(五)一年生の歓迎会〈いちねんせいのかんげいかい〉
二日目。
教室に入ると、葉叫先生は大声で歌っていた。
ふつうなら、まだ先生は職員室にいる時間だ。
明月はびっくりして立ち止まった。
歌っているのが十年くらい前に流行ったアニメ映画の主題歌だというのもびっくりした。
それから、六年前に伝説の六年生の修学旅行で行方不明になった先生だということを思い出す。
おそらく、あれから、はやりの情報が更新されていないのだ。
「ああ、えーっと」
葉叫先生は明月を見て、首をかしげた。
明月の名前がわからないのだろう。
「明月です。おはようございます、葉叫先生」
「明月さん。名前くらいわかっていましたよ」
うそつけ、と思いながら、明月はだまっていた。
「あなたは礼儀正しい子だね。女子は成長が早いもんね」
これくらいのあいさつなら、陸広は無理でも水沢ならするのになあ、などと明月は思った。が、やはり、だまっていた。
「今日はあなたがいちばん乗りです。よかったね。……ああ、先生の方が先に来ていたから、先生がいちばん乗りか!」
何がおもしろいのか、大声で笑う。
全体的に、声と動きが大きい先生だ。
ともかく、昨日みたいにいきなり小言を言われなくてよかった。
学年の二日目は、一年生の歓迎会と決まっている。
五年一組の児童たちがそろうと、さっそく体育館に移動になった。
二年生から六年生が体育館に集まったところで、一年生が入ってきた。
三年生と四年生の間にできた通路を通って、舞台に上がっていく。
明月は、自分たちもこんな時期があったな、と目を細める。こうしてみると、数才しか変わらないのに、一年生は小さくてかわいい。
一年一組の担任の先生である木下先生が、一年生たちをきれいに並ばせて、他学年の児童たちと対面させた。
「六年間、よろしくお願いします」
一年生たちがそろっておじぎをするのを見て、明月たちは拍手をする。まわりの様子をうかがいながら、少しおくれて頭を下げる子などもいて、かわいらしくてしかたない。
これが高学年の気持ちか、などと思いながら、明月はとなりに座っていた夕空とうなずきあった。
児童会長の六年生が舞台に上がり、一年生たちにあいさつをした。緊張した顔をしている一年生たちが、いっせいに児童会長の顔を見る。この素直さも、かわいい。
すっかり一年生に見とれている間に、歓迎会は終わった。




