淡々と資料を映す。

 グラフ、数字、成功率、適合率。

 どれも、俺の人生の説明なのに、俺の感情が入る余地がない。


「供給者候補は、段階を経て正式供給者へ移行します」


「段階って、何段階?」


「発言は許可制です」


 ぴしゃり、と言われる。

 俺は口を閉じた。

 担当官さんが、後ろから低い声で囁く。


「……私が許可します」


「……」


 その言い方が、昨日よりも強い。

 俺は変に反応しそうになって、必死に表情を抑えた。


「許可を」


 担当官さんが、淡々と言う。


「発言を許可します。短く、要点のみで」


「短くって言われると余計に長くなるタイプなんだけど……分かった。段階って、何段階ですか」


「三段階です。初期適応、中期安定、正式移行」


「正式移行したら、どうなるんですか」


 スーツの女性が、笑わないまま答える。


「供給成果の最大化が優先されます。生活の自由度は下がります」


「……人権とか」


 俺が言いかけた瞬間、担当官さんが少しだけ肩を強張らせた。


「供給者は国家の最重要資源です」


 スーツの女性が続ける。


「資源には保護が伴います。保護には制限が伴います。これは相互関係です」


「相互関係って、言い方は綺麗だけどさ」


 俺は喉の奥の苦さを飲み込んで、明るく言おうとした。


「要するに、俺の自由は減るけど、みんなは安心ってこと?」


「正確には、人類が延命します」


「延命、ね」


 笑いが漏れそうになって、漏れなかった。

 延命って、病室みたいな単語だ。

 人類が、患者。

 俺は、そのための器具。


「……面談の目的は理解しました」


 担当官さんが一歩前に出て、俺の横に立った。

 敬語は丁寧なのに、声の芯が硬い。


「田中様は、まだ適応段階です。圧をかける説明は不要です」


 スーツの女性が、少しだけ目を細めた。


「担当官。あなたは業務に感情を混ぜないよう指導されているはずです」


「感情ではありません。適応手順です」


「あなたの裁量を越えないように」


 空気が冷えた。

 俺の横で、担当官さんの指が一瞬だけ握られたのが分かった。

 “乱れがない人”が、乱れた。


 俺は、思わず言ってしまった。


「……担当官さん、俺のこと、守りたいの?」


 静寂。

 スーツの女性たちの視線が、俺に刺さる。

 担当官さんの呼吸が、一瞬だけ止まる。


「田中様」


 担当官さんは、敬語のまま、でも小さく、強く言った。


「その質問は不要です」


「……ごめん」


「……」


 そして、担当官さんは続けた。


「ですが」


 声が少しだけ低い。


「私は、担当です。担当として、あなたが壊れないようにします」


 それは、昨日の言葉よりもはっきりしていた。

 “業務”で覆っているのに、覆い切れていないものがあった。


 面談は、そのまま強制的に終わった。

 “次回説明は担当官を通す”と決まり、俺は部屋に戻された。



 部屋の扉が閉まった瞬間、俺は息を吐いた。

 笑う余裕もない。

 明るさが、追いつかない。


「……資源かぁ」


 田舎でじいちゃんと畑をやってた俺が、

 都会で女だらけの視線に晒されながら、

 “人類の延命”のために管理される。


「意味わかんねぇな……」


 ふと、端末が鳴った。


《面談後フォロー:担当官》

《本日 21:00 / 居室》


「……夜?」


 なんだそれ。

 フォローって言葉は優しいのに、時間が妙に生々しい。

 夜。

 静か。

 密室。

 担当官さん。


 俺は自分の心臓の音を聞いて、少しだけ嫌になった。

 こんな時に、変な方向にドキドキするな。

 俺は資源で、彼女は担当で、全部業務で――


「……全部業務、だよな」


 言い聞かせた。



 21時、ノックは二回。

 昨日と同じ。

 でも今日は、音の響きが違う。

 俺の中が違うからだ。


「田中様、入ります」


 担当官さんが入ってくる。

 昼の彼女より、少しだけ柔らかい服装。スーツではあるが、堅さが減っている。

 眼鏡はそのまま。黒髪ロングもそのまま。

 “乱れない”のは同じなのに、夜というだけで、距離が近く感じる。


「……さっきは」


 俺が言いかけると、担当官さんが先に言った。


「田中様、謝罪は不要です」


「でもさ」


「不要です」


 きっぱり。

 ツン。

 けど、そのツンが今日は震えている気がした。


「面談の内容で、心が乱れたはずです」


「乱れたよ。めちゃくちゃ乱れた。俺、田舎者で、明るいのが取り柄で、軽口で自分を守ってたのに、今日は軽口が出なかった。出したら折れそうだった」


 担当官さんは、黙って聞いていた。

 俺の言葉を遮らない。

 それだけで、妙に胸が熱くなる。


「田中様」


「はい」


「あなたは……資源ではありません」


 俺は笑いそうになって、笑えなかった。


「でも、あの人たちは資源って言った」


「制度上の分類です」


「分類ってさ、ラベル貼られた瞬間に中身が変わるんだよ。人って」


「……」


「俺、どうすればいい?」


 担当官さんの指が、膝の上で一瞬だけ動いた。

 自分の爪を押さえるような仕草。

 感情を押さえる癖。


「……田中様には、選択肢があります」


「拒否権ないって言ったよね」


「制度の拒否はできません」


「じゃあ選択肢って何」


 担当官さんは、まっすぐ俺を見た。

 眼鏡越しの視線は冷静なのに、その奥に、明らかに揺れているものがある。


「あなたの“心”の置き方です」


「心の置き方?」


「資源として扱われても、自分を資源だと思わないでください」


「無理難題すぎない?」


「無理でも、やってください」


「命令?」


「……お願いです」


 その一言で、空気が変わった。

 担当官さんが、“お願い”と言った。

 業務じゃない言葉。

 敬語のまま、距離だけが一気に縮む。


「担当官さん」


「はい」


「さっき、俺が聞いたこと」


「……」


「守りたいの?」


 担当官さんは、少しだけ目を伏せた。

 ほんの一瞬、眼鏡のレンズが光を反射して、表情が見えなくなる。


「田中様、その質問は――」


「不要って言う?」


「……」


 言わない。

 沈黙が答えになる。


 俺は、息を吐いて笑った。

 明るい笑いじゃない。

 自分を守るための笑いでもない。


「俺さ、田舎でずっと一人だった。じいちゃん亡くなってから、家に帰っても誰もいなくて、喋る相手もいなくて、夜が長くてさ。だから、こうやって誰かが来て、俺の話を聞いてくれるだけで、ちょっと救われるんだよ」


「……それは」


「分かってる。業務なんだろ?」


「……業務です」


 ツン。

 でも、声が少し震えた。


「でもさ、業務だとしても、俺、今夜は一人で寝たくない」


 言った瞬間、心臓が跳ねた。

 俺は何を言ってる。

 R15どころか、俺の理性が危ない。


 担当官さんは、動かなかった。

 でも、目線が揺れた。

 呼吸が浅くなった。


「田中様」


「はい」


「……その発言は、規則上、非常に危険です」


「分かってる。めちゃくちゃ分かってる。だから言った。言わないと、俺、今日の面談の言葉に潰される」


「……」


 担当官さんは、俺の横に一歩近づいた。

 ただそれだけで、匂いがした。

 昼よりも少し柔らかい、同じ匂い。

 近い。

 近すぎて、呼吸の熱が分かる。


「田中様、誤解しないでください」


「誤解って何を?」


「……私は、あなたを“資源”として扱いたくありません」


 その言葉が、胸に刺さる。

 ツンの壁の内側から、デレが漏れた。


「でも、制度はそうしろって言う」


「はい」


「じゃあ担当官さんは、どうするの」


 担当官さんは、しばらく黙ってから、言った。


「……今夜だけ」


「え」


「今夜だけ、私の判断で“あなたを人として扱う時間”を作ります」


 敬語のまま、顔は真面目で、でもその言葉は、明らかに“業務”を越えている。


「担当官さん」


「はい」


「それ、俺が期待していいやつ?」


「……余計な期待はしないでください」


 ツン。

 けど、近い。

 近いままツンを言うの、反則だ。


「期待しないって言われると、期待するんだけど」


「……田中様」


「はい」


「目を、逸らさないでください」


 昨日と同じ言葉。

 でも今日は、意味が違う。

 彼女の声が低い。

 敬語が、やけに甘く聞こえる。


 俺は、逃げないように、彼女を見る。

 眼鏡の奥の瞳が、揺れている。

 冷静を保とうとして、保てていない。


「……怖い?」


 俺が聞くと、担当官さんは小さく答えた。


「怖いです」


「何が」


「……あなたが壊れるのが」


 胸が詰まった。

 俺は、ゆっくり言った。


「じゃあ、壊れないようにして」


「……」


「お願い」


 担当官さんは、ほんの少しだけ息を吐いて、頷いた。


「……分かりました」


 そのあと、彼女は扉のロックを確認して、カーテンを閉め、照明を少し落とした。

 全部、静かで、正確で、でも手順が“業務”じゃない。

 俺の心臓が、うるさい。


「田中様」


「はい」


「……ここから先は、説明を省きます」


「え」


「あなたが想像するようなことを、言葉で増やしたくありません」


 言葉が長い。

 敬語が長い。

 それが、逆に色っぽい。


「でも」


 担当官さんが、続けた。


「あなたが嫌だと言えば、すぐに止めます」


「……うん」


「あなたが苦しいなら、呼吸を整えます」


「……うん」


「あなたが不安なら、私がここにいます」


 そこで、担当官さんは、ほんの少しだけ声を落とした。


「……田中様。あなたは一人ではありません」


 その言葉で、俺の中の何かが決壊した。

 田舎で一人になって、夜に押し潰されそうだった時間が、全部浮かんで、全部溶けた。


「……担当官さん」


「はい」


「名前、教えてよ」


「……守秘です」


「今夜だけでも」


 担当官さんは、少しだけ迷ってから、囁いた。


「……ユイ」


「ユイさん」


「……呼ばないでください」


「呼ぶ。ユイさん」


「……田中様、あなたは本当に」


「何」


「ずるいです」


 その言葉が出た瞬間、彼女の“ツン”が崩れた。

 敬語のまま、でも、感情が漏れる。


 俺は、彼女の手に触れた。

 手袋はない。

 温かい。

 触れただけで、昨日までの“接触制限”という言葉が遠くなる。


 彼女は、一瞬だけ硬くなってから、指を絡めるように返した。


「……田中様」


「うん」


「……今夜のことは、業務記録に残しません」


「え」


「……残せません」


 その声が震えていて、俺は思った。

 この人も、制度に縛られている。

 俺だけじゃない。


「ユイさん」


「……はい」


「明日、後悔する?」


「……分かりません」


「じゃあ、明日考えよう」


「……ずるいです」


 照明がさらに落ちた。

 会話は、途切れ途切れになって、

 言葉よりも呼吸が増えて、

 俺は最後に、彼女の敬語が崩れそうになるのを聞いた気がした。


 ――扉の向こうには、誰もいない。

 ――でも世界は、すぐ隣にある。

 ――だからこそ、この時間は、余計に熱い。


 (※ここから先は、描写を省略します)



 翌朝。

 目が覚めた瞬間、まず最初に感じたのは、いつもと違う“気配”だった。


 隣に、呼吸がある。

 空調の音よりも小さくて、でも確かに生きている音。

 俺は、恐る恐る横を見る。


 ユイさんが、眼鏡を外したまま眠っていた。

 黒髪が枕に広がっていて、普段の“完璧”が少しだけ崩れている。

 その崩れが、やけに美しくて、俺は息を止めた。


「……やば」


 声に出したら、現実になった。


 俺は、昨夜のことを全部思い出して、喉が熱くなった。

 触れた手の温度。

 近すぎる距離。

 敬語のはずなのに、どこかで崩れた声。

 そして、“一人じゃない”という言葉。


 そのとき、ユイさんのまつ毛が揺れて、目が開いた。

 眼鏡がないせいで、視線が直接刺さる。

 昨日までより、ずっと近い。


「……田中様」


 起き抜けでも敬語。

 でも、声が少し掠れていて、妙に色っぽい。


「おはよう、ユイさん」


「……呼ばないでください」


「無理。昨日言った」


「……」


 沈黙。

 ユイさんが、布団を軽く握る。

 自分の体温を隠すみたいに。


「……後悔してる?」


 俺が聞くと、ユイさんは目を逸らした。


「……確認します」


「何を」


「あなたの体調です。……異変はありませんか」


「異変って、俺の心臓がまだ速いくらい」


「……それは」


「ユイさんのせい」


「……その言い方は、不適切です」


「不適切でも事実」


 ユイさんは小さく息を吐いた。

 そして、敬語のまま、でも昨日より柔らかく言った。


「……田中様。今日から、昨日までと同じ距離ではいられません」


「うん」


「ですが」


 そこで、ユイさんは一瞬だけ、俺を見る。


「……あなたを資源として扱うのは、私は嫌です」


 その言葉が、昨日の夜より刺さった。

 “事後の余韻”の中で言われると、冗談にできない。


「俺も嫌だ」


「……ですよね」


「だからさ」


 俺は笑ってみた。

 いつもの明るい笑いに戻そうとした。


「俺たち、どうする?」


 ユイさんは、少しだけ眉を下げて、囁いた。


「……結論は、今日出します」


 ユイさんが「結論は、今日出します」と言った瞬間、部屋の空気が一段だけ重くなった。

 昨夜の熱が、まだ肌の内側に残っているのに、現実は容赦なく“昼”としてやってくる。

 そして昼は、制度の時間だ。


「田中様」


 ユイさんはベッドの端に座ったまま、眼鏡を探して手を伸ばし、途中でやめた。

 探すのをやめたのは、見つからないからじゃなくて、眼鏡をかけた瞬間に“担当官”に戻ってしまうのが怖いから、そんな気がした。

 俺は、勝手にそう思った。


「うん」


「まず、確認します。……昨夜のことは、あなたの同意があって成立した、という認識で間違いありませんね」


 言葉は敬語で、内容は固いのに、声が少しだけ掠れている。

 そのギャップが、やけに胸に悪い。


「うん、間違いない。俺が言ったし、俺が望んだ。……だからさ、もし“責任”みたいな話になるなら、半分じゃなくて全部、俺にもある」


「責任、という言い方は適切ではありません」


「じゃあ、なんて言えばいい?」


「……“選択”です」


 ユイさんは、そこでようやく眼鏡をかけた。

 カチ、と小さな音。

 その音だけで、彼女の表情が少しだけ硬くなる。


「田中様、ここから先は現実の話です」


「現実って、昨日までだって現実だったよ」


「昨日は、例外でした」


 例外。

 制度の中で最も危険な単語。

 例外は、見つかると罰になる。


「……バレる?」


 俺が聞くと、ユイさんは一拍置いて答えた。


「“完全には隠せません”。ただし、“証拠として固定しない”ことはできます」


「証拠として固定しない……?」


「監視はあります。ただ、全てが常時記録されているわけではありません。施設は“秩序を信じる設計”を一部に残しています。そこに、付け入る隙があります」


 淡々とした説明なのに、その内容が怖い。

 付け入る隙、って言葉の裏側に、“失敗すれば終わる”がある。


「……ユイさん」


「はい」


「俺のこと、守るって言ったよね」


「担当としてです」


「それ、もう業務って言わないんだ」


 ユイさんは唇を結び、少しだけ視線を落とした。


「……業務、と言えば、自分の心が壊れないからです」


「壊れてる?」


「壊れかけています」


 即答だった。

 昨日までの彼女なら、絶対に言わなかった答え。


「だから、結論を出します」


「結論って、何を」


「田中様を、この制度の“中心”に置いたまま、あなたを人として守るのは不可能です」


 心臓が、どくん、と大きく鳴った。

 つまり、それは。


「……逃げる?」


 俺が言うと、ユイさんは首を振った。


「逃亡は成功率が低い上に、あなたが捕まれば“強制運用”に移行します。自由度はゼロになります」


「じゃあ、どうするの」


 ユイさんは、テーブルの端末を操作した。

 画面に、見たことのない権限階層と、施設内の動線図が表示される。

 俺の人生が、また“設計図”として並べられる。


「……“死亡扱い”にします」


「え」


「記録上、田中恒一は“供給者候補としての適性を維持できず、事故で死亡した”ことにします」


「それ、俺が死ぬってこと?」


「“記録上”です」


「記録上でも怖いよ!」


「怖いのは当然です」


「じゃあ、なんでそんな方法を選ぶの」


 ユイさんは、眼鏡の奥で俺を見た。

 冷静に見えるのに、目だけが必死だ。


「あなたを資源として固定する制度から、あなたを外すには、“資源が失われた”と判断させるのが一番確実だからです」


「確実……」


「その代わり、あなたは“田中恒一”として生きられなくなります」


「……」


 名前。

 田舎で、じいちゃんに呼ばれていた名前。

 畑の土の匂いと一緒にあった名前。


「俺、平凡な名前が好きだったんだけどな」


「……そうでしょうね。平凡であることは、今の世界では贅沢です」


「贅沢って、悲しい言葉だな」


 俺は笑った。

 でも、ちゃんと笑えた。

 自分を守る笑いじゃなくて、覚悟の笑い。


「ユイさん」


「はい」


「それ、ユイさんはどうなるの」


 ユイさんの肩が、ほんの少しだけ揺れた。


「私は、担当官として“事故処理”を行った後、配置転換になります」


「罰じゃん」


「罰ではありません。……ただ、私は“田中恒一を失った担当官”になります」


「それ、しんどくない?」


「しんどいです」


 淡々とした声で、淡々としんどいと言う。

 それが一番、刺さった。


「……でも」


 ユイさんは続けた。


「あなたが“資源”として壊されるより、私はそのほうが耐えられます」


 長い沈黙が落ちた。

 俺は、息を吸って、吐いて、言った。


「俺さ」


「はい」


「田舎で一人になって、じいちゃん亡くなって、夜が長くて、誰かに“おはよう”って言われるだけで救われたんだよ。……それが昨日と今日で、こうなるとは思わなかった」


「……」


「だからさ、ユイさんが“しんどい”って言うなら、俺も勝手に“平気だよ”とは言えない。……でも、俺は選ぶよ。俺の人生を、俺のものとして」


 ユイさんは、目を伏せたまま、小さく頷いた。


「……ありがとうございます」


「礼を言われると照れる」


「照れてください。今だけは」


 その言葉が、少しだけ甘かった。

 敬語なのに、距離が近い。


「計画の説明をします」


「うん」


「今日の午後、あなたは“設備点検区域”に移動します。そこは監視が薄い」


「薄いって言うの、怖いんだけど」


「薄いだけで、ゼロではありません。ですので、私の指示通りに動いてください」


「……昨日も言ったよね、それ」


「昨日とは違います。今日は、あなたの人生が変わります」


「変わったのは昨日で、今日は確定って感じだな」


「冗談は必要最低限にしてください」


「それ、昨日の朝にも言った」


「本日は、必要です」


 ユイさんは、端末にいくつかの情報を打ち込んだ。

 新しい身分。

 新しい番号。

 新しい移動ルート。

 新しい生活。


「あなたは、都市外縁の居住区へ送ります。そこは“供給者制度”の影響が弱い。女性比率は高いですが、都市中心部ほど異常ではありません」


「……男ってだけで視線が刺さるの、ちょっとトラウマなんだけど」


「慣れる必要はありません」


「またそれ」


「あなたがあなたであるために必要です」


 その言葉が、昨日の夜よりも、今日の朝よりも、真っ直ぐに来た。


「……ユイさん」


「はい」


「俺、名前どうしよう」


 ユイさんは、一瞬だけ迷ってから言った。


「“恒”は残してください」


「え」


「……あなたがあなたであるために、少しだけ“元”を残すのは、支えになります」


「じゃあ……恒平、とか? めっちゃ平凡で良くない?」


 ユイさんは、ほんの少しだけ口元を緩めた。


「……平凡を愛するのは、あなたらしいです」


「やっと笑った」


「笑っていません」


「笑ったよ」


「……業務ではありません」


 その否定が、昨日までと違った。

 ツンじゃない。

 認めたくないデレだ。



 午後。

 俺はユイさんの指示通りに歩いた。

 施設の廊下は相変わらず白く、すれ違う女性たちは相変わらず俺を見る。

 でも今日は、その視線の意味が昨日までと違った。


「……これが最後か」


 “田中恒一”としてこの廊下を歩くのは。


 設備点検区域に入った瞬間、空気が少しだけ変わった。

 機械油の匂い。

 人の匂いが薄い。

 視線も薄い。


「田中様」


 ユイさんが背後から声をかける。

 敬語。

 いつもの声。

 でも、少しだけ揺れている。


「はい」


「ここから先は、振り返らないでください」


「……ユイさん」


「はい」


「最後に一つだけ」


「何でしょう」


「昨日の“例外”、俺は後悔してない。……ユイさんは?」


 ユイさんは、息を止めたみたいに静かになってから、言った。


「……後悔は、しません」


 短い。

 でも、その短さが彼女の限界だった。

 言い切るのに必要な勇気が、声に詰まっている。


「なら、よかった」


「……田中様」


「はい」


「あなたが“恒平”として生きるなら」


「うん」


「あなたは、もう“資源”ではありません。……誰にも、そう言わせないでください」


「言わせない。絶対」


 ユイさんが、端末を操作する。

 遠くで、警報ではない、ただの施設音が鳴った。

 “事故”の演出が始まる。


「三、二、一」


 ユイさんの囁きが、やけに近い。

 そして次の瞬間、通路の奥で白い煙が噴き上がり、警告灯が点滅し、職員たちの足音が増えた。


「事故だ!」


「候補者の所在確認!」


「担当官はどこ!」


 騒ぎがこちらに迫る。

 ユイさんは、俺の腕を軽く引いた。

 たったそれだけの接触なのに、昨夜の熱が一瞬だけ蘇る。


「こちらへ。早く」


「……うん」


 通路の裏側、狭いサービス通路、さらに奥の搬送口。

 そこに、目立たない車が一台停まっていた。


「乗ってください」


「ユイさんは?」


「私は戻ります」


「戻ったら、しんどいんでしょ」


「しんどいです」


「……じゃあ」


 俺は言葉を探して、結局、明るく言った。


「しんどいの、少しでも減らすためにさ、最後にちゃんと見送ってよ。俺の顔、覚えてて」


 ユイさんは、眼鏡越しに俺を見た。

 冷静なはずの目が、少しだけ濡れているように見えた。


「……覚えています。最初から、ずっと」


 その言葉は、完全に業務を超えていた。


「じゃあ、いく」


「……はい。いってらっしゃいませ」


「敬語で言うなよ、泣きそうになる」


「泣いても構いません」


「泣かない。俺、明るいのが取り柄だから」


 俺が車に乗り込むと、ユイさんは最後に、ほんの少しだけ声を落とした。


「……恒平様」


「……っ」


 初めてだった。

 “田中様”じゃない呼び方。

 それだけで、胸が詰まる。


「生きてください。人として」


 俺は、頷くしかできなかった。

 車が動き出す。

 バックミラーに、ユイさんが小さくなる。

 白い施設が遠ざかり、女だらけの都市が遠ざかり、俺の喉の奥の苦さも、少しずつ遠ざかっていく。



 都市外縁の居住区は、思ったより静かだった。

 空が広い。

 風がある。

 土の匂いが、ほんの少しだけ残っている場所。


 新しい身分証には、こう書かれていた。


《氏名:恒平こうへい

《性別:男》

《備考:保護対象外》


「保護対象外、ね」


 守られないということは、自由だ。

 自由ということは、怖い。

 でも――怖いのは、生きている証拠だ。


 歩道を歩くと、やっぱり視線はある。

 男が珍しいのは変わらない。

 でも、都市中心部の“刺さる視線”とは違う。

 ここでは、ただの好奇心で、ただの驚きで、そして少しの、温度がある。


「……目が合うな」


 俺が呟くと、通りすがりの女性が軽く会釈して、目を逸らした。

 田舎の挨拶みたいに。

 それだけで、胸の奥がじんわり温かくなる。


 夜。

 部屋に帰って、机に座る。

 紙を出す。

 ペンを持つ。


「じいちゃん」


 誰もいない部屋で、俺は小さく言った。


「俺さ、都会で一回死んだ」


 笑ってしまう。

 笑うしかない。


「でも、今は生きてる。平凡な名前で、平凡に生きてる。……贅沢だよな」


 ペン先が紙に触れる。

 俺は書く。

 人類の未来とか、制度とか、資源とか、そんな大きい話じゃなくていい。

 俺の、俺だけの話を。


 そして、ふと思い出す。

 眼鏡を外したユイさんの寝顔。

 敬語のまま震えた声。

 「ずるいです」と言った瞬間。

 「恒平様」と呼んだ最後の声。


「……会いたいな」


 その気持ちは、たぶん、資源じゃない。

 人間の、ただの欲だ。


 俺は、紙に一行だけ大きく書いた。


『俺は資源じゃない。だから、俺の物語は俺が決める』


 窓の外で風が鳴る。

 その音が、田舎の夜に少しだけ似ていた。


 俺は深呼吸して、続きを書き始めた。



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