プロローグ
戦乱の果てに翠という国ができたのは、今から何万年も前のことである。
その星にはありとあらゆるものがあり、もちろん、宇宙でうまれたすべての文明の影響を受けていた。
星の人たちは、もちろん、そんなことは知らない。
ただ日々を懸命に生き、また、賢明であろうとしているだけである。
翠国は、海がちな星のひとつの島にあった。
翡翠がとれるため、その名がついたという。
さて、翠では、学問が大切にされた。武術も重んじられた。
最も重視されたのは、宝術である。
神々の力を宿したと言われる宝物を保持、つまり力を制御し、呪とよばれる言葉を用いて行使する術である。
宝術は、槍よりも弾丸よりも鋭く相手をえぐり、盾よりも固く防ぎ、数百万の兵よりも広く展開することができる。
もちろん、宝術師の能力によりけり、だが。
そのため、翠では宝術と、それを操るための一部の学問が、出世に必要なものとなった。
これから語るのは、一流の宝術師を目指す、当時十歳の少女・明月と、その敵と、友人たちの話である。
と、書いてはみたが、明月たちの話をまとめた知人によれば、「そんなにまじめな書き方をしたら本編との温度差で風邪を引く」らしい。
果たしてそうであろうか。
まずは、宝術学校で最も問題を起こした教師・葉叫との出会いと、明月たちが野外学習で経験した戦いの話をしよう。




