(九)五日目、しゃうとの練習〈いつかめ、しゃうとのれんしゅう〉
葉叫先生が休んで、三日目。
宝術学校は、月曜日から金曜日まであって、土曜日と日曜日は休みだ。
今日は、金曜日。
このあと二日間は休みだ。
そのせいか、今日の宝術の授業は体育館で二時間ぶっとおしという体力勝負のものだった。
一組、二組合同で、静寂先生と鈴木先生が教えてくれる。
「みなさんにとっては、宝術が使えるようになって最初の週末です。くれぐれも身辺に気をつけなさい」
静寂先生が、長い前髪を払いのけて言った。切れ長の鋭い目が、ちらりと見える。いつもは存在感のない先生だが、今日はなんだか怖い。
並んで座っている五年生の児童たちがざわついた。
「おどしではありません。わが国での宝術師の偉業はみなさんも知っているでしょう。多くの人が、宝術師を味方につけたいと思っている。あなたがたはまだ頭がやわらかく、おかしいと思える話でも信じがちで、お菓子などをちらつかされるとついていってしまう可能性が……」
静寂先生が涙声になった。前髪で隠れた目から、ほおに涙が流れている。
「あの先生、愛情が激重らしい」
水沢がとなりにいた男子、彦星にささやいた。
彦星は水沢の幼なじみで、よくいっしょに校庭を駆け回っている。
「どういうこと」
「二組の竹伸に聞いたんだけど、担当した学年の児童全員を好きになって、自分の子どもみたいに思うってさ。竹伸が転んでけがしたら、号泣したんだって」
こちらも面倒な先生だ。
「野獣の葉叫とメンヘラ静寂で、林間学校に行くのかよ」
彦星がうんざりした声で言った。
「ああ、ええと」
鈴木先生がせきばらいして、まだ泣いている静寂先生の言葉を引きついだ。
「つまり、あなたたちは幼くてだまされやすいということです」
言い方。
今度は別の意味で、げんなりする。
「そんなわけで、今日は身を守る方法を教えます。一つは大きな音を鳴らす方法、一つは居場所をかくす方法です」
鈴木先生が、ちらりと静寂先生を見た。それからうなずいて、はかまに手をやる。
「はい、はかまのポケットから真ん中に穴のあいた玉を出してください」
鈴木先生は輪の形の緑の石を顔の前にかかげた。児童たちもめいめいにポケットを探る。
「準備できましたね。音を出す方法はかんたんです。この玉の穴に、強い風を通します。タイルを浮かしたときと同じように気をこめて。あ、陸広くん。飛ばさないよ」
陸広が「しないよ、そんなこと」とむくれる。うわさでは、家でもしこたま叱られたらしい。
「はい、できたら、唱える。『大声』!」
「しゃうと!」
児童たちの声がそろった。




