やる気の起こし方
「どうやったらやる気が出ますか?」
よく受ける質問の一つだ。私はこう答える。
「やっているうちに出てくるよ」
すると決まって、
「そのやり始めるためのやる気です」
と返ってくる。その時点で私は思う。そもそも、やる気があったってこいつはやらないな、と。
やる気は起きるものじゃない、起こすものだ。と誰かが言った。
脳科学的にもそういうものだと、何かで読んだ。少し継続していくうちに、脳内でアドレナリンじゃないけれど何か興奮させるような物質が出てきて、集中力が出てくるのだと。そしてどんどん続けたくなるのだと。
どれもこれも聞きかじりで、正確ではないけれど、これは正しいと直感している。
自分の体験としてもある。特に勉強とか、ちょっと時間のかかる掃除とか、しなければならないけれど、後回しにしがちなもの。えいっとどこかで思い切ってやり始めると、そのうちに面倒に思っていた気持ちがどこかに行って、特に苦にならなくなってくる。
たぶん、その「えいっ」が重要。
自分の気持ちを自分でコントロールし、切り替えをするのだ。それができれば、やる気はおのずと出てくる。
その「えいっ」は、気合と呼ぶほど強いものではない。別に「よし」でも、「ふう」でも何でもいい。
あのメジャーリーガーであるイチローの、あの独特のバッティングスタイル、一時期話題になった、ラグビーの五郎丸のあのポーズ。あれは、集中するためのルーティンなのだそうだ。ともかくは、自分なりの気持ちの切り替え方法を見つけることが大事なのだ。
しかし、これをこのように伝えても、先の質問をした人にはたいてい伝わらない。だって彼らは、自分で自分の気持ちをコントロールしようとしないで、人任せ、運任せにしようとしているから。
そういう人の、なんて多いこと。やる気まで与えられると思っているらしい。
伝えていく努力はするけれど、それは彼らが「えいっ」と自ら行った時にしか結局実感できない。その実感が伴って初めて、私が言いたかったことを理解する。その理解するタイミングが早いか遅いか、これは結構人生を左右するのではないかと思うのは、少々大げさだろうか。




