(三)五年生の担任〈ごねんせいのたんにん〉
さて、残る先生のうち、まだやさしいのは、書道が得意な森井先生、体育の鈴木先生くらいだ。ほかには、存在が忘れ去られがちなくらいおとなしい静寂先生、毎朝自分で作った歌を歌いながらやってきて、クラスの子どもにも歌わせるのが悪いくせの安針先生、「創作は暴発だ!」がくちぐせで、子どもたちに一年かけて等身大の先生の像をつくらせるのがしゅみの本岡先生。
ほんとうは、水海先生という、やさしい先生がいたけれど、三月で離任してしまった。
あれ、ひとり、足りない。
明月は気づいて、体育館のかべぎわに並んでいる先生たちを見つめた。
森井先生、鈴木先生、静寂先生、安針先生、本岡先生。
あと、ひとり、立っている。
知らない先生だ。
新しく来た先生なのだろう。
ふしぎな人だ。
先生方は、みんな大人の宝術師だ。
宝術師はみんなポケットの多い服を着ている。たいていは、宝術学校の制服に似た、前合わせの着物に、はかまをつけている。
着物のえり元やそで、はかまのひだの間にたくさんの小さなポケットがあって、宝石だとか、針だとか、宝術を使うのに必要な宝物を入れてある。
それなのに、新しい先生は、腕がむきだしだ。革か、ぶあつい布で作ったふくろみたいなものに首と両手を通すあなを開けて作ったんじゃないかという服を着ている。
はかまも、上着と同じ布を使っているように見える。
「四年生。一組、森井先生。二組、鈴木先生」
ああ、マシな先生をとられた。
明月と同じことを思ったのか、五年生と六年生のあちこちから「えー」という声が聞こえた。
「静かに。五年生、一組、葉叫先生。二組、静寂先生。なお、葉叫先生は、六年前の六年生の修学旅行で行方不明になったあと、この三月におもどりになった先生です」
校長先生の説明に、五年生は、しん、とした。
六年前の六年生。
うわさできいたことがある。
修学旅行で勝手に山に入り、見つけた霊獣をからかって追いかけられた、という話だ。
けれど、うわさは六年生についてのことで、葉叫先生のことは聞いていない。
「だれだよ、葉叫って」
陸広がつぶやく。
明月も、同じ気持ちだった。




