不変のルール
イクライザーはすっかり暗くなり自分のボディーと同じ黒色に染まった外を、赤い光の軌跡を描きながら走っていた。ヘヴィードッグ改というお供を連れながら。
「マスター、二つほどいいっすか?」
「何?」
「まず敵を分断するのはまぁわかるんすけど、不完全なナイティンを一人にするのはどうかと」
「不安?」
「ぶっちゃけ。所詮ナイティンは競技用のカスタマイズ機、それが万全じゃない上に、相手は相性がよろしくないとはいえうちらが苦戦したハンマー使いなんて……マジヤバだと思うんすけど」
「AIらしくデータに基づいた妥当な判断だね。だけど、こればかりは……メグミ・ノスハートはデータで測れないんだな」
「はい?」
「あいつは昔からこういう場面でいつもぼくらの想像を超えていくんだ。所謂やる時はやる奴なのよね」
「何の根拠もない希望的観測強めの発言っすね。けど、面白い視点です。データベースの片隅に記録しておきましょう」
「そうしておいて。ぼくの望む補助AIはそういう曖昧なものも理解しておいて欲しい」
「ラジャー」
「で、一つ目が残ったメグミのことで、二つ目は?」
「まぁ、単純に……いつまで走ってるんすか?」
「あぁ、これ?あわよくばこのまま逃げ切れないかなぁ~って」
「それこそ希望的観測の極みっすね」
「やっぱ無理かね?」
「無理っすね。痺れを切らした敵がビーム撃ってきそうっすもん」
「そうなんだ……って、そういう大事なことは早く教えてよ!!」
イクライザーが慌てて後ろを振り返ったそのタイミング、ヘヴィードッグ改の銃口が輝きを放った。
「いっ!?」
ビシュウッ!!
放たれた一筋の閃光は瞬く間にターゲットに到達し、その身体を……。
バシュウッ!!
貫くこともなければ、焼き尽くすこともなく、赤い半透明のパーツに全て吸収されてしまった。
「……吸収できたのか……」
「さっきよりもエネルギー量が少なそうだったんで、多分大丈夫かなって。だからわざわざ知らせなくてもいいかなって」
「いや、知らせようよ。多分は一応知らせておこうよ……」
自らが作ったAIに不信感を抱きながらも、窮地を脱したことで胸を撫で下ろした。
「いつまでも止まる様子がなかったので、強制的に止めさせてもらったぞ」
最初に見た時のように銃口から煙を出したヘヴィードッグ改は、スラスターの噴射を止め、その巨体に合った重厚な足音をガシガシと鳴らしながら、立ち止まった。
「さすが第三世代は迫力あるね。動作の一つ一つがダイナミック」
「火力や戦闘力の点から言えば、一種の到達点だからな。持ち運びのできない部分に目を瞑れば、現代においても通じるどころか最強だ」
「だとしても我らがブルーディーに勝つには無理かな」
「かもな」
「あら?あっさり認めちゃうの?」
「個人的にもう奴には興味ない。部長になりたかったのも、動かせる金が増えれば個人的な研究資金に回せると思っただけで、ポジション自体は欲しくもなかった」
「ぼくも似たようなタイプだから気持ちはわかるよ。おうちに帰って、機械弄りでもしたらいいと思う」
「それはできない。ブルードラゴンへの興味は失せたが……お前のそのマシンに関しては気になって仕方ない!!」
ヘヴィードッグ改はビーム砲を構えると同時に発射……いや連射した。
ビシュウッ!ビシュウッ!ビシュウッ!!
「マスター、回避を」
「おう!!」
けれどイクライザーには当たら……。
ヒュッ!ヒュッ!バシュウッ!!
「ちっ!?」
一発だけ当たってしまった。吸収してダメージこそなかったが、マスク裏のディスプレイのとあるゲージを見て、ウォルは思わず顔をしかめる。
(一発で結構溜まるな……あと何発か食らったら、許容範囲を超えて、イクライザーは自壊してしまうぞ)
(吸収できるのに、わざわざ回避をしたということは、予想通り無制限にエネルギーを溜め込んでいられるわけではなさそうだな。では、お次は)
ヘヴィードッグ改の背中に背負ったコンテナが開いた。中には無数のミサイルが詰まっており、カメラとセンサーでターゲット、つまりイクライザーをロックオンすると……。
「これにはどう対処する?ジーニアス!!」
ボッ!ボッ!ボボッ!!
一斉射撃!発射されたミサイルは煙で糸を引きながらイクライザーへと真っ直ぐ迫って行く!
「わかっているでしょうけど、あれは吸収できませんよ。絶対に回避してください」
「言われなくても!ぼくはまだ死にたくない!!」
ヒュッ!ブウゥン!ブブウゥン!
イクライザーは十分にひきつけてから横っ飛び!ミサイルをまとめて回避した……が。
グンッ!!
通り過ぎたはずのミサイルが急速Uターン。再びイクライザーへと襲いかかる。
「くっ!!」
イクライザーはジグザグと蛇行しながら後退し、なんとか振り切ろうとするが、そんな彼の努力を嘲笑うかのように軌道をトレースしミサイルは追いすがる。
「しつこいな!」
「敵に嫌な思いをさせられるなら、いい兵器ってことっすね。次のバージョンアップでイクライザーにも搭載しましょう」
「次があったらね!こいつらをどうにかしないとそんな日は来ない!」
「なら、なんとかしてください」
「するよ!マルチランチャー、スピードショットだ!」
ウォルは速射性と連射性に優れるスピードショットで弾幕を張り、ミサイルを撃ち落とそうと考えた……が。
「断る」
「何でだよ!!?」
電子頭脳にあっさり却下された。
「何で!?ぼくを謀殺したいのか!?」
「するなら、もっと上手くやりますって。あなたの作ったAIは思ってるより賢いっすよ」
「怖いよ!ぼくは今、すごく怖い!!ミサイルよりもお前のことが怖くて堪らないよ!!」
「まぁ、ミサイルよりは怖いでしょうね。あれは熱源を探知して追跡してくるタイプ……フレアで簡単に無効化できるっすから」
「フレアなんてそんな都合のいいもの……あったわ!バージョン3へのアップデートの時に付けたわ!!」
「自分でした改造のこと忘れてないでくださいよ」
「ルビー……!わかっていたなら、とっとと教えてくれよ……!」
「それじゃあマスターの成長に繋がらないんで。うちはスパルタなんです」
「そんなこと頼んでいない!あぁ~!!どうしてこいつは……!!」
「イライラしない。フレア発射しますよ」
ボシュッ!!
イクライザーの背中の一部が開き、強烈な熱を内包した光源が空に向かって射出された。
ピピッ!!
それに引き寄せられるようにミサイルは進路変更。光に群がる虫のように一ヶ所に集まり……。
ドゴオォォォォォォォォォン!!
爆散した。夜空におどろおどろしい炎と煙の花が咲く。
それをヘヴィードッグ改は満足そうに見上げていた。
(吸収できない攻撃への対策も万全か。それでこそブルードラゴンと部長の座を諦めて、こちらに来た甲斐があるというも――)
バァン!!
「――の!?」
物思いに耽っているところに一撃!イクライザーの反撃だ!
「さすが第三世代……防御も一級品、ノーマルショットが効かない!」
「溜めている最中に気付かれないことを祈ってパワーショットにすべきだったっすね」
「いや、不意を突いた!それでいい!!この間に接近!近接格闘戦に持ち込むぞ!」
「エネルギーフィスト展開っすね」
「もらったものは返す……さっきのビームのエネルギーを拳に!!」
距離を詰めながら、拳を握りしめると、赤い光が手首から下を覆った。
それはまるでボクシングのグローブを彷彿とさせたが、相手や自分へのダメージを減らし、安全な試合を運ぶために装着されるそれとは違い、ただ純粋に敵を破壊するための純然たる兵器であった。
「上限一杯まで火力レベルを上げたっす。これなら命中さえすれば第三世代の装甲でも……ひとたまりもないよね!!」
イクライザーは大地を力強く踏み込み、腰をひねり、渾身の力を込め、真紅のエネルギーでコーティングした拳を撃ち出した!
ブゥン!!
「ッ!?」
しかし、ヘヴィードッグ改はその巨大な体躯に似合わぬ軽快な動きで攻撃を回避、そして右側面に回り込んだ。
「第三世代だから小回りが利かないと思ったか?確かにそうだが、無駄に力んで、パワーもスピードも乗ってないへなちょこパンチくらいは避けられるさ」
「くっ!?」
「さぁ、もう一度こっちのターンだ」
そう言うとヘヴィードッグ改は左腕の銃口を向けてきた。
(またビームか!?この至近距離ならイクライザーを撃ち抜けると思っているなら大間違いだぞ!!)
そこから放たれるのは先ほどと同様のビームだと大間違いしたウォルは、自らをさらけ出すように腕を軽く広げ、自ら銃口の方を向いた。
「違うっす!ビームは右!今向けられてるのは左!!」
「ッ!!?」
相棒の指摘で自らの勘違いに気づいたウォルはさっきまでやっていたことと真逆、身体を丸めて半身に、せめて左だけでも守ろうと、右側を銃口に晒した。
バババババババババッ!!
発射されたのは散弾、ビームではなく実弾が一回の射撃で無数の弾丸が一斉に発射された。
バギィ!!ガギィ!!
「ぐうぅ……!!?」
右側に設置された赤いクリアパーツが散弾によって破壊された。うっすらと光を帯びた破片が宙を舞うのが、ムカつくほどキレイだった。
「この赤いパーツが攻撃吸収の肝なんだろ?左半分だけでも機能できるのか?それとももうビームを撃たれても吸収で凌ぐことは不可能なのか?」
「ちっ!?ぼくの判断ミスで……!だが、まだ終わったわけじゃ!!」
完全に後悔と怒りで頭に血が昇っているウォル。そんな彼は何も考えずに再びエネルギーを纏った拳を繰り出した。
「マスター!無駄に力むなって言われたでしょ!!」
「愚かな」
ブゥン!
結果は同じことの繰り返し……当然だろう、同じことをやったのだから。赤く輝く拳はまた空を切ってしまった。
「くそ!!」
「自分もそこまでではないが……打撃のお手本を見せてやる!!」
ヘヴィードッグ改はまたまたその鈍重そうな見た目からは想像できない動きを見せた。
蹴りを放ったのである。
片足立ちになって、蹴りを振り抜いたのである!
ドゴオッ!!
「――ぐはっ!!?」
もろに蹴りを腹部に食らったイクライザーは赤いクリア部分や、黒い下地の装甲部分を撒き散らして、吹き飛び、地面に這いつくばった。
「破壊力はエネルギーフィストか担保しているんだから当てることに集中すれば良かったのに」
「ぐっ……!!」
「それにしても、いい蹴りだったっすね」
「敵を褒めてるんじゃないよ……そんな暇があったらぼくがここから勝つ方法を考えろ!」
「でも、うちが助けたらマスターの成長が……」
「ぼくを助けるのが、お前の役目だろ!!小言を耳元で呟かれたくて、お前を作ったんじゃない!!」
「まぁ、それはその通りっすけど」
「人の揚げ足を取ってばかりいるな!まず自分の足下を見直せ!やるべきことをやれよ!!」
「マスター……」
「それができないなら、黙ってろ!!」
「了解っす……」
完全な八つ当たりに見えた。窮地に追い込まれた人間が、AIに当たり散らした上に愛想を尽かされる惨めで情けない場面にしか見えなかった。
「見てられないな。みっともないにも程がある」
「T.r.Cの連中にだけは言われたくないよ。反エヴォリスト団体なんかに」
「下らない人道、倫理的視点からしたらそうだろうな。だが、研究者視点ではこの会社は悪くないぞ。どうだお前もT.r.Cに入社しないか?」
「ぼくがT.r.Cに……」
「資格は十分ある。闇属性を中心とした特級ピースプレイヤーやコアストーンが使えるエネルギー吸収能力を、上級以下のマシンで再現するとは……正直驚いた。この目で見るまで、てっきり諜報部の間違いだと思っていたくらい信じられなかった」
「ぼくは天才だからね。他の人間には無理でもぼくなら……」
「だとしたらやはりT.r.Cに来るべきだ。お前の類いまれなる才能を真に活かせるのは、法律に縛られない実験ができる我が社しかない。お前のいる場所はこんな観光地なんかではないよ、ウォルター・ナンジョウ」
ヘヴィードッグ改は手を差し出した。そこに悪意はない。本当に心の底からウォルが自分の手を取ってくれることを望んでいた。
その思いにウォルは……。
「丁重にお断りします」
頭を軽く下げて、拒絶した。その嫌味ったらしい態度に、仮面の下のナータンの顔が思わず歪む。
「何故だ?お前の態度から、法律だの常識だのに価値を見出すタイプには見えなかったが」
「それはその通りだよ。そんなもの時代によって変わる至極曖昧なものだからね。科学を解き明かして、不変のルールを見つけたいぼくにとってはどうでもいい」
「自分も同じだ」
「少し前までエヴォリストを差別したり、逆にエヴォリストがその力を使って好き放題していた時代もあった」
「そうだ。皆、我らのことを否定するが、昔はこれがスタンダードだったんだ。そういう時代が確かにあったんだ」
「そこから今の平等だとか人権だとか耳障りのいい言葉が跋扈する今の時代に変わったけど、また昔に戻る可能性だって十分あり得る。もしかしたら後の歴史ではT.r.Cの方が正しいことをしてたって評価になるかもね」
「だとしたら、躊躇うことなどないだろ。自分達と共に来い」
「だから行かないって」
「……何故だ?」
「君達がぼくの友達を傷つけたからだよ。法律や常識、道徳は歴史と共に形を変えて来たけど……友を傷つけた奴は許してはいけない、友を裏切る奴はくそだってのは、昔から一貫している不変のルールだからね。なのでぼくはお前を……倒す!」
イクライザーは改めて拒絶の意志を言葉にすると、マルチランチャーを構えた。
「そうか……残念だよウォルター・ナンジョウ。君の才能は実に惜しかったが……こうなればせめてそのマシンだけでも頂こうか」
これ以上の説得は無理と悟ったナータンは腰の後ろに装備して合った刃物を引き抜いた。するとそれはすぐに真っ赤に光り、熱を発し始める。
「ヒートダガーか」
「お前の才能に敬意を感じているのは本当だ。だからそれをこの世から消すならなら、最後の一時まできちんと感触を感じたい」
「ちょっと……悪趣味過ぎない?」
「自分をこうさせたのはお前のせいだろ。恨むんなら、肝心な時に正しい判断ができない愚かな頭を恨め!!」
ヘヴィードッグ改は赤熱化した刃を握り、全速前進……。
ツルッ
「――え?」
前に踏み出した瞬間、ヘヴィードッグ改は急に足に力が入らなくなり、何もないところで躓いたようにその巨体を傾けた。ナータンにはまるで地面が向こうから迫って来ているように感じた。
ガシャアァァァァン!!
「ぐっ!?」
そのまま受け身も取れずに倒れ、先ほどのイクライザーのように無様に地面を這いつくばる。
「何が……?」
「どうしたの?急に地面にキスしたくなった?」
「くっ!?そんなわけないだろ!!」
ウォルの挑発に腹を立てたナータンは今度こそと両腕と両足に力を込めて立ち上がろうとした。しかし……。
ガシャアァン!!
「ぐっ!?」
お手本のような尻餅。威勢だけは良かったが、結局立つことはできなかった。
「これは一体何が起こっているんだ……!!?」
「わかんないすか?思ったより大したことないっすね」
「だね。ぼくの足元にも及ばない」
「なっ!?」
ついさっきまで言い争っていたウォルとルビーが仲良く談笑している姿を見て、ナータンの頭の上に大量の?マークが浮かんだ。何が起きているのか全く理解できていないのだ。
「ありゃりゃ……思考停止っすか」
「哀れだね~。凡人というのは」
「可哀想だから、自分が敗北した現実をわかりやすく教えて上げましょうよ」
「そうだね。ぼくはアストの次くらいには優しい男だからね」
ウォルは軽く咳払いをして喉の調子を整えると、楽しげにそしてサディスティックに口を開いた。
「勝負が決まったのは、ぼくが蹴りを食らった時、あの瞬間にぼくの天才的頭脳は勝利へのロードマップを閃いた」
「蹴りを食らった時にだと……!?あの蹴りは完璧だったはず」
「うん、その通りだと思うよ。惚れ惚れするフォームだった。あれだけの蹴りを火力を求めるあまり大きく重くなった第三世代のマシンでできることは驚嘆に値する」
「当然だ……この日のために仕上げて来たからな!!」
「そこだよ!それが君の敗因だよ!」
イクライザーは嬉しそうにいまだに立てずにいるヘヴィードッグ改を指差す人差し指を上下に振った。
「あれだけの挙動をできるからには装着者自身の鍛練はもちろんピースプレイヤー自身も繊細な調整がしてあるんだと思った。その瞬間、第三世代のもう一つの弱点を思い出したのさ」
「もう一つの弱……あっ!!」
刹那、ナータンも遅ればせながら気づいた。自身の身に起きたこと、そしてウォルの頭脳に敗北したことに……。
「理解したようっすね」
「あぁ……!!持ち運びや小回り以外にも、第三世代はその大きさと重さ故に他の世代にはない弱点がある……メカマンの視点からすると特に手間のかかって厄介な弱点……姿勢制御」
「正解。その膨れ上がった巨体を制御するには、装着者の技量だけでは不可能になった。だから第三世代には他の世代以上に高度な姿勢制御プログラムが搭載されている」
「だけどそれ故に少しでも狂いが生じると立つこともままならなくなる。そのマシンのように個人に特化し、徒手空拳での戦闘を想定して緻密なセッティングをしているものなら尚更」
「だからぼくはルビーにハッキングして、そのプログラムをちょっと弄ってくれないかって頼んだんだ」
「あなたもその目で見てましたよね?」
「人の揚げ足を取ってばかりいるな!まず自分の足下を見直せ!やるべきことをやれよ!!」
「あれは……そういうことだったのか……!!」
マスクの下でナータンは屈辱と悔しさで顔を醜く歪めた。愛機の泣き所をちゃんと把握し、注意していたらあの時、あの言葉を聞いた瞬間、敵の思惑に気づけたかと思うと悔やんでも悔やみ切れなかった。
「相棒に要求を伝えていることを隠すために喧嘩したフリを……!」
「それプラス油断させるためだね。実のところ、この作戦の成否はルビーがハッキングするまでの時間、ぼく一人であんたの攻撃に耐えられるかどうかだった。正直あんたがぼくを勧誘し出した時は……心の中でガッツポーズしたね!」
「あらゆる意味であれは無駄な時間だったか……」
「本当にね。おかげでうちも落ち着いてハッキング作業ができましたよ。色々とOSの方もアップデートしてたのは良かったっすけど、うち相手には無意味。都市部、湿地、砂漠、雪原……場所別のセッティングが目まぐるしく入れ変わるように細工させてもらったっす」
「あらま。それじゃあまともに立てないね~」
「なら!!」
「武器の使用も簡易的にロックさせてもらいました。ミサイルもビームも使えないっすよ」
「くうぅ……!!」
「さてと……楽しい講義はここまで」
「そろそろ……」
「「終わらせましょうか」」
イクライザーは倒れているヘヴィードッグ改にマルチランチャーを向けると、エネルギーを充填し始めた。そして……。
「T.r.Cに誘ってくれたこと、ちょっと嬉しかったよ」
「うちも戦闘中のリアルタイムハッキングの経験ができて楽しかったっす」
「でも、だからといってぼくの友人を傷つけた罰は受けてもらう」
「マルチランチャー、パワーショット、とっくにセットアップ済み。いつでもいけるっす」
「んじゃ発射」
ドシュウン!!ガシャアァァァァン!!
「――ッ!!?」
放たれた弾丸の動きは鈍かったが、身動き取れないヘヴィードッグ改というデカい的を外すわけもなく、見事に命中し、装甲をめためたに破壊すると装着者であるナータンを外に放り出した。
「ふぅ……イクライザーV3大勝利……だけど、あれ死んでないよね?一切動いてないけど」
「ハッキングした時にマシンの耐久力を把握した上で加減したから大丈夫なはずっす……多分」
「………ぼくはぼくの作ったAIの言葉を信じる!!」
ウォルは現実から目を背けた。
「ん?」
「どうした?まさかやっぱりあいつ死ん……」
「いや、メグミさんから連絡っす」
「そっちか。何の連絡……って大体わかるけどね」
そう呟くウォルの顔には優しい笑みが浮かんでいた。
「嬉しそうっすね」
「うるさい!早く繋いで!」
「はいっす」
『……ん?ウォルか?』
「ぼくだよ。勝ったんだね」
『その感じだと、そっちもか』
「もちろん。ただこれ以上の戦闘続行はきついね」
『おれもだ。そもそもナイティンは無理矢理動かしてる状態だったしな』
「ならぼくらの戦いはここで終わりか」
『またあいつに重荷を背負わせるのは癪だが……』
「我らがブルードラゴンに任せよう。ぼくらはPeacePrayerらしく……祈ろう。あいつが無事に帰って来ることをね……」
見上げた夜空に浮かぶ星が、アストの覚醒形態の金色の瞳に見えて、ウォルは改めて申し訳ない気持ちになった。




