仕方がなかったとはいえ
◆ ◆ ◆
ルシータが片腕を失った!
心臓がドキンドキン鳴り響く中、無理矢理心を落ちつける。ボクがサポートしなくちゃ!
ルージュ=モードレッドの回復魔法なら腕の再生も可能なのだから。ボクは頭の中で呪文を構築させると魔法名を唱える。
「初級回復魔法! 」
ボクの手のひらが淡く青色に発光した後、青い球体が手から解き放たれ離れたルシータの負傷している腕に直撃する。するとルシータの欠損していた箇所から色白で綺麗な腕が生えて来た。
その光景を、口を真っ赤に染めながら食事をしていた藤堂が目を見開く。
「なんだ、その回復力は! ? 」
そして回復魔法を受けたルシータも、片腕と一緒に失っていた銃を再度出現させながら声を上げる。
「はははっ、凄い魔法だね」
そこで藤堂が食していたルシータの腕を投げ捨て、ボクの方に視線を向けたまま言葉を落とす。
「まずはあいつから殺るか」
そして藤堂が指パッチンすると、またコンビニの方からボクに向けて矢が飛来してきた。
「させない、かな」
そうしてルシータが刀を一振りする事で、飛んでくる矢を破壊した所で戦闘が再開される。銃を乱射しながら刀を振り回すルシータに、携帯片手にナイフ一本で応戦する藤堂。そして藤堂はルシータを振り切りボクの方へ来ようとしているみたいだけど、それをルシータが許さない。
とそこで、コンビニから一体の怪物が顔を現した。そいつは大きな身体の胸の辺りに、不気味な青白い顔を上下左右と四つ配置させており多くの腕と武器を持っている。そんな怪物が駆けてきた。こいつもボクの方へと。
「ツカサ! 」
えぇい、来るなら来い!
ボクはメイスを握り締め迎え討とうとするのだけど、援護が入る。ルシータの銃撃だ。しかし怪物はルシータの銃弾を喰らいながらも前進してくる。
そして大鎌を前面に持ち構えた怪物が、身体を捻らせて振りかぶる。そこでボクは怪物の方へと短くステップを踏む。そうして怪物の無防備な懐へと潜り込んだ。
「喰らえ! 」
ボクのメイスでの渾身の一撃が怪物の胸、四つある内の下に位置する顔に炸裂。怪物を身体ごと吹き飛ばした。
今のボクは身を守るぐらいの戦闘も出来るんだ!
そこでボクは前もって魔法を唱えて発動させておく。それは自身限定だけど、負傷した時に瞬時に自動的に回復する自動復元回復。
◆ ◆ ◆
ツカサが顔が四つある薄気味悪い怪物との戦闘を始めた。しかもどうやっているのか分からないけど、ツカサは傷ついても次の瞬間には魔法を唱えていないのに傷が癒えていた。しかも戦闘に慣れてきたのか、私が切り傷を負っても回復魔法を飛ばして来てくれているし。
藤堂はかなりすばしっこく力強い攻撃をしてきているけど、このままいけば倒せるかも知れない。
私は時読みの瞳を駆使して、致命傷の攻撃を沢山見せてくる藤堂の攻撃を防いでいく。また逆に藤堂の動きを読み、じわりじわりと追い詰めていく。そして長い時間、藤堂との戦闘を続ける私は決意する。ツカサの回復魔法を信じて、捨て身の攻撃を敢行する事を。
そうして相打ち覚悟で、ナイフで心臓を深く貫かれるビジョンが見える中、私も藤堂の心臓を狙い突きを繰り出した。そこで新たなビジョンが。それは心臓を貫かれた藤堂が、逆手に持ったナイフを私の心臓ではなく首の側面に叩き込んでくる映像。咄嗟に仰け反るけど私の首に衝撃が。喉元を深く切り裂かれた。サブマシンガンを捨て片手で血が吹き出す喉元を押さえる私をよそに、心臓を破壊された藤堂は両膝を着きおぼつかない手で空間に何やら打ち込んでいく。
あの空間に打ち込む行為はさせては駄目だ。直感でそう感じた私は、刀を振るい藤堂の両の手首を次々に跳ね飛ばす。
そうしてツカサが回復魔法を飛ばしてくれ喉元の傷が癒える中、藤堂の瞳は虹彩を失い跪いたまま動かぬ屍と化した。
◆ ◆ ◆
なんとか怪物を撃破したボクは、尻餅を付いてしまっているルシータに駆け寄ると手を差し伸べる。そして立ち上がったルシータと共に、真っ赤な鮮血で辺りを汚す藤堂を見やる。
仕方がなかったとは言え、藤堂は死んだ。つまりボク達は人を殺した事になる。なんとも言えない虚無感に襲われる。手が震える、喉が渇く。
そこで肩に手を置かれる、ルシータだ。見上げるボクにルシータは頭をゆっくり優しく撫でてくれる。そうしてボクは、ルシータの胸の中で段々と平静を取り戻していった。
そこで空気がズシリと重くなる感覚に襲われる。暗闇に包まれたはずの空は、燃えるような真っ赤に染まり時折金色や銀色に発光する。
そしていた。お人形さんのような可愛らしいドレスに身を包む少女が、脚を地から離して浮く形で。また綺麗な顔を深い皺で憤怒の表情に歪める少女の長い髪の毛は、怒りを表わすように四方八方に広がりを見せている。
「あいつは——」
ルシータが警戒の色を濃くして睨みつける少女は、十中八九藤堂心愛。
そして藤堂心愛はボク達に向けて、憎しみを搾り出すように声を響かせた。ボク達を逃さないと。しかもただでは殺さず、魂を抜き取って傷付けては修復してを延々繰り返してやるとも。
そこで地面が揺れる。建物が崩れる。そして破壊された多くのコンクリート片が宙に浮かび、真っ赤な空色に染まる。
「ルシータ、あいつ重力を操るのかも! 」
「そうだね。そしてどうやら見逃してくれそうにないらしいから、今ここで決着をつけないと! 」




