ルシータとデート②
病院の地下で太くて長い怪物ワームとの戦闘が続く。そんな中ルシータが発射した銃弾が、怪物ワームの髪が長く青白い顔の瞳に命中する。すると瞳を潰された怪物ワームは明らかに怯むと、ズリュリュッと長い通路を奥へと引っ込んで行った。
「ツカサ、追いかけるよ」
「うん」
ボク達は通路を駆ける。そして唯一霊安室の扉が開け放たれている事に気がつく。
「この中かな? 」
「そうだね、ただ入ると同時に液体が飛んでくるみたいかな。……ツカサ、その浮いている盾を三枚ぐらい私の前に展開してくれないかな? 突撃するから」
「うん、わかった。そしたら合図をくれたら盾を操作するよ」
「それでヨロシク」
そうして三枚の盾を並べてルシータの前に浮かべると、ルシータが『お願い』と言ったので盾を先に突撃させる。ルシータはその盾の陰に隠れるように駆け、霊安室に突撃する。それから怪物ワームの液体や腕攻撃を盾が受け止める中、ルシータが盾の陰から横へ飛び出した。そして姿勢を低くして駆けるルシータが、怪物ワームの眼前まで間合いを詰め刀を一閃。怪物ワームは顔がある先端の方を輪切りにされ、爆発したかのように黒霧に変わるのであった。
◆
翌日の午前中、今日はルシータとデートの約束の日。ボクは駅前広場でルシータを待っていた。
因みに待っているのはルシータが遅れて来ているからではなくて、ボクが待ち合わせ時間より早く来ているからだ。そして待ち合わせ時間五分前になって、こちらに歩いて来ているルシータを発見。ルシータもボクに気が付いたみたいで小走りに駆けてくる。
「ツバサ、おはよう」
「おはよう、ルシータ」
「今日も良い天気だね」
「そうだね」
「そしたら行こうか」
「うん」
電車に乗ったボク達は、揺られる中映画館がある隣街へと移動する。しかし流石ルシータだと思わされる。それは電車に乗っている時もそうだったけど、すれ違う男の人から女の人まで、ルシータを見た人の多くが振り返ってルシータを見ていたから。
そんな思わず見惚れてしまう切れ長の瞳に鼻筋が高い整った顔で、眉毛にかかる赤味を帯びた金色の髪を後ろで一つ結びにして背中へ垂らしている、黒のスーツを着込んでお髪と同色の眼鏡を掛けている綺麗な人である、英語の先生でありボクの最愛の人であるルシータが小首を傾げる。
「私の顔になにか付いている、かな? 」
「ううん、なにも」
「ふーん」
至近距離でルシータからマジマジと見つめられる。そのためボクは恥ずかしくて視線を逸らした。すると手を握られてクイクイ引っ張られる。そこで視線を上げるとルシータが笑みを浮かべていた。
「ツカサ、そこのドーナツ屋さんでご飯にするんだったんだよね」
「うん」
そうしてボク達は手を繋いだまま入店した。そして購入したドーナツを、席に座って食べているボク達は会話に花が咲く。夢世界でボクが召喚合体しているキャラクター達について、ルシータが質問して来たのだ。そしていつしか話題はこれから観る映画の事になっていた。
「ツカサ、一つ提案があるのだけど良いかな? 」
「うん、なに? 」
「映画の中でキスシーンがあったら、私達もキスをしない、かな? 」
そのルシータの提案に心臓が高鳴り鼓動が早鐘を打つ。ルシータとのキス、久々のキス。
「実は私も夢に見たんだ。ツカサと暗がりでキスをするのを。それで暗がりと言ったら映画館だよね、だからどうかな? 勿論夢に見たからキスをするのではなくて、私も可愛いツカサとキスがしたいからこの提案をしているのだけど」
「……うん、映画でキスシーンがあればね」
ボクは悪い女だ。今回観る色々な悪魔が出てくるアニメ映画は、漫画の原作がある。だから原作ファンのボクは展開を知っているのだけど、原作ではもろにキスシーンがあった。だから映画版も必ずあるであろうキスシーンを、ボクは知らないていで話しているから。
それから上映時間に近づいたのでドーナツ屋さんをあとにしたボク達は、映画館へ移動する。そして暗転して始まる作品。
ボクは映画の内容が頭に入って来なくて、キスの事ばかり考えていた。あと少しで問題のキスシーンだ。
チラリとルシータを見ると、ちょうど涼しい顔で飲み物を口にしているところだった。そこでボクの視線に気がついたルシータが、ボクに向けて微笑を浮かべる。
それからシーンは進み、物語の主人公と女の子の顔と顔が近付いていく。キスシーンだ。
来た、ついに来た。
するとボクの手にルシータの手が触れ、そのまま繋がれる手と手。またもう片方の手で肩を捕まれ抱き寄せられたボクは、キスシーンのスクリーンをバックに少し強引に、情熱的に、熱い熱いキスであり貪るようなキスをされる。そうしてルシータが解放してくれた頃には、映画は全くの別シーンになっていた。そして劇場の明かりが灯った辺りで、ルシータが終始抱きしめながら頭を撫で撫でしてくれていたのをやめるのであった。




