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2-38 決戦、嵐の売り子聖女

 ガラガラガラとチャックが引く大型馬車の車輪が回る音がする。


 本来ならチャックには不要な馬車であるのだが、これは乗物としての機能を求めたものではない。


 冒険者ギルドの馬車に求めるものとは即ち、比較的防弾性に優れた遮蔽物としての役割りである。


 それもあくまで、戦闘になった場合の最初の段階でのそれに過ぎず、使い捨てにして逃げる時間を稼ぐための物なのだ。


 これでも古いからってデポジットは金貨百枚に負けてくれたんだ。


 中古でもこの手の防弾馬車っていうか、装甲馬車みたいなものは金属板を仕込んだり、立て籠るためのギミックがついていたりするので結構高いのだ。


 でもまあ、この間追加でギルドの貯金は殖やしておいたから十分過ぎるほど余裕だ。


 あと、その他の装備も買ったりレンタルしたりしている。

 そのあたりは金貨六千枚にも及ぶ冒険者カードに貯め込んだデポジットの勝利だ。


 馬車が戻ってこなかったら私の貯金からさっぴけばよいのだし、王国が私にまだ恩賞を支払う分があるのもサンドラは知っているから、大盤振る舞いだった。


 どうにもアレなんだったら、後で私の超強力な聖水でも卸してやれば文句は出ないはず。


 そういや、あれの販売を全然してないな。

 自分用では結構作っていたんだけど。


『本官より聖女サヤに警告。

 一般人ではない何者かが当方の馬車を監視しています。


 マースデデン王国の潜入工作員であるのか、スラムに根を張る犯罪組織のメンバーか、あるいはその他の組織の人間であるのかまでは不明ですが、その辺のチンピラではありませんと報告だけしておきます。

 要警戒』


「人間なのね?」


『イエスマム。

 敵方であるならば、本官の姿を認めた瞬間に馬車の中の人物を即判定したはずです。

 その上で必要ならば援軍を要請しているでしょう。


 監視者はあくまで監視に留め、仕掛けてくるのなら別の何者かが来ます。

 この本官がいる事を承知で襲撃する以上、対抗できる戦力を保有している事が高確率で予想されます。


 襲撃を受けた段階で本隊の敗北が即決定する可能性は大であると考察し、その状況の回避を推奨すべしと聖女サヤに提言いたします』


「ありがとう。

 私は別に戦いたいわけじゃないのよ。

 向こうがどうかは知らないけれど。

 戦うのならもっと援軍を連れてくるから。

 だからね」


 そして私は彼らに向かって微笑んだ。


「さあ、屋台の時間よ!」


 意外な答えに、珍しくチャックが少し振り向く素振りを見せた。


 それから何者かによる監視を受けながら、広場っぽい空間に馬車ごと乗り付けたが、馬車を引っ張るチャックの異様な姿に、皆は大人しく道を開けてくれた。


『本官より聖女サヤに緊急報告。

 監視者のグループが三個に増量されました。

 おそらく増えた中の一つがマースデンの手の者であると推察されます』


「その根拠は?」


『監視に小型魔物を使用しています。

 マースデン王国でよく使用しているタイプです。


 子供が手に持っている愛玩用のげっ歯類がそうであると断定します。

 子供は雇われただけのスラムの子供であると推定。


 あと、上空を旋回中の鳥がいます。

 おそらくは鴉か鳶の類。


 その他にも使用している可能性はあると報告します。

 迂闊で短慮な行為は厳に慎むべしと、本官は聖女サヤに提言及び警告いたします』


「なるほど、ありがとう」


「最初の連中は、地元住人の組織か何かでしょう。

 次に現れたのが、ここに巣食う犯罪組織系。


 最後に現れたのが、チャックの話からすると、おそらくマースデンの連中で、彼らがどう出るのかによって戦闘が発生するかどうかが決まるでしょう。

 正確には戦闘用の魔物を召喚されるかどうかですね」


「あははは。後になるほど性質が悪くなってくるなあ」


 そして、そこは私が希望した通りの場所だった。


「じゃ、始めますかあ」


 そう言って私は馬車の後ろの防弾板を立て、通常なら射手が使用するだろう台にカウンターを設定した。


 チャックは引いていた馬車との連結を解き(触手を外しただけ)馬車の後ろに回って来た。


「はい、じゃあお願いね」


 そして、幾つも渡された不思議な物体を、チャックが魅惑の大道芸のように操る。

 少し集まってきていた子供達の目がそれに吸い付いた。


「サヤ様、あれは何なのですか?」


「ああ、あれはね。

 出来てからのお楽しみよ」


 そして私は大きな声で叫んだ。

 広場にはまだ他に数人の子供達が所在投げにぶらついていて、こっちを胡乱気に眺めていた。


 それから大きな声で、サクラの役を担ってくれそうな子供達に向かって呼び込みを始めた。


「はあい、良い子のみんな。

 聖女様のアイスクリーム屋台の始まりだよー。

 魔物さんが一生懸命に今作ってくれているからねー」


 チャックは私が頼んでおいた通りに、まるで大道芸のように、そのカラフルな円筒を投げてクルクルと宙を舞わせている。


 まるで大道芸に使用するボーリングのピンみたいな形をしたクラブのようだ。


 ただし、太目な金属の円筒形をしている。

 一体、本来は何に使う物なのか知らないが、売っていたので買って来たのだ。


 子供達も、チャックが危険な存在ではないと認識出来たものか、近くへ寄って来た。


 監視者達は、私が一体何をしたいのかさっぱりわからないから、ただ監視しているに留めている。


 お願いだから、そのままでいてね~。


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