目を覚ませ!!②
パンッ!ドシュウゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!
モモカーバの右腕の砲口から光の奔流が発射された……澄み渡る青空に向かって。
「なんだと……!?」
「残念だったな」
完全に不意を突いたと思った一撃だったが、命中直前にショーンが狙い済ましたかのように腕を下かち上げたことで、貯めたエネルギーはあらぬ方向に放出されることになったのだ。
いや、狙い済ましたようにではなく、ショーンはビオニスと同じくこの状況を予想し、読んでいたのだ。
「お前……俺がこうすることを……!!」
「これ以上の進化はないと思ってましたか?おれだって成長しますよ。あれだけ手痛い失敗をすれば反省だってする。一応自分では謙虚な性格だから努力をおこたらずに優秀な成績で特務にも入れたと自負しています」
(見誤った!憧れのブルードと戦ったことで、こいつ殻を破りやがった!俺の読みを超えるなんて、少し前のこいつじゃ……)
「はあッ!!」
ザンッ!!ザンッ!!
「ッ!!?」
覚醒ショーンはさらに下から上へと手刀を放ち、二つの砲身を切り裂いた。
「くッ!!」
ならばとモモカーバは今度は左腕をガトリング砲を回転させながらショーンの胴体に……。
「遅い!!」
ドゴオッ!!バギィン!!
「ぐあっ!!?」
けれどこれも迎撃!鉄槌を撃ち下ろし、破壊!砲身がひしゃげ、発射不能に陥る。さらに……。
「はあぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「な――」
紫色に変色した左脚でキック!激痛などものともせずに振り抜いた!
ドグシャアァァァァァァァァッ!!
「――にッ!!?」
ビオニスはその攻撃は“ない”と思っていた。だからもろに食らってしまい、桃色の装甲を、それに守られた肋骨を砕かれ、吹き飛ばされ、無様に地面を転がることになった。
(い、意表を突くつもりが……逆に俺が予想外の攻撃を……まさか奴が怪我している脚で攻撃するなんて……ここにきて一皮も二皮も向けるんじゃねぇよ……!!)
「ぐっ……!!」
なんとか立ち上がったが、それが限界。そこからぷるぷると脚が痙攣し、動くこともできなければ、反撃などできるはずもない最悪のコンディションだった。
「これでお互い脚はほぼ死んだな……!!」
ショーンもまた今の一撃で完全に左脚が壊れてしまったようでズルズルと引きずっている。それでも一歩一歩、ゆっくりだが前に進み、桃色の獣との距離を詰めていく。
「お互いボロボロだな」
「ええ……ですが、あなたよりマシかと」
「たった二、三発の攻撃で逆転すんなよ。これだからエヴォリストと戦うのは嫌なんだ」
「だからおれがあなたの代わりに戦いますよ。エヴォリストだろうがピースプレイヤーだろうがただの人間だろうが……このカウマの平和を脅かす者はおれが排除する……!!」
「まだ気持ちは変わらんか。こんだけやり合ったら、なんかスッキリして改心してくれないかと密かに願っていたんだがな……」
「生憎、おれの心は揺るがない……おれは……!!」
「じゃあ仕方ない……とことんやろうか……!!」
覚醒ショーン、モモカーバ、両者とも決着の一撃を放つために固く拳を握りしめた。そして……。
「これで終わりだ!ビオニス・ウエスト!!」
「お前がな!ショーン・ヴォークス!!」
両者同時にその拳を目の前の相手に向かっておもいっきり撃ち込……いや。
「なんてな」
ビシャアッ!!
「――なあッ!!?」
モモカーバがショーンの顔面の前で拳を上に逸らすと、手首から赤い液体が発射!金色の目に見事命中し、視界を奪う!
「最後の一発だモモカーバ!!」
ブシュッ!!ブゥン!!
「――ッ!?」
「ぐあっ!!?」
さらに前面の生き残っているスラスターを一斉噴射!バランスを崩し、すっ転んだようになりながら、急速後退し、致命の一撃をかろうじて回避した。
「この期に及んで、子供の悪戯のような手を……どれだけ人をバカにすれば気が済むんだ!!」
赤い液体を拭い去って現れた覚醒ショーンの目は血走っていた。今までの激闘に砂をかけられたと感じ、怒り心頭!彼の目には、意識には目の前で膝立ちになるモモカーバしか映っていない。
だから後ろから迫る同期に気づかなかった。
「パット!リサ!やれ!!」
「「はっ!!」」
バシュウンッ!バサアッ!!
「――なっ!?」
背後から二体の濃紺のマシンがバズーカを発射。しかし、砲口から射出されたのは弾ではなく網であった。それがショーンの全身に覆い被さると……。
バリバリバリバリバリバリバリバリバリッ!!
「ぐわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」
おびただしい量の電気を放出!チカチカと明滅しながら、ショーンを痺れさせ、動きを止めた。
「誇れよショーン。そいつはお前の憧れのブルードがこの国に牙を剥いた時のためにカウマミリタリーが秘密裏に作っていた特性の電磁ネットだ」
「ブルード本人には申し訳ないですけど、国としては最悪の事態を想定しておかないとダメなんでね」
「貴様ら……!!」
「卑怯なんて言うなよ」
「ビオニス隊長は最初から言っていたでしょう。“俺達”で、あなたに勝つって」
「そういうこった。イフイ第二ピースプレイヤー特務部隊、またの名をピンキーズで幕を引かせてもらうぜ」
リサ機とパット機がモモカーバと合流。隊長の後ろにつくと……。
「カーバマグナブラスター!!二人とも繋げ!!」
「「はっ!!」」
モモカーバは大柄な自分よりも大きな銃を召喚し、それから伸びるチューブをハイヒポウ二体は胴体にあるコネクターに接続した。
「こいつのマキシマムを引き出すには、モモカーバだけのエネルギーじゃ足りないんでね。三体分の力、集めさせてもらう!!」
チューブを通り、ハイヒポウのエネルギーが必殺兵器に注がれると、比例して銃口に光の粒子が集まった。そしてその輝きが頂点に達すると……。
「これが俺達の全力だぁぁぁぁッ!!」
ドシュウゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!
引き金を引き、辺り一面を眩く照らす光の奔流を発射した!光はそれに伴い発生した熱で道路を溶かしながら、電磁ネットでがんじがらめのショーンへと真っ直ぐと向かう!
「くそ!!ピースプレイヤーが束になろうとエヴォリストには!!」
ザンッ!バサアッ!!
命中直前、本当にギリギリのところでショーンは手刀で網を切り裂き、全身を自身の最大の防御器官である漆黒のマントで覆った。
ドシュウゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!!
「「ぐっ!!?」」
第二特務三人の思いを乗せた光の奔流はマントに受け止められてしまった。だがそれでもエネルギーを放ち続け、撃たれたショーンも、撃ったモモカーバも反動で後ずさりさせる。
(このままなら……このまま耐え続ければ、今度こそおれの勝ちだ!奴らに二発目はない!!)
「隊長!」
「これを耐えられたらワタシ達の負けです!!」
「わかってるよ!だから限界まで……いや、限界を超えてお前らの力を寄越せ!!」
「「はい!!」」
リサ機、パット機共に後退するモモカーバを支えながら、それに必要なエネルギー以外は全てマグナブラスターに流し込む!マシンはオーバードライブ寸前で節々から煙を上げていた。
「勝つのはおれだあぁぁぁぁぁっ!!」
「いいや!俺達だぁッ!!」
ぶつかり合う力と力、意地と意地、この極限バトルを制したのは……。
ドッドシュウゥゥゥゥゥゥッ!!
「――がっ!!?」
第二特務部隊だった。
マグナブラスターは銃口を溶かしながらも、絶対的な防御力を誇る漆黒のマントを突き破り、ショーンの脇腹を抉り取った。
「おれが負け……」
「そうだ……お前の負けだ」
それでも倒れずにいるショーンにモモカーバはマグナブラスターを投げ捨て、背面のスラスターを使い接近した。
大きく腕を振りかぶり、今度こそ正真正銘、決着の一撃を放つために固く拳骨を握りながら……。
「ビオニス・ウエスト……隊長」
「目を覚ませ!ショーン・ヴォークス!!」
ドゴオッ!!
顔面に叩き込まれた拳は鈍い音を早朝の海に響かせ、短くも濃い戦いに終わりを告げたのだった……。




