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0話 クールなイメージ

この話はプロローグです、本編は次回から始まりますのでご了承ください。

 

 とある芸能プロダクション、そこの社長室でとあるやり取りが行われていた。


「俳優業、高校卒業まで休業させてください」

「……は?」


 長い葛藤の末、俺、冷水 氷雅(しみず ひょうが)は覚悟を決め、所属している芸能事務所の社長に自らの意を言い渡した。


「……ちょ、ちょっと突然何を言いだすの氷雅君!」


 俺のマネージャーが横槍を入れる。


「確かあなた……もうすぐで高校2年生よね? 契約もあと半年も残ってる上にプラスで1年半も待てですって? 冗談じゃないわ!」

「違約金なら払います、それに契約期間が切れたら僕の自由じゃないですか」

「そういう問題じゃないの! 今という時期が大切なの! あなたは現在進行形で売り出し中の今をときめく若手俳優なのよ!? 今だって有名監督のドラマのオファーの話だって出てるわ!」


 真剣な眼差しで社長が口を開いた。


「……何か理由があるのかね?」

「僕は俳優業は嫌いじゃない、むしろ楽しいとまで思ってます。けど、今このまま俳優業を続けていると高校時代という人生の1番大事な時期を逃してしまうんじゃないかって思って」


 現に俺は高校1年生の時はあまり学校に顔を出さなかった。


「僕も学業に集中して青春を謳歌したい。自分勝手なのは承知してます、ですがお願いします、しばらくの間休ませてください」


 俺は腰を90度に曲げ、頭を下げる。


「そんな理由で……私達がどれだけ貴方の為に手をこねくり回したか分かってるの?」


 学業という大義名分を掲げているとはいえ、理由としては不十分だというのは自分でもわかっていた。

 でもやらずに後悔するより、やって後悔したかったのだ。

 

「でもそれは無理よ。貴方にはまだ契約が半年も残っているもの」

「違約金なら払います」

「だからそういう問題じゃない!」


 突然の告白に気が動転しているのか、マネージャーは社長の目の前でもお構い無しに大きな音を立て机を叩く。


「考え直しなさい氷雅君、あなたはうちの事務所の看板を背負える逸材なの、貴方のその類稀なルックスなら人気俳優の道は約束されてるのよ? 売り出す為にはとにかく今というが1番大切な時期なのよ、もう一度よく……」

「いいだろう」

「本当ですか!」

「社長!? 何を仰ってるんですか!」

「このまま未練を垂れ流して役者としてスランプに陥れられても困る」


 自分の要望が通り、俺は安堵に浸る。


「冷水君は金の卵だ、君の意見は尊重しないとな」

「じゃあ……」

「ただし1つ条件がある」

「条件?」

「将来、またこの業界に携わりたいと思うのなら、俳優から一般人になってもイメージだけは絶対に崩すんじゃないぞ」

「イメージ……ですか?」

「ああ。凛々しい眉、キリッとした目付き、すらっと伸びた鼻筋、清潔感のある短髪黒髪、それに加え182cmという長身。君の売りは所謂(いわゆる)"クールキャラ"だ」


 社長にベタ褒めされる。普通の人間なら恥ずか死しているのだろうが、俺は褒め殺しに慣れている為平静を保ち、続けて社長の話を聞く。


「クールというイメージは非常にデリケートだ。他のイメージとのギャップの落差が激しいが故、少しでも他のイメージが植え付けられたらそのイメージがしつこくへばりついてくる」

「つまり……僕に日常でクールキャラを演じろ、という事ですか?」

「ああそうだ。役者という肩書きから離れても君は日常でも常にクールキャラを演じるんだ、いいね?」


 正直、この時の俺はクールキャラなんて素っ気なく冷たくするだけ、大体そんな感じだろうと思っていた。


「なに、簡単な事だ。クールなキャラを演じろ、と言うよりそれ以外の印象を付けさせなければいいだけの話だ。まぁ君は腐っても役者だ、それくらい造作もないだろう」

「わかりました! 高校卒業までにクールキャラを演じきってみせます! 社長、ありがとうございます!」

「まぁ例のオファーを受ける前に決心してくれて良かったよ。だが君にはまだ撮影が残ってる、こればっかりはきちんと出てもらうよ」

「はい!」


社長にお礼を述べたあと、俺はマネージャーの方に体を向けた。


「篠原さん……突然自分勝手なことを言ってしまってすみませんでした……でも高校を卒業したらまた戻ってきます、だからその時はよろしくお願いします!」

「はぁ……もう自分の好きなように人生歩みなさい……」

「はい! それではお世話になりました! 失礼します!」


 俺は激しく扉を閉め、事務所を後にした


◇ ◇ ◇


「でも大丈夫なんですかね氷雅君……」

「どういうことかね?」

「ほら、彼所々『天然』が入ってるじゃないですか、それでクールと他の何かを履き違わないか心配で……」

「……まぁ最終手段として天然系クールキャラで売ればいいし、なんとかなるでしょ」

「はぁ……」


 この時の俺はまだ知る由もなかった。日常で台本に無い作られたキャラを演じるということがどういうことか。

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