所望する。
その青年は、学校指定の制服ではない白の学ラン姿で、いつも手に竹刀を持っていた。
ある日曜日、彼はデパートの下着売り場に行って、店員に、「ぶ、ぶらじゃあを所望する」と言った。
店員は「お姉さんかお母さんのお使いですか?」と愛想笑いをした。
「サイズはミディアム、色は白或いはピンク」
「ミディアム?」
「大きすぎず、小さすぎず」
「なんに使うんですか?学芸会の女装とか?」
「いや、眺めるのもよし、自分で着けるのもよし」
店員がドン引きする。
「私がぶらじゃあを買うのに不都合があるか?」
「い、いえ」
青年は無事、買い物を終えた。
デパートの店員の間でえらい噂になっていたが、青年は飄々として、他の買い物などにもそのデパートを使っていた。
青年は学校では勇者だった。勇者は多少の奇行も致し方ないのかも知れない。