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過ちと正当性
先輩は紡久の最後の一発を根に持ち、嘘の証言をした。
ただの小さな仕返しが、紡久にとって大きな一撃になった。
紡久は否定し続けたが、こんなにも警察官が作り笑顔で、人形みたいに人の話を聞かないとは思わなかった。
「そ~言われましてもねぇ~」
「被害者の方はあなただけに殴られたと言ってますからねぇ~」
この警察官は見える真実しか信じない。
現に紡久が先輩を殴っていた現場を取り押さえたのはこの警察官で、紡久が殴っていたのを目撃している。
もうこの警察官は紡久が悪人にしか見えない。
どうして殴ったかの経緯など関係ない。
目の前の男が何を言おうと悪人の戯言。
不幸なことに紡久達がガラの悪い男達に殴られている現場は誰にも目撃されず、紡久が先輩を殴る場面を警察官が目撃したため、紡久の証言より、殴られていた先輩の証言の方が正当性があるとされた。
紡久はたった一発の過ちで、先輩を重傷まで殴った傷害罪として、このまま逮捕となり、紡久は刑務所に入った。