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2-16 王宮閉鎖

 それからプリンを受取り、料理人さん達にはプリン作りの仕事が終わったら公爵家へ戻ってくれるように言っておいた。


 ベロニカも既に馬で王宮へ向かったようだ。

 向こうでサンドラさんと合流するのだろう。


 マリエール達も既に出動したようだ。

 この前の騒動の後で頼まれたので、私の聖水は結構な数を作成して渡しておいたから、それは十分足りるとは思うのだけど。


 冒険者も出動するようだから、その分も要るかなあ。

 私は聖水を作ってからの方がよかったかな。


「悪いなあ、皆さん。

 せっかく来てもらったのに」


「いえいえ、せっかくですので奥様にプリンの御土産を。

 坊ちゃまにはサヤ様から差し上げてください」


「そうするわー。

 じゃあ、このプリンは貰っていくわね。

 残りの分の製作はよろしく」


 そして、私とアメリはチャックに乗せられて王宮へ急いだ。


 アメリはチャックに乗れたので、かなり上機嫌の模様。

 これから、へたをすれば一戦有り得るというのに平気な顔をしてる。


「さすがのベロニカも、この騒動の中じゃプリンの試食どころじゃないでしょう」


「いえ、しっかりとお食べになっていました。

 圧倒されるような、いい食いっぷりでしたよ。

 だから、ついさっきまで彼女だけ残っていましたから」


「戦闘前に胃袋をいっぱいに⁉

 なんてブレない女!

 まあ、それでこそベロニカってもんだけど」


 王宮へ近づくにつれ、喧騒が近づいてくるようだった。


「もう始まってる?」


「いえ、戦いの匂いが感じられませぬ。

 敵を捜索中なのでしょう」


「それ、どうやって嗅ぎつけるの⁉」


 だが彼女は謎めいた微笑みを浮かべるだけだった。

 まあ、やり方を聞いたって私には嗅ぎつけられそうもないのだが。


『まだだね』


『本官の感覚でも、戦闘はまだであると推定されます。

 と聖女サヤに通達いたします』


 どうやら、アメリの感覚は高位の魔物並みに発達したものらしい。

 だから、どこで生まれてどう育ち、一体どこの何物なんだ、あんたは。


 王宮の門は堅く閉ざされており、十名以上の兵士で固められていた。


 私達の姿(主にチャック)を認め一瞬緊張したが、神官鎧副姿の私と、また前の騒ぎの時のように冒険者風をしたアメリを見るや警戒を解いてくれた。


「聖女様でしたか」

「戦況は?」


「は、王宮内で隠密系魔物の姿を認め、王族はただちに護衛の近衛兵と共に退避。

 以後、近衛兵による王宮内捜索、そして王国騎士団本部と冒険者ギルドへも出動が要請され、非戦闘員は退去の上、王宮は閉鎖中であります」


「私は通ってもいいのかな」

「は、もちろんであります」


 大型の門は、数人の兵士によりただちに開門された。


「この大きな子はチャック。

 私の護衛騎士の一人だから、よろしくね」


「は、はあ」


『よろしく、門兵どの』


「チャックがよろしくだってさ。

 じゃあね」


「いってらっしゃいませ」


 さて、王宮内に入ったはいいが、どうしたもんかな。


「チャック、手近な騎士団員の位置はわかる?」


『前方百メートル、そこから右二十メートルの位置に四人グループ。

 彼らは極度に緊張している様子。

 当方は半数を魔物によって構成されるパーティ。

 よって本官は、彼らに対して慎重に接近する事を聖女サヤに提言いたします』


「了解。

 チュール、万が一間違って攻撃された時に備えて防御はお願いね。

 チャック、なるべく驚かせないように近づいて」


『はあーい』

『イエスマム』


 なるべくなら、今日の宴会が終了するまでチャックと騎士団を会わせたくなかったんだけど、こうなれば仕方がない。


 無音でそっと近づくチャック。

 私が下に降りると却って気配を気取られるので降りない。


「みんなー」


 建物の蔭から声だけかける。


「おお、サヤ殿か。

 よく来て……うおっ!」


 笑顔で手を上げて出迎える私をハッサン小隊長が吃驚の表情で迎えてくれた。


 小隊長は前の作戦中の間のみの役職だったのかな。


「ああ、気にしないで。

 護衛騎士も連れずに私が現場へ来るはずがないでしょう。

 この子はわざわざ連れてきたのよ」


『ハッサン小隊長殿、お久しぶりです。

 その節はどうも』


 その触手を上げて、明らかに自分に挨拶をしてくれている様子に目を白黒しているハッサン氏。

 私達もチャックの触手シートから降りる。


「状況はどう?」


「は、目撃された魔物は一体、まあ姿を消す魔物なので一体とは限りませんが」


「気配が掴めないの?」


「そのようです。

 犬も放ちましたが、どうにも上手くないようです」


「あ、犬がいるんじゃないの。

 うちに一頭寄越しなさいよ」


「御戯れを。

 犬は国軍からの借り物なのです。

 軍用犬は貴重でして。

 それに愛玩用ではありませんぞ」


「ちっ」


「相変わらずブレませんな、サヤ様は。

 とにかく現在捜索中であり、敵の正体は不明です」


「モフモフでしたか?」

「は?」


「ですから、その魔物はモフモフだったのかと聖女サヤはあなたを詰問します」


「あのう……」


「まだそいつが敵と限ったものではありませんからね。

 可愛かったら、私が保護しますよ」


「……」


「では、行こう。

 王国騎士団レッツゴー。

 そんな心配そうな顔をしなくても、この前みたいに生贄にはしませんからっ」


「おい、聞いたか」

「生贄だってよ」

「魔女か」


「ああ、うるさい、うるさい。

 早く行きますよ。

 それに、そこの平団員達。

 聖女イヤーで全部聞こえていますからね」


 どうやら私の出現により少し士気が下がったらしい騎士団の分隊を引き連れて、私達は可愛いモフモフを捜索する旅に出たのであります。


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