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No Name's Awakening  作者: 大道福丸
英雄の資格
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爆発と再会

「ぐっ、ぐうぅ……兄ちゃん……!!」

 パネスビズーミエは立ち上がろうとしたが足をへし折られ、ボディーへのダメージも深刻で上半身を起こすことも無理だった。それでも地面を這いながら双子の兄の下に向かう。

「く、来るな……パネス……」

「兄ちゃん……」

 同じく地面に這いつくばっているレスリー覚脳鬼はそれを拒絶した。マスク越しに目配せし、双子特有の感覚で自分の意図を言葉を使わずに伝える。

(こうなったら仕上げをこいつに使う……特務の奴らを待ってられない……!)

(わかったよ……悔しいけどこいつにはボク達じゃ勝てない。兄ちゃんの指示に従うよ……)

 やるべきことを共有した兄弟は反転し、お互いに背を向けて、それぞれ別の扉に動き出した。

「逃がすと思うか……と、言いたいところだが」

「ひいっ!?」

 覚醒ショーンが金色の目を向けたのは瀕死のギャラウェイ兄弟じゃなく、ソファーで丸まっているフードを目深に被っている男だった。

「あのダメージではそう遠くには逃げられん。だとしたらまずはお前だ。イエローポイズンのボス、キース・マッカーシー」

「ひいっ!?オ、オレは……!!」

「黙れ」

「――ッ!?」

「悪党の首魁と交わす言葉は持ってない」

 人間離れをした金色の瞳に睨み付けられると、恐怖で身体が強ばり、何も喋れなくなってしまった。こちらにゆっくりと異形の存在が近づいて来て、頭や心は「逃げろ!」と絶え間なく訴えて来ても、肉体が言うことを聞いてくれない。

「貴様を守る者は何もない。おれが全て壊した。大人しく罰を受けろ」

「ひいぃぃぃぃっ!?」

 覚醒ショーンは一見硬そうな金属にも見える手を男のサングラスにかけ……外した。

「キース・マッカーシー、お前の犯した数え切れない……ん?」

「ひ……!?」

 目と目が交錯した瞬間、違和感を覚える。思わず首を傾げながら、今度は目深に被ったフードを脱がした。

 出てきたのは……見たこともない知らない人だった。

「面影はある気もするが……お前、キース・マッカーシーじゃないな?」

「そうだよ!だからそう言おうと思ってたのにあんたが黙れって言うから!!」

「じゃあ本当にキース・マッカーシーではないのだな?」

「オレはただのどこにでもいるクズギャンブラーだよ!負けが続いて借金を重ねて、まともなところはもう貸してくれなくなったから闇の方に手を出して……そしたらある日突然、そのキース・マッカーシーがやって来て、借金を肩代わりしてやるから自分の影武者になれって!自分とよく似てるからって!!」

「なるほど……ウエスト隊長の言う通り、臆病な奴だ」

 最重要ターゲットは最初からここにいなかったと知り、何をやっているんだと自分に苛立ち、ショーンは不愉快そうに眉間にシワを寄せ、舌打ちをした。

「肩慣らしとしては上々の成果だったが、任務としては大失敗だな。まさかこんなしょうもない手に引っかかるとは……」

「まだ終わってないよ……」

「ん?」

「だから終わってないんだって……影武者って言うから危険は覚悟してたよ。あいつ、色んなところから恨み買ってそうだったし、あの手この手で狙われるんだろうなって」

「だから影武者を立てたんだろうが」

「違うんだよ……キース・マッカーシーって男は臆病なだけじゃなく残忍なんだ。あいつがオレを影武者にしたのは、オレを隠れ蓑にするんじゃためじゃなくて、オレを使って全てを精算するためだったんだよ……」

「お前はさっきから何を言っている……?」

「これ見たらわかる?」

 男は服を持ち上げるとその下には……たくさんのコードに繋がれた機械が身体にまとわりついていた。

「ッ!!?まさか爆――」

 瞬間、リビングから離れたレスリーがどこからともなく出したスイッチを押した。


ドゴオドゴオォォォォォォォォォォォォォン!!!


 男、そしてリビング自体が大爆発を起こした!

 別荘は内部から溢れ出す爆炎によって崩れ去り瓦礫の山に、それらに灯る炎が漆黒の夜空を真っ赤に染める。

「……ぐっ!!思ってたよりすげぇ威力だな……!!」

 瓦礫の中から出て来たのはレスリー覚脳鬼。両腕が折れているので、身体で押し上げて脱出した。

「レスリー!」

「パネス!!」

 そんな彼の下にパネスビズーミエが片足を引きずりながらやって来る。ダメージは深刻だが、全てはあの赤青のエヴォリストにやられたもの、爆発によって被害は受けてないようだ。

「やったね兄ちゃん」

「あぁ、予定は狂ったがもう四の五の言ってられん。なんとか上手く誤魔化して、少しでも多くの依頼料をいただこう」

「うん!むしろあんなイレギュラーがあったのに、よきところに着地させたよ!追加報酬を貰ってもいいくらい!」

「それだけの器が奴にあったなら、こんな手は打たないと思うが……」

「見るからに小物だったもんね。見ようによっては影武者の方が肝が据わってたかも」

「貴様ら、本物のキース・マッカーシーにも面識があるのか?」

「「!!?」」

 突然の声、聞いたことのある声、ついさっきまで耳にしてた声、本来ならば聞こえてはいけない声が背後からして、反射的にパネスは振り返ると、そこにはやはり思った通りの存在、漆黒のマントを羽織った赤青の覚醒者が立っていた。

「お前、死んだはずじゃあ……!!?」

「驚くよな。かくいうおれも驚いている」


ドゴッ!!ズサアッ!!ガァン!!


「――がっ!?」

「パネス!!」

 覚醒ショーンは前蹴りですでにふらふらのビズーミエを転ばし、仰向けにすると、その無防備な腹を踏みつけた。

「マジで死んだかと思ったよ。こんな気持ちは昨日ヴェノコンダに噛まれてぶりだ。二日連続で死にかけるなんておれはついてないな……いや、こうして生き残っているのだからめちゃくちゃラッキーなのか?」

 波乱の二日間を思い出し、ショーンは思わず自嘲した。

「咄嗟にマントで全身を覆ったのが良かったらしい。おかげでまた一つ勉強になった……よ!!」


グリッ!!


「――ぐあっ!?」

 ビズーミエの腹に置いた足にグリグリと力を込め、内臓を圧迫していく。たまらず口が開き、苦悶の声が漏れ出す。

「やめろ!弟を苦しめないでくれ」

「兄弟愛だけは本物なんだな。その尊い絆に免じて、今回の一件について洗いざらい話してくれたら見逃してやろう。大体察しがつくがな」

「わかった!話すよ……多分、あんたの思っている通り……これはキース・マッカーシーが自らを死んだと偽装するための茶番だ」

「やはりな……」

「潮時だと思っていたらしい。これ以上イエローポイズンに関わってもいずれ破滅するって……だから!影武者が死ぬところを特務部隊に見せつけ、キース・マッカーシーは死んだことにして、自分は偽装した戸籍で別人となって海外のリゾート地で悠々自適な余生を送ろうと!」

「カウマ以上のリゾートがあるとは思えんが、確かに奴は敵を作り過ぎていたしな。判断としてはわからなくもない」

「これが今回の依頼の本当の全貌だ。俺達の仕事は適当に特務を相手をし、影武者を本物だと信じ込ませてから、最後は追い詰められて自爆したように見せかけて始末することだったんだ」

「そうか。きっとうまいこといっていたぞ……おれがこうならなければな!」


ボギィッ!!


「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」

「パネス!!」

 足を下ろすと見せかけて、ショーンはパネスの無事だった方の膝を踏み抜き、破壊した。

「何故だ!!?何故、正直に話したのに弟を!!?」

「何故と言われたら、お前らが悪だからとしか言えんな。悪とは交渉しない……それが正義だ」

「エヴォリストォォォッ!!」

 怒りを滲ませた目で睨み付けるが、ショーンはどこ吹く風、自らの行為を悪びれもしないし、後悔もしていない。だってこれは正義なのだから。

「貴様らは金のために人の命を奪った。情状酌量の余地もない悪党だ。ならば天に正義を執行する力を与えられたおれが処分するのが道理」

「さっきからずっと……お前の言ってることは訳わかんねぇんだよ!!」

「それはお前が悪でおれが正義だからだ。こうすることが平和のためには一番いいんだ」

 覚醒ショーンはゆっくりと足を上げた……今度はパネスビズーミエの顔面の上に。

「兄ちゃん……」

「やめろ!やめてくれ!!たった一人の弟なんだ!!」

「ならば真っ当な道を歩むように導くべきだったな。全ては心の弱さに屈した貴様ら自身の責任だ!!」

「やめろおぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!」

 ショーンの踵がパネスの頭蓋骨を踏み砕こうと、鼻先に触れるほど接近した……その時だった。

「やめろショーン・ヴォークス」


ピタッ!!


 ギャラウェイ兄弟ではない声が耳に届くと、ショーンは反射的に動きを止め、声のした方向を向いた。

 そこには大きなアフロヘアーの大男がお揃いの制服を着た者達を引き連れて、こちらに銃を突きつけていた。

「ビオニス・ウエスト……隊長」

「そこの兄ちゃんのことはよく知らんが、お前自身のためにももうやめろショーン……」


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