(四)五年一組の一日目〈ごねんいちくみのいちにちめ〉
始業式が終わると、体育館から五年一組の教室に移動する。
陸広も水沢も不安そうな顔をしている。明月も不安だった。
クラスの先頭には、なぞの教師・葉叫がいる。
近くで見ると、葉叫の服はやっぱり不思議だった。革の表面には動物の毛が生えている。革にはいくつも切れ目がある。中に、ポケットがあるのだろうか。
両方の肩を振るようにして、葉叫はのしのし歩いていく。そのたびに、上着と同じ革で作られたはかまのすそが、ばさりばさりと音を立てる。
「さあ、ここがわが居城!」
五年一組の教室に着くと、葉叫が大声で言って、ドアを思いっきり引いた。壁に当たった戸板が、バンと大きな音を立てる。
優等生の夕空も、さすがに顔をしかめていた。
「きょじょう……居住の居か?」
水沢がつぶやく。陸広が「げ」と小さな悲鳴を上げる。
「こいつ、教室に住むの」
そのときだった。
葉叫が振り返った。
「あんたたち!」
陸広が水沢の腕にしがみついた。葉叫があおるようにあごを上げ、冷たい目で二人を見下ろした。
「ここの男子はなってない」
そう言い捨てると、葉叫は教室に入っていく。
ろうかに置いてけぼりになった明月たちは、ぽかんとした。
「ええと」
夕空がこまった顔で首をかしげる。
「私たちは後ろのドアに回って、そちらから教室に入ろうか。いいかな、それで」
五年一組の児童たちは、となりの子と顔を見合わせ、うん、とうなずいた。
「じゃあ、行こう」
水沢が最初の一人になって、後ろのドアから教室に入った。陸広たちも続く。夕空はみんなが入ったのを見守るように、最後に入ってくる。
「じゃあ、出席番号順に座って」
葉叫はぶっきらぼうに言う。みんながとまどいながら座ると、黒板の上にある時計を見た。
「はい。みなさんが座るまでに三分かかりました。こんなことでは、まともに野外活動できると思えません。夏の林間学校までに、ちゃんとできるようにしますよ」
それから、紙のたばを取ると、頭上にかかげた。
「宝術学校の制服の申込書を配ります。明後日までに提出するように。ああ、あなたたち、ていしゅつ、ってわかる?」
「家で書いてきて、先生に出せばいいんでしょ」
おろかな男子の一人が言った。
葉叫がにらんだ。
「ちがいます。先生にお出しすればよいのですね、と言うのが正しい」
この手の先生か、と明月は、まだ一日目なのにうんざりした。




