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サ・ク・ラ・ノ・オ・ト  作者: かねい ゆきな
3/4

初恋はブリオーソに!

―「みずきほんと西村先輩よく観察してるね~もしかして…」

家に帰ってからもその言葉が頭を離れない。そんなはずない、とかぶりをふるが、どうしても、離れない。そういえば、小学校のとき、恋なんてしなかった。周りの子なんかは誰々がかっこいいとか、足が速いとか、頭がいいとか言ってキャーキャー盛り上がっていた。でも私はあまり興味がなかった。男子なんてガキじゃん、と思っていた。けど西村先輩は、違う。上田先輩にからかわれてすぐ反応しちゃうのは子供っぽいけど、やさしいし、ちょっとかわいいし、何というか、男子らしさを感じない。でも、好き…なのかどうかわからない。ってか、恋ってどんな感じなのかな…?

とりあえずパンクしそうな頭を冷やそうとベランダに出た。夜風が気持ちいい。少し潮の香りもする。星…は見えないか。―30分もそうしていただろうか。そろそろお風呂に入って寝よう。その前に明日の準備か。えーっと、ジャージと楽譜と…


「んじゃ、学校の外周を3周な。車に気をつけて。」柿山先生はもう走り出している。それに西村先輩や男子勢が続く。それに遅れないように1年、2年、3年と続く。

2周目で男子勢にぬかされた。

「おらみずき、速く走れ~」

「ほらみずき、西村先輩応援してるよ」

「うるさい!」

「ほらほらムキになっちゃって~」

「そんなことないっ!」

やっと3周走り終わった。あれ、西村先輩いない…?

―はぁ、はぁ、はぁ、ふぅー。え、なに、この人4周したの?

「にっしー?誰もいなかった?」と上田先輩

「大丈夫、です、ふぅ」

ゆきがニヤニヤしている。殴るぞワレ。

水を飲み一休み。この後は筋トレだ。

「10秒腹筋行きまーす。せーの」

「いーちにーいさーんしーい…」10秒間、背中を上げキープする。案外きつい、というか、普通にきつい。

「2回目行きまーす。せーの」

「いーちにーいさーんしーい…」

「こら西村、サボるな」やーい先生に怒られてやーんの

「あい、あい、サーセン」

「にっしーちゃんとやって?みずきちゃんが見てるよ?」-え、あ、私!?

―珍しい、反抗してない。どうしたんだろう。


「はい、筋トレお疲れ様です。それじゃ、基礎合奏をやるから、全員楽器と合奏体形の準備をしてください。」

「ほい、みずき、俺の譜面台もってこい」

「嫌ですよ自分のことは自分で、って先輩いつも言うじゃないですか」

「俺は合奏体系作ってるんだからいいだろ、ついでだ、ついで」

「わかりました…」

「にっしー怖―い」と上田先輩。怖いですよね~

「そんなことないです。先輩だって俺のことこき使ってたじゃないですか。」

「だってにっしー素直なんだもん。すぐやってくれるじゃん」

―ほーら顔赤い。褒められてうれしいんだ。

譜面台、楽器、譜面、チューナーとチューナーマイク、クリーニングペーパーにペン…一通り持ったな。西村先輩のはこれか。譜面台に全部くっついてる。

「先輩、これでいいですか?」

「あい、ありがと。基礎の譜面って持ってきたよね?」

「はい、ここに。」

「ん。じゃあチューニングしよう。俺の後に続いて吹いて。」

ドーソーレーシードーソードー…チューニングだけなら結構早くなってきた。

「ん、チューニングはこれでいいかな。じゃあハーモニー練習の譜面とか出して、軽くやっといて。」

「はい」

「基礎合奏始めまーす。気を付け、礼。よろしくお願いします。まず初めに西村から順番にチューニング。」

―西村先輩、やっぱり上手。早い。もう終わる。

「はい次」

ドーソーレーシードー…うーん、あそこまで早くできないなぁ。

「みずき」 西村先輩がささやく

「はい、何でしょう」

「上手くなってんじゃん」

―急すぎてびっくりした。あ、え、ありがとうございます。先輩のおかげです。とつぶやいた。

先輩は少し笑った後、すぐにいつもの真顔に戻った。チューニングは続いていく。

「チューバ」

ドーソーレーシードー...ちょっと低いよ、ゆき。音程上げなきゃ。

「全然あってない。もう一度外でやってきて。」―え、できないと出されるの?

「はい…」

―出来ないと出される。嫌ならちゃんと合わせてきて。と西村先輩。はい、言われなくてもそうします。


「今日の練習はこれで終わり、明日は走らないからジャージはいらないけど、水分補給しっかりして。」

みずき、ちょっと来て。西村先輩に呼ばれた。

「…お前、上田先輩に何か言ったか?」

「え、特には。」

「そうか…まあ、そうだよな。何でもない、ごめん、ありがとう」

「みずき、帰ろ♪」ゆきだ。会釈を残してゆきに駆け寄る。

―誰だよ、バラしたやつ。俺が上田先輩、いや、はるか先輩が好きだってこと。

沈みゆく太陽だけが、そのつぶやきを聞いていた。夏はまだ遠い。

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