(一)始業式前〈しぎょうしきまえ〉
翠国立宝術学校は、六才から一二才までが通う学校だ。
四月七日。
第五学年となった明月は、家から歩いて三十分ほどの、 翠国立宝術学校白鶴校に登校した。
校門に近づいたとき、五歩先に優等生の夕空の背中が見えた。
「夕空ちゃん! おはよう! 今日から五年生だねー」
明月はかけよって、となりにならんだ。
そして、見上げる。
夕空は、同じ学年の中では背が高い。
「そうだね。担任の先生、いい先生だといいなあ」
おだやかな笑み。
明月は「くうぅ」と心の中でこぶしをにぎる。この笑顔を見られたら、一日元気でいられる。
「でもでも! 五年から、宝術の実技が始まるじゃん。担任が変なのだとやだなー。きびしいとかさあ」
「それはそれで」
ゆっくりと歩く二人の横を、陸広がかけぬけていく。やんちゃなところがあるが、持ち前の明るさで人気の男子だ。
そのあとを、水沢がよゆうの表情で追いかけていった。水沢は、足が速い。陸広になんてすぐに追いつくだろう。真面目で算数や社会の成績もいい。人気というか、尊敬されている男子だ。
「陸広たちも、いっしょのクラスになるかなあ」
明月は、ふう、とため息をつく。
一学年二クラス。これが、この白鶴校の学年編成だ。むかしは最大七クラスあったというが、少子化とかで、子どもの人数がへっている。さらに、宝術学校は入学時に、一応、試験があるから、よけいに人が少ない。
「そうだね。あの子たちがいっしょだと、クラスが明るいよね……あ」
夕空が、すっと目を細めた。
前方で、水沢に追いつかれた陸広が転びそうになっている。
夕空がひとさし指を彼らに向け、目を閉じる。
とたん、あたたかい風がふいて、陸広の前に小さな雲ができた。
その上に、二人が、ぼふん、と着地した。
陸広はわけがわからず、きょとんとしている。
水沢が気づいて、ふりかえった。
「ありがとう! 夕空!」
夕空が「何でもないです」という顔をするのを見ながら、明月は、みんなとクラスがいっしょだといいなあ、と思った。
そして、始業式は始まる。




