灰色の恋
無愛想は鎧。
上官殿への気持ちは誰にもバレるわけにはいかない。
優しくて頼もしい、そして何よりその強さに私は惹かれてしまった。
初めてあの人を見た時、トーナメントで連戦連勝、楽しげに真摯に戦うあの人に心を奪われた私を誰が責められるのだろう。
彼は素敵過ぎた。
ましてやその人と毎日顔を合わせることになるなんて誰が思う?
実際に優しさを向けられてどうして気持ちに嘘がつける?
無理だ。
自分を誤魔化せないほどあの人への想いは日に日に大きくなるばかり。
でもわかっている。
彼が私の面倒を何かと見てくれるのは善意というよりは仕事だということも、大貴族の彼と庶民出身の私ではどうなりようもないことも。
何より私自身が職場に女性らしさを持ち込みたくない小さなプライドを持っていて、彼は私を特別扱いや女性扱いをしないで一隊員として接してくれている。
それは彼なりの優しさだ。
どうしたって私は女の顔では彼に近寄ることが出来ない。
そうするつもりもない。
私は仕事のことも好きだから。
仕事がないと私でなくなってしまう。
上官殿にも会えなくなってしまう。
だから私は鎧着るのだ。
できるだけ無表情に、できるだけ愛想をなくして。
「ウォーカー、飯行くぞ。」
「はい、すぐ参ります。」
今日も上官殿に呼ばれて食堂に向かう。
愛想のない返事にも関わらず彼はくしゃりと微笑んだ。
(こんな毎日がずっと続くなら、私はそれで幸せ)