葉叫先生が休みの間に、宝術の授業も始まった。週に四回ある体育の授業のうち二回を、校庭で行う宝術の授業にするのだ。
「まず、物を浮かせる術を学びます。はかまの右上のポケットからタイルを出しなさい。つるつるの面を先生の方に見えるようにして、人差し指と親指でつまみます」
明月たちは薄青いタイルを手に持つ。手のひらの半分くらいの大きさがあるから、指先でつまむには大きすぎる。でも、鈴木先生が「つまめ」というのだから、つままなければならない、と真面目な子たちは指先に力を入れていた。となりにいた女子、白川は手がプルプルふるえていた。
「指先を通じて、タイルに気をこめます。大きく吸った息を、指先にぬく感じです」
そんなことできるもんか、と思いながら、明月は想像する。とにかく、指先に集中していると、しびれが走った。
「はい、唱えなさい! 『浮揚』! 手を放して!」
「ふよう!」
つたないかけ声を、全員で言う。
とたん、指先のしびれがタイルにぬけていく感覚があった。
「浮いてる!」
白川がさけぶ。明月のタイルも目の高さまで浮かんでいた。
「これが宝術です! この先の人生で、あなたたちを豊かにし、人々(びと)を助ける術です。今の気持ちをよく覚えておきなさい!」
鈴木先生が勝ちほこった顔で言った。
明月も、ほこらしかった。
勝手に覚えてできる術もある。でも、こうして、学校公認の宝物を使うと、自分が少し立派になった気がした。
宝術師。
学校図書館の本だなには、偉大な宝術師の伝記がならんでいる。
翠国を治めた人たち、他国の侵入を防いだ人たち、簡単には開墾できないような土地を農地にした人たち。
その仲間入りを果たしたような気持ちになって、明月は少し、鼻息が荒くなった。
「よっしゃー、タイル飛ばすぞー!」
陸広が大声で言って、浮いているタイルに気を込めた。
「あっ、いけない!」
鈴木先生が止めようとした。
とたん、陸広のタイルはものすごい勢いで校庭を飛び、校舎の窓硝子に当たった。
ガシャンという大きな音と、校庭にいた五年一組女子たちの悲鳴、鈴木先生の「こらー」という怒鳴り声がまじりあった。
その日、五年一組の宿題は、反省文となった。