烏の話
身近な鳥といえば、烏と雀と鳩でしょうか。私は特に烏が好きで、時間が許せばずっと観察しています。
烏は害鳥と言われてあまり好かれていない鳥ですが、なんとも愛嬌のある動きをするのです。
彼らはあまり飛ぼうとしません。アスファルトに落ちている何かをついばんでいるときに、車が通ろうとする。雀などならすぐに飛んでいきますが、彼らは億劫そうに両足をそろえてピョンピョンと端のほうへ跳んでいく。「飛べよ!」と運転するほうは思います。
彼らは鳴き真似がうまいです。昔、近所に犬の鳴き声そっくりに鳴く烏がいました。当時、うちでは犬を飼っていたので、うちの犬が鳴いてるのかと思いきや、数十メートル先の電信柱の上にとまっていた烏が鳴いていたのでした。
彼らは自分より大きな鳥にちょっかいを出します。私はそれを二回目撃しました。
一回目の相手は雉でした。烏が騒いでいるなと思ってなんとなく外へ出てみると、一羽の烏がオスの雉に向かって鳴き立てていたのです。烏の警戒音である、ガラガラガラという声で。雉は面倒くさそうに烏を見ていましたが、烏はしつこく雉の周りを飛びながらガラガラと声を荒げます。やがて、もう一羽の烏がやってきたので、雉は「やれやれ」という様子で茂みの中に姿を隠してしまいました。それでもしばらく烏は鳴いていました。
実は、この二羽の烏は番で、近くに巣があったのです。この番の烏は、あの頃よく警戒音を立てては、鳩でも仲間の烏でも徹底的に追い払っていました。
二回目の相手は鳶でした。鳶はどうやら近くの山から里に下りてきていたようでした。鳶は何か餌をつついていたのですが、それを烏が奪っていったのです。烏は鳶の近くでその餌をつついて遊んでいるようにも見えました。でも、横にいる鳶はそれをじっと眺めているだけです。怒らないのかな? と思いつつ、私は一度目を離しました。少ししてからまた様子を見てみると、烏が何かしでかしたのか、鳶に追いかけられていました。鳶は数分間、烏を追い回していました。
ちょっと調べてみたら、烏はそうやって大型の鳥に突っ込んでいく傾向があるようですね。無謀というか、挑戦的というか、頭がいいのか悪いのか。
私の通勤路の並木には、かなりの確率で烏の巣があります。夏の間は茂みに隠れてちょうどいいし、何より車がすぐ横を走るので敵に襲われる心配も少ないのでしょう。冬、枯木立になると、春夏の間に子育てした巣のあとをはっきりと見ることができます。この間見かけたときは、せっせと草や木の枝を運んでいるところでした。今年もここで子育てをするのです。いつも車で通ってしまうので、しっかりその様子を見ることはできませんが、烏たちが飛んでいくのを見ると、がんばってるなと思います。
烏は毎日挨拶をすると覚えてくれるという話を聞いたことがあります。どれがどの烏が見分け方がわからないけれど、気が向いたら声をかけています。烏にしてみれば「何やってんだ、この人間?」と首をかしげてるかもしれませんが。その首を傾げる姿もまた、かわいらしいのです。




