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No Name's Awakening  作者: 大道福丸
英雄の資格
107/140

全然違う

「覚悟はできてるよなビョルン隊長」

「あぁ……私の部下は私が止める」

「んじゃ!ハイヒポウBM!!」

「ハイヒポウ・ガンセナル……!!」

 二人の隊長のサングラスは彼らの言葉に呼応し光の粒子に分解、そして機械鎧に再構築され、全身を覆っていく。

 ビオニスが纏うは、従来のものよりさらに力強く、逞しく、荒々しい姿をしたえんじ色のハイヒポウ。特級ピースプレイヤー、ベヒモスの血脈を受け継ぐマシンだ。

 片やビョルンのマシンは全身が黒く、差し色に銀が入った流線型のマシン。その背部には折り畳まれた長大な砲身とミサイルポッドが顔を覗かせていた。

 どちらもベースはハイヒポウ。しかし面影はあるが、素人目には別物に見えた。

「試作品と専用カスタマイズ機……かつてのおれなら憧れ、心躍らせていたでしょうね」

「見た目が変わったら、メカ好きの心も薄まるのか?」

「別にピースプレイヤーは好きですよ。ただもっと夢中になれるものを見つけてしまっただけで」

「その結果がこれか。マジで新しいおもちゃを買ってもらってはしゃぐガキだな」

「むっ」

 ビオニスの言葉にショーンはわかり易くムッとした。というか声にして出してしまった。

「おれのこの力がおもちゃだと……!!」

「その力自体は悪く言ってねぇよ。力に善も悪もない。力を使っている……いや、力に飲み込まれ、力に振り回されているお前がダサいつってんだよ」

「貴様……!」

「教えてやるよ……隊長に選ばれるってのはどういうことかな!!」

 ハイヒポウBMは左腕に装備されたガトリング砲を構え、躊躇することなく発射した。

「BMガトリング!!」


ババババババババババババババババババッ!!


「そんなもの!……一応避けておくか」

 回転する砲口から次々と撃ち出される弾丸を覚醒ショーンは自慢の生体装甲で防御することなく、軽快なステップを踏んで回避した。

(ちっ!もっと頭に血を昇らせてムキになってくれると思ったんだが、意外と冷静だ……)

「どうしたビオニス隊長?こんな豆鉄砲をばらまくだけなんて、どちらがおもちゃですか」

「ならプラン通り波状攻撃だ!ガンセナル!!」

「おう!!」

 ガンセナルは背部のミサイルポッドを展開、一気に六発の弾頭を発射した!


バシュ!バシュ!バシュバシュバシュバシュ!!


 ミサイルは覚醒ショーンを取り囲むように上下左右から迫る!

「これは避けるのはキツいな……では吹き飛ばそう」

 覚醒ショーンは身体から生える漆黒のマント状の器官を手に取ると、力強く振った。


ブオォォン!!ドゴオドゴオドゴオォォォォン!!


 発生した突風はミサイルの軌道を乱し、お互いをぶつけ合わせ爆破、ショーンの目の前で連鎖爆発が起こり、爆炎と黒煙が視界一面を覆い尽くした。

「ふん。他愛な――」


ビシュウッ!!バシュウッ!!


「――いっ!!?」

 煙のカーテンを突き抜けた光と銃弾がショーンの赤と青のボディーを抉り、傷をつけた。

 それを放ったのはハイヒポウBMの右腕の二連装ビーム砲と、ガンセナルが新たに召喚した対大型オリジンズ用の長大なライフルだ。

「ファーストヒットはもらったぞヴォークス」

「ハンゲラン隊長……!」

「ファーストだけじゃなくセカンドもサードもいただこうか!」


ビシュウッ!バシュウッ!バババババッ!!


「ちいっ!!」

 これにはたまらず全力機動!先ほどまでの余裕のある態度ではなく、ショーンは必死になってビーム砲から、ライフルから、ガトリングから逃げ続けた。

(さすがにノーマルのハイヒポウを相手にするのとは訳が違うか。このままだと一方的に削り切られる可能性も……それでこそ特務の長だ)

 この姿になって初めてのピンチだというのにショーンの心は悔しさよりも喜びが勝っていた。姿形は変わっても目の前にいる男達への憧れは微塵も変わってないのだ。

(それはそれとして反撃しますけどね)

 そんな尊敬の念を心の一番奥底に仕舞うと、近くにあった手ごろな瓦礫を拾い上げた。

(おれには遠距離武装が搭載されてないみたいだからな。原始的だが、反撃はこれしかない!!)

「はあっ!!」


ビュン!ビュン!!ドゴオッ!!


「ちっ!!」

「野蛮な……!!」

 投石という人類最古の間接攻撃により隊長二人の攻撃を中断、そして分断させた。その隙に……。

「やあ」

「ッ!?」

 一気に距離を詰める!人間を遥かに凌駕した脚力でハイヒポウBMの眼前まで一気に迫った。

「普通、直属の上官の方にいくだろ!!」

「エヴォリストに一番似合わない言葉ですよ、普通などという陳腐な言葉は!!」

 覚醒ショーンは捻り込むようにパンチを繰り出した!


チイッ!!


「――ッ!?」

 掠めただけでハイヒポウBMの頬の装甲が削り取られた。その破壊力に豪胆なビオニスもマスクの下で冷や汗をかき、戦慄する。

「なんつー威力だよ……!!」

「これがエヴォリストのパワーだ!ピースプレイヤーなどとは比べものには……」

「えんじの獣を受け継ぐBMを甘く見るな!!」


ガァン!!


「――ッ!?」

 反撃のナックルは腕で難なくガードできたが、それでもその身に背負う重責を込めたような拳は覚醒ショーンを僅かだが後退させた。

(パンチも平隊員やチンピラ達とは全然違う……!マシンスペックもあるだろうが、それ以上に打ち方が上手いんだ。全身の力を淀みなく拳一点に集中させているから、身体の芯まで響く……だが、それでも)

「オラアッ!!」


ゴッ!!


「なっ!?」

「それでもエヴォリストのいる高みには届かない」

 えんじの獣の拳は捌かれてしまった……部下のパット機と同じように手刀であっさりと。

「もはや隊長と言えど恐るるに足らず!このままKOしてやる!!」

「いい気になるな!!」


ガンガンガンガンガンガンガンガンガンガン!!


 激しく拳を、蹴りを打ち合う二人。傍目から見ると拮抗しているように見えるが、よくよく観察してみると、傷つき、飛び散っているのはえんじ色の装甲ばかりだ。

「ちいっ!!」

「上級以下の量産できるピースプレイヤーでは、天に選ばれたエヴォリストにはどうやったって勝てんよ」

「このままだとな……!」

 ビオニスは距離を取り、戦況を伺い続けるビョルンにアイコンタクトを送った。

(うまいこと誘導するから、脚でも腕でもとにかく動きを制限できる場所を撃ち抜いてくれ)

(わかっているさ)

 ハイヒポウ・ガンセナルは長大なライフルをしっかりと構え、時が来るのを待つ。

 銃口の先に身も心も変わり果てた部下の姿だけになる瞬間を……。

(躊躇はしない。今のヴォークスを止めるには言葉ではなく力に頼るしかないんだ。だから、私は引き金を……)

「はあっ!!」


ガァン!!


「ぐっ!?」

「!!」

 刹那、待ちに待った光景が目の前に現れた!ハイヒポウBMが拳に吹き飛ばされ、無防備な覚醒ショーンの側面がライフルの軌道上に!

「今だ!!」

 ガンセナルは親指に力を込め、トリガーを……。

「おっと」


グイッ!!


「――うおっ!?」

「ッ!?」

 引き金を引こうとした瞬間、ショーンは遠ざかるBMの腕をキャッチ、そのまま引き戻して、自分とガンセナルの間に割り込ませた。

 これではライフルを発射しても貫くのは味方であるえんじの獣……ビョルンは攻撃を中断するしかなかった。

「てめえ……俺を盾にしたのか……!!」

「ガンセナルはノーマルのハイヒポウでは対抗できない相手を打倒するために火力を強化したマシン。だが、それ故に乱戦では味方を巻き込む可能性が……ハンゲラン隊長はそれをよしとする人ではない」


ガァンガァン!!


「――ぐあっ!?」

「ほっ」

 キャッチ&リリース!腕を放すと、小気味よくワンツーパンチ!突き離したと思ったら、再びBMがガンセナルと自分の対角線上に位置するように移動した。

(これではライフルを使えない……!ヴォークスめ、小癪な真似を……!!)

「思い上がるんならとことんつけ上がれよ……!ちゃんと周りが見えてんじゃねぇ!!」

「あなた方相手に調子になんて乗っていられませんよ。確実に一人ずつ潰していく」

「この!!」


ゴッ!ガァン!!


「――ぐはっ!?」

 BMの鉄拳をガードしてからの反撃。教科書通りのきれいな連携であった。

「続けていきますよ!!」


ガンガン!グイッ!ガンガンガン!サッ!!


「ぐうぅ……!」

 覚醒ショーンは時にBMを動かし、時に自ら動き、自分の位置取りを気にしながらセオリー通りのコンビネーションで攻め立てる!その高い精度と速度にビオニスと言えど防戦一方だ。

「そろそろわかってくれましたか?これがおれの手に入れた力です。あなたと仲良しのブルードと同じ他の追随を許さない圧倒的な力……!」

「はっ……!あいつと一緒だと……全然違うよ……!あいつはお前のように嬉々として力を振るうことはない……!あくまで面倒に巻き込まれて、仕方なくヒーローやってんだ!」

「だからおれはあいつのことを許せないんですよ。今回のイエローポイズンだって、奴が積極的に動いていればもっと速やかに鎮圧できたのに……やること為すこと半端だ!」

「それは自らの力に向き合い、戒めているからだ!お前のように独断で正義と悪を分けて、あろうことか勝手に断罪しようなんて……人間として間違ってる!!」

「人間として間違っていることだからこそ、人間を超えた我らがやるべきなんだ!平和のためにどんな小さな悪意も全力で叩き潰すのが、天が我らに課した使命なんだ!!」

「このわからず屋が!!」


ヒュッ!!ドゴオッ!!


「……え?」

 覚醒ショーンのパンチを躱し、逆にナックルを顔面に叩き込む……ハイヒポウBMによって覚醒者への今日初めてのクリーンヒットが炸裂したのだ!

「馬鹿な……何かの間違いだ……人間を超えたおれが隊長とはいえ、ただのピースプレイヤーなんかに……!」

 頭蓋骨もかなりの硬度を誇り、さらにはそれを支える首の骨や筋肉も強靭、相手の勢いを利用したカウンターと言っても、ショーンにはほとんどのダメージは入っていなかった……が、精神的については別問題だったらしく、茫然自失となって後ずさる。

「たった一発食らったくらいで心が折れたか?」

「!!?」

「やっぱりメンタルはまだ人間の範疇を超えてないようだな……安心したよ」

「ウエストーーーッ!!」

 挑発にまんまと引っかかり雑に腕を伸ばす。その崩れたフォームの打撃こそがビオニスの待ち望んだものだ。

「はあっ!!」


ガッ!グイッ!ドスン!!


「――ぐあっ!?」

 ハイヒポウBMはその手を、脚を、覚醒ショーンの伸び切った腕に絡ませるとそのまま倒れ込んだ!

「くっ!!」

 重心が突然変わり、ショーンはそのままBMの身体に覆い被さるように転けそうになったが、必死に踏ん張って、ギリギリで耐えた。

「惜しかったな……まさかここでグラウンドに持ち込もうとするとは……思いもしなかったよ」

 相手の目論見を打破したと思っているショーンは僅かに口角を上げた。

 そしてビオニス・ウエストもまた……嗤った。

「グラウンド?何を言ってるんだお前?」

「……何?」

「これだけパワー差があったら関節なんて極められないって。言ってて情けなくなるから言わせるなよ」

「じゃあ……」

「俺はちょっとだけ時間を作れれば良かったんだ……お前にデカい花火をぶち込む時間をな」

「!!?」

 瞬間、全てを理解した覚醒ショーンが金色の瞳を移動させると、そこには背部の折り畳まれていた砲身を真っ直ぐと伸ばし、こちらに向けているハイヒポウ・ガンセナルの姿があった。

「グレネードを使う気か!?だが、そんなことをしたらウエスト隊長まで巻き添えに……」

「隊長ってのはこういう場面で撃つ覚悟、撃たせる覚悟がある奴のことを言うんだよ」

「なっ!!?」

 一気に血の気が引いた。

 十分に尊敬しているつもりでいた。

 だから実力も高く見積もっていると思っていた。

 それでも特務部隊の隊長のスケールを見誤っていた……。

「ビョルン隊長!撃てぇッ!!」

「おう!!」


バシュウンッ!!


 発射された砲弾は空気の抵抗などものともせずにビョルンの部下と同僚の下に到達した。


ドゴオォォォォォォォォォォォォォォンッ!!


 グレネードは着弾と同時に大爆発!大気を揺らし、爆炎の花を咲かせた!

「やったのか……?」

 ビョルンに笑顔はない。当然だろう、彼は大切な部下と同僚に向かって引き金を引いたのだから。心のどこかでこの攻撃が失敗することを望んでさえいた。

 だからこそこんな結果になってしまったのかもしれない。

「ん…………なっ、何!?」

 黒煙のドームが風に流され、現れたのは漆黒のマントでできたドーム。その表面には一切の傷も、焦げ跡もなかった。

「あれはヴォークスの背中の……だとしたらまさか!?」

「そのまさかですよ」

 マントのドームを解除して出て来たのは無傷の赤青の覚醒者とえんじ色の獣。前者は不敵に笑い、後者の装着者は仮面の下で苦々しい表情を浮かべていた。

「そのマントは防御のための器官だったのか……!?」

「知らなかったのか?おれもついさっきまで知らなかったよ!だから上手く使える自信がなくて、ずっと使用を躊躇していたんだ!!」

「くっ!?それが功を奏したってわけか……!そいつにそんな力があったなら、また別の手を考えたのに……!!」

「天に愛されるとはこういうことなんだよ、ウエスト隊長!!」


ブゥン!!ガシャアァァァン!!


「――ッ!?」

「ぐあっ!!?」

 腕にまとわりつくハイヒポウBMを力任せに振り払い、ガンセナルへとぶつける!二人の隊長はまるでドミノのように積み重なった。

「さぁ!フィニッシュです!!ウエスト隊長!!」

 まだ体勢を立て直してない特務隊長達に容赦なく追撃!覚醒ショーンは一気に接近すると、勢いそのままに拳を繰り出した!

「ビオニス!下がれ!!」


ブゥン!!


「――!!?じいさん!!」

 命中直前、今度はガンセナルがBMを投げた……彼を守るために。


ドゴオォォォォォッ!!


「………がはっ!!?」

 拳はガンセナルの装甲に無数の亀裂を入れ、貫通した衝撃はビョルンの骨にもひびを入れ、意識を一撃で刈り取った。

「最後の最後に自分を犠牲にして仲間を助ける……あなたは本当に素晴らしい隊長でしたよ。だが、高潔さだけで正義は守れない」

 足元に横たわる漆黒のマシンを見て感慨に耽る。それと同時に尊敬すべき対象をこの手に倒したことで、自らの行いの正しさに自信をつけ、さらにショーンは増長した。

「もう特務部隊は必要ない。カウマはこのおれが守ります。おれ一人でね」

「目を開いたまま寝言を言えるのが、お前に与えられた能力か?まだこの俺、特務部隊最強のビオニス・ウエスト様が残っているぞ!!」

 えんじ色の獣は立ち上がった……勝算もないのに。

「言葉は立派ですけど、大丈夫なんですか?そのマシンの噂は聞いています。あまり燃費が良くないんですってね」

「どうだろうな……」

 誤魔化しながら一応祈るような気持ちで確認してみたが、BMのマスク裏のディスプレイに映し出されたゲージは軒並み低い数値を提示していた。

(ヤバいな……いつ機能停止してもおかしくない。強がってみたもののほぼ詰んでる。やれることと言ったら自爆くらいか?)

「自爆はやめてくださいよ」

「!!?」

「あなたには死んで欲しくないし、さっきされたばかりで飽き飽きしてますから」

「お見通しか……」

 ビオニスは苦笑しながら、勝ち目のない戦いに挑むために構えを取った。

「それでいいです。最後まで抗って、そしてエヴォリストの力に屈して、おれの考えが正しいことを実感してください」

「そんな日は来ねぇよ。お前は間違っているんだから……!!」

「…………」

「…………」


ヒュウッ……


(決着を!!)

(つけようか!!)

 二人の間にすきま風が吹いた!それが最終決戦の火蓋を切る合図になる……はずだったのだが。

「オレも混ぜてくれよ」

「!!?」


ドスウゥゥゥゥゥゥン!!


 空から二人の間に何かが落ちて来た!

 隕石?いや違う……空や海を彷彿とさせる優しい青いボディーに金色の瞳!カウマが誇るブルードラゴンだ!

「ア……じゃなくてブルード……!?」

「ブルード……!!」

「ここからはオレが相手だ、同胞よ」


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