無理なのはわかっていた
「無理なのはわかっていた」
君の一言で、僕の努力が感謝されることはなくなった。何を勘違いしてるんだろう。輝いてる君が好きなのに。だから僕が追う夢は始めから君のためだったのにね。
結果が全てだ。努力しだいだ。そんな暴言に負けたくなかった。大人なんてクソ喰らえと思ってた。僕の思う道を僕が作って僕が歩むんだって。でも、それは違ったみたい。違ったのは、君もだったみたい。君は僕にとって、大きな存在だった。ずっと、掴んでいたい人だった。僕が思えば、君も思ってるって確信があった。その確信こそが幻だったのかもしれない。君に対して、持ってはいけない欲だったのかもしれない。今こうしてしっかりとした否定が出来ないってことは、まだ君に未練があるから。もしかしたらなんて思ってしまうから。この気持ちは当たり前であって欲しい。
一緒に出ようと約束したあの舞台。周りなんて気にせずにぶつかっていこうとしてた。切磋琢磨したかった。君なりに、僕なりに努力を積んでいた。そして、花が咲き始めた。
「見てっ!初めての主演が決まったよ!」
明るく元気に僕に台本を見せてきた。だから、一緒に喜んだ。僕の手元には何も無かったけど。
「あの監督が僕を抜粋してくれたよ。やっと認められた!」
一緒に泣いて喜んだ。自分の事のように。その頃僕はエキストラ。誰の目にも触れないような。ただ、背景を作るための人間だった。
その頃からだろう。君が僕を笑い始めたのは。君は、階段を登るだけ。僕がその階段を作るだけに変わっていたことを知らずに。
ある日、君の態度が変わり始めた。僕の話を聞かなくなった。僕が話しかけても「そうなんだ。」と一言いうだけ。僕ってそんな人間なの。君と歩いてたのに、僕はなんのためにいるの。僕の考えは方向性を変え始めた。
彼は、沢山の舞台で演じていた。劇も映画もドラマも出ていた。賞も取り始め、海外にも足を進めていた。そんな中、僕は君の隣に居た。君を輝かせるようになっていた。君のために動くようになっていた。それが僕の使い道だから。
僕は今、君を1番近くで見つめてる。1番近くで輝かせるために努力をしている。自分のためじゃない。自分の力で彼を輝かせていく。
君を見ていれば僕が表に立つことが無理なのは分かっていた。やりたいことが全てじゃない。できることでやりたいことに繋げないといけなかった。そんな中、君が話し始めた。キョトンとした僕を見て続けて言った。
「だからさ、お前と夢叶えるのが無理なのはわかってた」
鼻で笑われた。そこに僕が大切にしてきた君は居なかった。どうせお前は裏の人間だと、そう突きつけられた。でも、そんな裏の人間ありきでお前が成り立っているんだ。それを忘れるな。お前一人で売れると思うなよ。僕が全て作り上げたんだ。でも、僕はそう返さず言葉に頷くだけだった。いつから彼は、ここまで滑稽になったんだろう。逆に僕が笑えてくるよ。だって、君を売ったのは僕なんだから。君は、僕が作ったシナリオを自分の人生のように歩いてる。いつ君と演者として同じ舞台に立つと言った?僕はそれを目指していないよ。本当に君は僕の夢に興味が無かったんだろうね。君と同じ夢を語ったつもりは無いよ。
さあ、材料は揃った。君より大事な物ができたんだ。やっと僕の夢が叶うよ。あの頃の夢とは違うけど。今までありがとう。僕の台本、読んでくれたら嬉しいな。まあ、僕が使いたいと思う人間だったらの話だけど。
自分の書き方って、自分の気持ちをぶつけてるだけだから面白くないんだよね。私の事知らないと面白く無いだろうし。