ルシータとドライブ
なんだかんだで帰りが遅くなってしまった。そのため外が暗くなって来ていたので、ボクの自宅までルシータに送って貰っていた。そしてお風呂に入ってご飯を食べたボクは、今ベッドの上で寝転んでいる。
因みに夢世界には一日一回しか行く事が出来ないらしい。だから今夜は互いに新しい夢しるべを見たら、明日報告する手筈になっていた。
と言うかさボク達、あんなにキスしちゃってるわけだけど、これって付き合ってると思ってもいいのかな?
……今度会った時に、それとなく聞いてみようかな? いや、でもボク達女の子同士だし、ルシータは本気じゃなかったり、一緒に戦う戦友的ななにかの友情で、慰め合ってるだけだったりしたらどうしよう?
うーん、一人で悩んでも考えが纏まらない。由香に相談してみようかな? でも色々と詮索されたら嫌だしなー。と言うかそもそも相談したら、ボクがキスをしているのがバレてしまうじゃないか。ダメだダメだ!
そうなるとルシータに直接聞くのが確実なんだけど——それはやっぱり怖くて心が折れそう。そうだ、もっと沢山デートやキスをして、より親密な関係になって気がつけばもう恋人でしかないよね、って状態にするのはどうだろう?
よし、そうと決まれば夢世界はそれどころじゃないから現実世界限定で、これからはもっと積極的にスキンシップをしてみよう。さりげなく手を繋ぐところからチャレンジだ。
そして眠りについたボクは夢を見る。前まで見ていたのとは違ったシチュエーションだけど、どうやらデートのあと暗がりでルシータとキスをしている夢を。
目が覚めたボクは困惑する。またキスの夢だ。それをルシータに言うのはなんだかおねだりしているようで、恥ずかしい。でも報告しあう手筈になっているし。
それから互いに夢を見た事だけを登校前にメールで連絡しあったボク達は、学校が終わったらルシータのお家に集まる約束をした。そうして学校に登校したボクは、お昼休みの時に机で仮眠を取るのだけど、朝と同じキスの夢を見る。
……正夢だ。
そして学校が終わりルシータのお家にお邪魔したボクは、茶菓子が出される中報告をする事に。
「ルシータはどんな夢を見たの? 」
ルシータもキスの夢だったらどうしよう?
「えーとね、浜辺で男の人を助ける夢、かな」
「えっ、それって、早く助けに行かないといけないのじゃないの? 」
「慌てなくても大丈夫だよ。夢で見たからと言っても恐らくまだその男の人は夢世界に迷い込むどころか、寝てすらいないだろうから。私は夜になったら寝る予定にしているから、恐らくその男の人も夜になってから夢世界に迷い込むのじゃないかと思っている。因みに夢世界で人を助けるのは、初めてではないからね」
「そうなんだ」
「ただし前回の藤堂の件があるから、非情かも知れないけど自分達の命が最優先で動くつもりだけどね」
「うん、わかった」
「ところでツカサはどんな夢を見たのかな? 」
「えっ、ボク? ……それがー」
言いにくい。
「それが? 」
えぇい!
「……またルシータとキスしている夢」
「えっ、……そうなんだ」
「と言っても、夢の中だけど、デートもしていたよ! それでキスはそのあと暗がりでしてたんだ。ほっ、本当だからね」
恥ずかしい。
「ツカサが言うなら、信じるよ」
そこでルシータがシャープな自身の顎に手を当てて少し考え込む。
「明後日が祝日だから、デートは明後日にする? 」
「うん」
「そしたらデートは一先ず置いておいて、男の人を助ける話に戻ろう。藤堂が言っていたけど、夢世界に迷い込んだ人が死ねば、DPになるみたいな事を確か言っていた。つまり人助けは回り回って藤堂の邪魔を出来ると言う事だ」
「うんうん」
「因みにこの街の近くに浜辺はあるのかな? 」
「うん、町外れに一カ所、山を超えた所にあるよ。ちょっと遠いけど、そこに行ってみる? 」
「そうだね、そこが怪しいだろうからね」
と言う事で、今夜ボク達の目的は人助けになった。それから帰宅して約束の寝る時間になったので、予定通り就寝する。
そして目が覚める。そこでベッドから上半身を起こし辺りを見回す。ここはボクの部屋だけど、色彩が元とは違いカラフルなため夢世界のようだ。と言うか着ている服が寝巻きだからカジュアルな普段着に着替えないと。
そうしてパジャマのズボンを下にズラしていると、部屋がノックされた。迎えに来てくれる話だったけど、……もしかしてずっと部屋の外で待っていたのかな?
そこで聞こえてくる声。
「ツカサ、いるかな? 」
「うん、ただ、今着替えているから少し待ってて」
「はーい」
そして着替えてドアを開けると、ルシータが胸の下で腕を組み壁に背中を預けるようにしてスマートに佇んでいた。
「ルシータ、もしかして待たせちゃった? 」
「いや、ついさっきまでツカサの家の周辺にいる怪物達を倒していたんだ。だから全然待っていないよ」
「あっ、そうなんだ。ありがとう」
「これくらいどうって事ない、かな。それより早速浜辺までドライブしようか」
「えっ、車で移動出来るの? 」
「そうだよ、地図アプリで確認したら徒歩で行ける距離ではなかったからね。因みに車は拝借してきた物だけどね」
「わー、ルシータとドライブだなんて、楽しそう」
そして助手席に座ったボクは、冷や汗をかく。と言うのもルシータは運転すると性格が変わるようで、かなりスピードを出した。また他に走っている車が居ない事を良い事に、交差点を曲がる時はタイヤが悲鳴を上げるドリフト走行で曲がっていった。そのためあっという間に峠を越えて目的の浜辺に着いたのだけど、ボクは寿命が縮まったような感覚に陥っていた。
そうして車から降りたボクは、絶賛膝が笑っている。
「ツカサ、大丈夫かな? 」
「うっ、うん、大丈夫だよ」
「ごめんね、運転怖かったかな? 普通に走っていたら、走行中に怪物達から襲われる危険性があるから急いでいたんだ」
「あっ、そうだったんだ。てっきりハンドル握ったら性格変わる人なのかと思っちゃった」
「はははっ、そしたらそろそろ戦闘態勢に入ろうかな」
ルシータが小さな花を咲き乱れさせて出現させた、刀と銃を手にする。
さてと、ボクも召喚合体しますか。勿論選ぶのは前日と同じ高威力の遠距離攻撃が出来る五条橋真琴。そして真琴の名を頭の中で念じる。……しかし何も起こらない。
えっ、これってどう言う事?
「ツカサ、どうかしたのかな? 」
「それが昨日無双した真琴を召喚しようとしたのだけど——」
そこで思いつく。もっ、もしかして同じキャラクターは召喚出来ないのでは? そうなると最強格のキャラばかり召喚していると、藤堂と再戦する時に手駒が無くなってしまう事態に陥ってしまう。それだけは回避しないと。
……いや待てよ、逆に藤堂と戦う時のキャラを決めてしまえば、それ以外のキャラは使える事になるわけで。
よし、藤堂戦はあのキャラにするか。と言う事で、今回ボクが召喚するキャラクターはこれだ!
頭の中で『ドの町のリル』ちゃんこと、ボクっ子『ドリル』の名を念じる。すると斜め上方の空間にキラキラと輝く光の粒子が溢れ始め、そこから冒険者の服に身を包み籠手を装備する少女であるドリルが現れた。そして降りて来たドリルがボクに重なると、溶けるようにしてボクと一体化する。
また一体化すると、ボクの服が冒険者のソレに変わる。そして髪の毛が栗色に染まると、前髪が伸びてきて左目が隠れた。
「今度のキャラクターは接近戦専用キャラかな? 」
「そうだよ、その代わり接近戦は全キャラ中ナンバーワンで、その猛攻はまるで竜巻のような破壊力があるんだ」
「へぇー、それは頼もしいね。そしたら浜辺を歩いてみようか」
満月は出ているけど、その光は地上まで届いていないようで砂浜はかなり暗かった。本当に夢世界はどこまでも不思議な空間のようだ。




