(六)葉叫先生、宙を飛ぶ〈はきょうせんせい、ちゅうをとぶ〉
歓迎会が終わると、新学年二日目の学校は、ほぼ終わりだ。
帰りの会のあと、葉叫先生は「男子!」と言って、男子だけを教室に残した。
明月は夕空と教室を出る。
すぐに、教室の中から葉叫先生葉叫の怒鳴り声が聞こえてきた。
「どういうこと! 制服の申込書、女子は全員提出したのに、男子は五人も出していませんよ!」
男子は全部で十五人くらいいる。
つまり、十人くらいは出しているということだ。
提出したにもかかわらずしかられている人がいるのはかわいそうだな、と明月は思う。
夕空が顔をしかめて、教室のほうをふり返った。
明月は首をすくめて言った。
「止めにいってもむだだよ、ああいう人は。理屈なんて通らないと思うな」
「そうだろうけど」
夕空はため息をついた。
教室の中からは物音がしない。男子もとつぜんしかられて、驚いていたり、あきれていたり、そんなの提出しなかったやつにだけ言えよ、と心の中で思っていたりしつつ、だまっているのだろう。
「行こう」
明月は夕空をうながして、立ち去ろうとした。
そのときだった。
「ああ、もう、男子ってだめなんだから」
葉叫先生葉叫がいきおいよく引き戸を開けて出てきた。
大きな音に驚いて、明月はふりかえる。
しゅんかん、目が合った。
葉叫先生葉叫がにっこり笑い、明月に、どん、とぶつかると抱きついた。
「女子のアドバイスが聞きたいな。どうやったら男子はきちんとできるようになると思う?」
明月は、葉叫先生の言葉など、聞いていなかった。ただ、急に抱きつかれたという恐怖感と、気味悪さだけが体の中をはいずっている。
「どうだろう、ええと、明月さんだっけ?」
無意識に、明月はポケットをつかんでいた。
そこには、去年の誕生日、夕空がくれた宝石が入っている。
お守りみたいなものだ。
〝さいてー!〟
明月はわきあがった気持ちを、宝石にぶつける。
そんなことをしたのは、初めてだった。
とたん、葉叫先生の体がういた。
「うわああああ」
警戒心ゼロのところにいきなり術をくらったせいか、葉叫先生は長いろうかのはしまでふき飛んだ。




