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上官殿とデリカシー









今日も上官殿は絶好調だ。






「女性はなにを贈られると喜ぶ?」







知るか、と思わず返したくなる質問に私はきちんと無愛想に答えた。


「わかりかねます。」


上官殿は顎に手をやった。

どこかの誰かのために思考を巡らせる上官殿も素敵だ。でもそれ以上にむかむかする。



「そりゃ花とアクセサリーですよ。金のある女ほど花みたいな素朴なものを喜ぶんです。」

「マクシム、何故お前がここにいる。」



上官殿はいささか不満そうに言った。

マクシムがことの真相と誤解を解いてくれたあの日以来、マクシムは度々私と上官殿のテーブルにやってくるようになった。








「同じ二番隊じゃないですか、混ぜてくださいよ。」

「サムスとロタはどうした?」

「弟たちは今当番中です。ああそうだ!ほら、今月の俺の相方はウォーカーですし、仲良くしないと。」

「マクシム、それじゃ理屈にならないわ。」



私と上官殿の向かいにトレーを置き座るマクシム。

良かった。

一人でこの話題を処理しなくて済むのは正直助かった。







マクシムは興味津々とばかりに質問をぶつける。



「ところでどなたにあげるんです?やっぱり噂の恋人ですか?」

「サリーのことを言っているなら恋人などではないよ。ただの縁談中というだけだ。」





出た、上官殿の“縁談中”




今まで何度か聞いたこのフレーズ。

貴族出身のマクシムならこれがなにを意味するかわかるのだろうか。





「えー!そんなのもう婚約者と一緒じゃないですか!」





あれ。




どうやら彼も私と似たような感覚らしい。

そうよね、大貴族の縁談って決定事項みたいなものだって思うわよね。

上官殿はにこにこしている。

これってまさかかわされていただけ…?




「上官殿、贈り物の件ですが…」



とりあえず上官殿の口からこれ以上サリーさんの話題を聞きたくなくて遮る。

婚約者だろうが、恋人だろうが、縁談中だろうがそんなの関係ない。

とにかく聞きたくなかった。



「誰かに相談などせず、上官殿が悩み考え、選んでくれたものが一番喜ばれるかと思います。」

「うわー、すごいそれ女心って感じの意見だね。」



マクシムが関心したように茶化す。

マクシムは笑っているけど上官殿は何かを思案しているようだった。



「そうなのか。うーん、わかった。何か考えてみる。」

「え、上官殿!結局どなたにあげるんですか?」

「言うわけないだろう?なぁウォーカー。」

「え、あ…はい?」



内心言わないの?とは思ったがよく考えれば知りたくもない話だ。

うん、そう。

サリーさんの話題以上に知りたくもない。

この前のパイの子とかだったらどうしよう。それとも私の知らない人?

まぁ結局のところ誰であっても嫌だ。







胸がむかむかする。






なんかもう今日は上官殿とこれ以上話していたくない。

それよりもさっさと部屋へ帰りたい。

一人になりたい。

このむしゃくしゃした気持ちを吐き出すために夜のランニングに出て、それから熱いシャワーを浴びて布団でふて寝を決め込むのだ。












上官殿のばか。










私の気持ちを知りもしないで。








気軽に相談してくるのはやめていただきたい。








せめて今は、まだ。















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