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No Name's Awakening  作者: 大道福丸
狙われたブルー
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どうせこれっきり

「ほっ!」

「あらよっと!!」

 コナーエレキとモーノエレキは三階から飛び降り、一階の広場に。いまだに倒れているハイエナ獣人の近くに降り立った。

「てめえら……!!」

「そんなに睨むなよトシムネちゃん」

「ワシらが仇を取ってやろうと言うんじゃ。むしろもっと喜べ」

「喜べるかよ……!順番も守らなければ、二人がかりでなんて……」

「卑怯って蔑むか?」

「別にいいぞ。お前にどう思われようと別にどうでもいいからの」

「くっ!?」

 手も足も出ないトシムネをニヤニヤと嘲笑しながら、通り過ぎると二体のジベ・エレキは本来のターゲットであるアストの下に。彼もまだ不意に食らった電撃の影響で立ち上がれずにいる。

「よお、ブルードラゴン。オイラは秘密結社T.r.C第二特殊工作部所属コナー」

「同じくモーノだ。以後お見知りおきを……しなくてもいいか」

「どうせこれっきりだしな」

「「ぎゃはははっ!!」」

 お互いに顔を見合わせ、下卑た笑い声を響かせる二人。それだけでトシムネや先ほど電話で話したナータンとやらと別種の存在だと理解するのには十分だった。

「お前ら……ナータンとは別のグループか……?」

「まぁ、同じT.r.Cの社員とするなら仲間と言えば仲間だが……」

「今は出世を争うライバル、仲良くはねぇわな」

「それならお前達二人もライバル同士だろ?なのに何で……?」

「二人とも第二特殊工作部所属って言ったろ」

「ワシら二人で組んで、手を汚してきた」

「そんな奴と争う気にはなれんよ」

「どちらかが勝てばいい……下衆には下衆の友情ってもんがあるんじゃ」

「そもそも好き勝手暴れられればいいってタイプだからオイラ達」

「「ぎゃはははっ!!」」

「本当に根っこから腐っているんだな……!!」

「そんなこと言っていいのかな?」

「その腐った奴に狩られるんだぜ、ミスターブルードラゴン」

「つーか、話を延ばして回復を図ってるのバレバレ」

「くっ!?」

「本当のことを言われて顔に出すのも減点だな」

「あぁ、ダメダメ過ぎ……これはとっととこの世からご退場してもらった方が本人のためだ!」

「激しく同意じゃい!!」

 二体のジベ・エレキは片足を上げた……横たわるアストの頭上で。そして……。


ゴッ!ゴッ!!


「――ぐっ!?」

 即打ち下ろす!踏みつけだ!

「エヴォリストとかいうこの世の害虫は!!」

「こういう惨めな死に方がよく似合う!」


ゴッ!ゴッ!ゴッ!ゴッ!ゴッ!ゴッ!!


「ぐうぅ……!?」

 さらに踏みつけ!踏みつけ!踏みつけ!不調のアストにスタンピングの雨が容赦なく降り注ぐ!

「このままいけばオイラが……!!」

「ワシが新たな部長に……!!」


ガシッ!ガシッ!!


「「――ッ!!?」」

 いつまでも続くかに思われた踏みつけ攻撃は突然終わりを迎えた。

 やられっぱなしだった覚醒アストが両者の足首を掴んで止めたのだ!そして……。

「お前!?」

「この!!」

「人様の頭を踏みつけちゃ駄目だって……学校で教わらなかったのか!!」


ブゥン!!


 力任せにぶん投げた!投げたのだが……。

「うおっと!!」

「よっ!!」

 しかし、あっさりと空中でくるくると回り、体勢を立て直しながら、まるで体操選手のようにきれいに着地されてしまった。壁におもいっきり叩きつけるつもりだったのに……。

(まだ本調子じゃないか。あんな簡単に受け身を取られるとは……)

「モーノ、奴はまだ回復してないぞ」

「なら……攻め立てようか!!」

 二体のジベ・エレキはまた仲良く同じ動作を取った。右腕の銃口をアストに向けてきたのだ。

「てめえの弱点を突くために、わざわざこのマシンをチョイスしたんだ!」

「芸術的な苦しみ方を見せてくれよな!」


バリィッ!!バリィッ!!バリィッ!!


 電撃弾の連射!青龍の左右から、液体化でも無効化できない特効の弾丸がけたたましい音を響かせながら迫り来る!

「くっ!!」

 けれどこの獲物は簡単に仕留められない。床を転がりながら、十字砲火を全て回避する。

「やるね~」

「だが、いつまで避けられるかのう」


バリィッ!!バリィッ!!バリィッ!!


「くそ!!」

 残念ながら避けるだけでは事態は好転しない。それがわかっているからコナーもモーノも物怖じせずに電撃弾をばらまき続け、アストはただそれから逃げ惑うしかできなかった。

(調子に乗りやがって……!お前らに付き合っている暇はないんだよ!こうなったら強引に終わらせてやる!!)

 ストレスの限界を迎えた青龍。回避運動を続けながら、意識を集中し、全身の神経を研ぎ澄ました。そして……。

「アウェイクパワー!!」

「「!!?」」


………………………


「……あれ?」

 形態変化できず!いつもなら周りの水分を吸収し、上半身が歪に隆起するはずなのに、一切形が変わらなかった!

(まさかさっきの電撃の影響で複雑な変化ができなくなったのか!?)

「ったく」

「ビビらせやがって」

「だが、厄介な変形ができないとわかったから」

「結果オーライじゃ!!」


バリィッ!!バリィッ!!バリィッ!!


「ッ!!?」

 また同じ先ほどと同じ状況に逆戻り。狩る側と狩られる側に分かれた一方的な蹂躙が再開催だ。

(くそ!これじゃあじり貧だ。ここは恥を忍んで一旦退くか?いや、トシムネならともかくこいつらのねじ曲がった性格なら、オレを誘き出すため、無差別に市民に攻撃を加えるかもしれない……)

「ほれほれ!!」

「どうしたどうした!その程度かエヴォリスト!!」

(くっ!実力的にはトシムネよりも遥かに弱いはずなのに!オレの敵じゃないはずなのに……!!)

 八方ふさがりの現状に苛立ち、歯を食いしばり、顔をしかめるアスト。

 そんなメンタルだから、敵が自分をとある地点に誘導していることに気づかなかった……。


バッ!


「!!?」


ガシッ!!


「何ッ!!?」

 物陰に隠れていた自立型のジベがアストが接近したのを見計らい、飛び出し、後ろから羽交い締めにした!

「こいつは全部壊したはず……いや」

「正解。お察しの通り新品だよ」

「ワシらがこの時のために持って来たんじゃ」

「身動き取れなくなったあんたを楽しく処刑するためにね」

「さらばブルーディー!故郷に眠れ!!」


バリィッ!!バリィッ!!バリィッ!バリィッ!!バリィッ!!バリィッ!バリィッ!!


 ジベごと撃ち抜くように容赦なく発射される電撃弾!狙いなんて適当で床や壁に当たり、白煙が絶体絶命の青龍の姿を覆い隠す。

「やったか?」

 銃撃を止め、結果を確認しようとする二人の思いに応えるように、どこから吹いた風が煙のカーテンを取り去った。そこには……。

「ギリギリセーフ」

「なっ!?」

「なんだと!!?」

 そこには黒いボディーに鮮やかな赤い半透明のパーツが取り付けられたともすれば奇怪な姿のピースプレイヤーが覚醒アストの盾になるように立ち塞がっていた。

「お前は……!?」

「ぼくはイクライザーV3。カウマが誇るスーパーヒーロー、ブルーディーの頼れる天才サイドキックさ」

「そしてうちがその相棒の相棒、ルビーっす」

「以後お見知りおきを……しなくてもいいか」

「どうせこれっきりっすからね」


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