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雑記帳  作者: 風花ふゆ
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駄菓子屋のこと

 昔、近所に駄菓子屋がいくつかあった。歩いて行ける範囲に一つ、自転車で行ける範囲に二つ。たいてい賞味期限切れのパンが置いてあったし、照明は明るくなかったし、物の置き方も雑然としていた。特にレジ奥なんかは、段ボールとか書類とか、いろいろ積みあがっていた。

 歩いて行けるほうは、肉まんやピザまんも売っていて、冬になるとよく買いに行った。友達と買って、外の自販機の近くで食べながらおしゃべりした。

 自転車で行けるほうの一つは、ストリートファイターとかのアーケードゲームも置いてあった。結構古い、ちょっとレバーにガタが来ていそうなものだった。そこでガムの駄菓子を買って、人がやっているゲームを横でよく見ていた。たまにやらせてもらったけど、不器用な私は、どうやれば技が出るのか教えてもらってもここぞというときにそれを使えなくて、結局通り一辺倒な殴り技しかできなかった。

 もう一つは、おもちゃも売っていた。おもちゃといっても、本当にちょっとしたもの。一番よく覚えているのは、指に糊みたいなボンドみたいな粘ついたものをつけて、しばらく練るようにこすったり伸ばしたりしていると、納豆の糸みたいに指の間を引いていく。名前がわからない。そもそも、そんなおもちゃじゃないのかもしれない。でも、糸は細くなっていって、いつしか風にふわふわ漂うようなキメの細かい蜘蛛の糸のようになる。まるで、指の先から糸を発しているようにも見えた。そんな変なものが好きだった。


 今、その三軒のどれもない。きっと、店主が年を取って続けられなくなったのだ。私が子どものころですら、すでに結構なおじさん、おばさんだった。跡を継ぐ人がいなければ、そうなるのが当然なのだ。

 でも、ふと気づく。そういう店があったから、私たちは子どものころ、細かいお金を携えて、自分のおこずかいで何かを買うという体験ができた。

 今の子どもたちは、それができない。自分で買い物をしたことがないという子どもの、なんと多いこと。

こずかいをもらっても、使い道がない。マンガを買うにしても、うちのような田舎は近所に本屋もない。親に車で連れて行ってもらう以外、マンガ雑誌も買えない。コンビニは、あるにはあるけれど、子どもが勤しんで出かけるような場所でもない。


 知らぬ間に、私が子どものころにあったものがなくなっている。逆に、子どものころにはなかった見えない縛りが多くなっている。そう思うのは、私だけだろうか。

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