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2-23 惨状

 そして、帰宅した私の部屋にて。


「ねえ、あなたの事はなんて呼んだらいい?」


 私は座ったままの姿勢でいる奴のモフモフ具合を確認しながら、そう訊ねた。


 まるで大きなヌイグルミのようで、早くも私のお気に入りに登録されている。


 もう「おいどん」でもいいんじゃないかなと思ったが、そういやサラスールなんて名前があったんだな。


 サラって縮めると、女の子の名前みたいでなんか呼びにくい。

 あ、一応確認しておこうか。


「皆はサラスールを縮めてサルと呼ぶでごんす」


 いや? 確かに雪男風の、お猿のUMAっぽい感じはするけれども、さすがにそれはと思ったのだが、まああの名前からすればそれも有りなのか。


「あなたって男だよね」


 確か自分でそう言っていたような気がしたし。


「いや、精霊獣には男女も雄雌もないでごんす」


「あんた、自分で男だって言ってなかった!?」


「それはただの勢いでごんす」


「もう! そういやあんた、どこから来たのよ」


「精霊獣の国から?

 何か非常にいい匂いがしたので来ただけでごんす」


 精霊獣の国なんて本当にあるのか?

 最後が自分で言っていて疑問形になっているし。


 こいつ、脳味噌の中身が幻獣なんじゃないの?

 勢いだけで生きているみたいだし。

 せめて、最初のあの可愛い喋り方だったらいいのに。


 そういや、王宮にはあれこれとレシピを渡しておいたので、結構いい匂いをさせていたんだろうしな。


 こいつも元は私から発したネタに引き寄せられてきたのか。

 しかし、本当にどこから湧いてきたものか。


 まあ、結構いい感じにモフモフだからすべて許そう。


 しかし、こいつを見た国王陛下がなんと言うだろうかねえ。

 昨日も見事なまでの避難訓練だったみたいだしなあ。


 チャックは、本日は日課の夜間警備はせずに私の部屋で転がっている。


 なんていうか、もう立っていられないらしくて、そこで樽が転がるような感じで横に転がっているのだ。


 普通は寝る時には誰だって横に転がっているものなので本来はこれが正しい姿勢なのだが、この子の場合は蝉がひっくり返っているのを思い起こさせるような感じで、ちゃんと生きているのかどうか心配になる。


 なんか魔物が冒険者に倒されましたみたいな感じに転がっているのだが。

 それに近いシチュエーションではあったのだけど。


 まあ、彼は並みの生物ではないので、そう心配はいらないのだろうが。


 彼の幾つあるのか知らない脳味噌も、本日は全休状態なのだろう。


 一応、枕元には彼の好物である、プリンの空き容器の陶器製のカップをまとめて置いておく事にした。


 草色のおいどんを寝かせられるほど頑丈なベッドは騎士団にさえなかったため、布団を床に敷いてやったのだ。


 こいつに布団なんて上等な物はいらないのかもしれないけれど、まあ一応は客なので。


 翌日は、なんと誰も起こしてくれなかったので、見事にお昼まで寝こけてしまった。


 チュールも、護衛担当専任の彼にしては珍しくよく寝ていた。


 アメリはまだ起きてこない。

 一応は自分で部屋まで自力で戻ったようなのだが、あれだけ飲んでいたからなあ。


 他のメイドさん達も起こしに来ない。


 実は、夕べは思い余って、リュールさんに頼んで全メイドに招集をかけたので、本日はメイドが全滅なのだろう。


 結局、調理師さんも五名中四名まで呼んでしまったので、今朝は残った御一人が奥様の御世話をすべてやっていたと思われる。


 残りの食事関係の使用人は全滅したはず。

 いくら、この家がアレな家であろうと、このような醜態は珍しいのではないだろうか。


 へたをすると、あのリュールさんまでダウンしているかも。

 あの人って性格的に最後まで弱音を吐かないっぽいしね。


 ある日、突然に倒れるようなタイプだ。

 だがきっと本日は騎士団も同じ体たらくなのだろうから、そう問題はあるまい。


 もしかすると、あの人一倍飲んでいた団長だけはビクともしていないのかもしれないな。


 サリタスさんは結局、『おいどん』の捜索にも、あの宴会にもまったく出てこなかった。


 マジで大丈夫なのか、部外者ながら気になる。

 ここのところ、あの人も苦労が絶え間なかったみたいだからな。


 その元凶の一人として、大変に申し訳ない気持ちでいっぱいだ。


 そして、その日は私も昼食後は残り時間を所在投げにおいどんをモフモフして過ごしていたのだが、夕方に本日は諦めて休日にしたらしきリュールさんがやってきて告げた。


「明日、そいつを連れて王宮へ来てもらいたい。

 なんというか、父が見たいそうだ」


「さいですか。ではそのようにいたしますね」


 たぶん、王様は興味本位で呼び出しをかけたのではなく、こいつが私の思うよりも厄介な存在なのだろう。


 また面倒な事にならなければよいのだが。


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