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サ・ク・ラ・ノ・オ・ト  作者: かねい ゆきな
1/4

吹部Life Overture

「皆さん!こんにちは!!!私たちは吹奏楽部です!」

  中学に入り、もう1週間がたった。小学校のときとは違い、みんなお揃いの制服。ダサくて着たくない、なんて思っていたけど、服を選ばなくていいって、案外楽かもしれない。

  「まず1曲目は~?校歌”海の子よ”です!みんなもう歌えるようになったかなぁ?一緒に歌ってもいいですよ!!」

  今日は部活動紹介。いろんな部活が踊ったり、ボールを投げたりしているが、吹奏楽部だけは特別ステージみたいになっている。お母さんもトランペットやってたって言っていたし、吹奏楽部にしようかなぁ…運動は苦手だし、絵のセンスなんてないし。

  「ねえみずき?部活決めた?私吹部にしたいんだよね~」

  「ゆき、音楽好きだもんね~私も吹部にしようかなぁ…」

  「みずきママ中学でペットやってたんでしょ?いいじゃんペットやんなよ!」

  「トランペットよりフルートかなぁ私は、でもオーディションだからわからないよね~」

  「皆さん、今日の演奏はこれにて終了です!入部届は来週までなので絶対“吹奏楽部”って書いて出してください!みんなが来るのをお待ちしておりま~す!!」

  「ほらみずき、体験入部のやつ出しに行こ!1年の柿山先生に出せばいいんだよね?早く書いていこうよ!」

  「ゆき、うるさいって、もっと落ち着きなよ…」


  「柏原(かしわら)()()さん…と、金町(かなまち)(みず)()さん…でいいね?吹部に体験しに来てくれてありがとう。楽しんできてね。」

 お願いします、とゆき。少し遅れてお辞儀をする。顧問の柿山先生はトランペットらしい。上手なんだろな、と勝手に思った。

  「部長の上田さんが迎えに来てくれるから、それまでこのカタログを読んで、何を体験したいかみんな考えておいてください。」

  今日の体験は10人らしい。女の子ばっか。男子2人しかいない。そんなものか。

  「初めまして。上田(うえだ)(はる)()といいます。部長で、パートはクラリネットです。今から音楽室まで皆さんを案内します。今日1日楽しんでね!」

  ―あ、司会やってた人だ。と、誰かがつぶやいた。上田先輩はニコッと笑った。


「ここが音楽室です。各パート順番にこのフロアの教室を使わせてもらっています。まず、みんなの楽器を決めるけど、何がいいですか~?」

  クラリネット、トランペット、サックス、フルート…みんな好きな楽器を言っていく。

  「柏原さん、何がいい?」

  「トロンボーンやってみたいです!」

  「オッケー…あの背ぇ高い女の子のとこに行ってね!んで、金町さんは?」

  「あ、フルートで…」

  「りょーかい、っと…あの背ぇ低い男の子のとこ、西村くんのとこ行って?」

  「はるか先輩うるさいです。背ぇ低くて悪うござんした」

  「悪いなんて言ってないよぉ~?西村くんこの子パート部屋に連れてって?」

  「金町さん、西村です。おねしゃす」

  「あ、お願いします…」

 西村先輩は確かに背が低い。しかもちょっと女の子みたい。

  「金町さん何か楽器とかやってた?」

  「あ、ピアノを習ってました。最近辞めましたけど…」

  「ピアノとフルートは調が同じだからやりやすいかな。えっと…まずこれ吹いてみて、頭部管。えっと、こう…」

 なんだか難しいな。楽器ってもっと簡単なイメージだった。ふぃ、ふぃ、ふゅこー

  「もっとこう…近づけて、そう。口の中広くして…」

 ふゅこー、ふゅこー、駄目だ、ぜんっぜん音が出ない。

  「一回離して、深呼吸しなきゃ。フルート息使うから、くらくらしたらすぐやめていいからね…大丈夫?じゃ、いっぱい息吸って?」

  とぅあ、とぅあ、たー、音が、出た。弱くふらふらな音だけど、フルート、吹けた。

  「おーし、おっけ。その感覚忘れないで。じゃあ主管と足部管つけて」

 ようやく見た目がフルートになった。

  「指はこうで…そう。落とさないようにね」…って、つりそうなんですけど!?

  「まずは音階から…これとこれで…ドの音が出るから」

 ふゅ、ふゅ、ふぁーーー…ピアノと違う、鋭く、力強い音。これがフルートなんだ…

  「そうそうそんな感じ。次はシかな。こうやって…」

 一つ一つ、西村先輩は教えてくれた。少しずつ、フルートのコツを掴んできた。初めての部活は、とっても新鮮で、ドキドキして、楽しかった。

  1週間、部活体験をした。クラもペットもボーンも難しかったけど、音は出せた。チューバなんて全然音が出ない、と思っていたけど、最後の方には出せるようになっていた。先輩の名前もやっと覚えられた。もともと覚えがわるいのだ。


  「はいそれではオーディションをやります。全員1個1個吹いてもらいます。まず、この紙に第3希望まで書いてください。」

 ―フルート、トランペット、ホルン…っと。

  「じゃあまず井出くん、君からお願いします。ほかの人は呼ばれるまで隣の部屋で待機していてください。」

  「ゆきは何選んだ?」

  「クラ、ペット、トロンボーン。みずきは?」

  「フルート、ペット、ホルン…やっぱこれかなぁって。有名だし」

  「サックスもいいよなぁ」

  「木田くんおっきいもんね~」

 ―みずき、いつの間に男子と仲良くなってんの…?びっくりしたぁ。

  「次、鈴木さん、お願いします」

  「はい、お願いします。」

 ―なんだろう、すごいドキドキしてきた。

  「じゃあ金町さん、どうぞ」

  「はい」

 頑張ってね、とみずき。木田くんは親指を突き立てている。こいつら余裕かい。

  「まず、音感チェックをします。ピアノを弾くので音を当ててください。」

 ―ドレミファソラシド、ソー、ミー、ラー…ピアノやっててよかったかもしれない。

  「次に、第一から第三まで楽器を吹いてください。まずフルート。西村くん、手伝ってあげて」

 ー大丈夫。頑張れば行ける。心の中で唱える。

ドーレーミーファーソーラーシードー。よし、覚えてた。

  「はい、ありがとうございます。次にペット、お願いします。斎藤さん手伝ってあげて。」

 ―あとはもう、いつも通りやれればいっか。


  「はい、皆さんお疲れ様でした。それでは発表していきます。井出(いで)泰樹(やすき)君、トランペット。」

 ―よしっ。井出くんが叫ぶ。第一希望だったのか。

  「木田和也くん、チューバ。鈴木美玖さん、クラリネット。金町瑞希さん、」

 ―どうしよう、大丈夫。大丈夫。大丈夫…

  「フルート。池永幸奈さん…」

 ―よかった。フルートだ。よかった。

  「…柏原有希さん、チューバ。以上です。」

 え...とゆきは小さく叫んだ。

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