プロローグ
前に出したものを修正しています。
今度こそ完結させたいな…。
自ら解き放った炎が、城を壊してゆく。私もやがてこの炎の海に飲まれてゆくだろう。
目の前には愛しい人の愛刀を構えた城の兵士。目の前の兵士は私が死んだ後無事に城から抜け出してくれるかしら。一緒に死のうとしないよう、旦那様への手紙を彼に託した。
世間の人々は私の死をどう受け止めるのかしら?夫のために命を捧げた悲劇の奥方?もしくは石田三成に最後まで反抗した勇気ある女性?
でも知らないでしょうね。私が夫である細川忠興を愛していないことを。恨んですらいることを。結局、あの方とは憎しみ合うことでしか理解することができなかった。
夫が私を愛してくれていることは知っている。けど、私はあの方を愛することはできなかった。ならばせめて、あの方の妨げになることにはならないようにすることが、私にできる唯一だと思う。
あの方は怒るかしら?なぜ、待っていなかったのかと。なぜ、石田三成に降らなかったのかと。生きてさえいれば、助けることも可能だったのにと。
でも、私は疲れたの。愛しい人に先立たれ、愛しい人のいないこの世界を生き続けることに。こんなことを言ったら、キリスト教徒失格かもしれない。それでも、疲れてしまった。
だからね、忠興様。私のことは気になさらずあなたの思うように生きてください。この戦乱の世が終わり、誰もが自由に生きられる世の中が生まれることを珠は心より願っております。