身代わり発見
ヴァリスはまず教会へ向かった。しかし、すぐに問題が出た。聖なる教会は魔族であるヴァリスが近づくと結界が歪んでしまうのだ。
そしてヴァリス自身、肌がぴりぴりしたように拒絶反応が出る。
「ならば危ないとは言われたがしょうがないのう」
薄汚い裏路地へ進むと早速テンプレのように数人の男が取り囲んだ。
「お嬢ちゃん、何しにきたのかぎゃぶ!」
何の変哲もないパンチ。力もぜんぜん入っていない。しかしそこは男の最大の急所。汚いおっさんは顔を青くして地面に倒れこんだ。
「邪魔じゃ」
パンチ、パンチ。防御をしようとしてもヴァリスの小さな拳はまるですり抜けるように男たちの急所に衝撃を与えていく。
あっという間に汚いおっさんたちを倒して路地裏を進んだ。
「そこの少年、働かぬか?」
見かけた少年に声を掛ける。
「え?」
「働き手を募集しているのじゃ」
「ボスが外のやつらの手なんか借りないって言ってるから嫌だ」
断られてしまう。ヴァリスは精神にダメージを受けた。
「そ、そこの少女よ」
「いやぁ!」
断られてしまう。ヴァリスは精神にダメージを受けた。
「なぜじゃぁ!」
それから子供を見かけるたびに声を掛けるが、ことごとく断られてしまい半泣きになっていた。
どうやら少年少女を率いているボスがいるらしく、声を掛けられても断るように教育を施している。
それは悪い大人に連れて行かれないようにするための知恵だったが、ヴァリスにとっては不都合なことだった。
「ならば直接そのボスとやらに会いに行こうではないか」
ヴァリスは気を取り直して裏路地を進んでいく。
「あっけなく合えたのう」
ヴァリスは賄賂を贈ることを覚えた。おいしそうな食べ物と情報を交換したのだ。危害を加えなさそうな見た目も役に立っているだろう。最初こそ警戒していたが、食べ物をもらい話すことでヴァリスがただのお子様だと理解してもらったのだ。
「で、なんのようだよ?」
グループのボスとは青年だった。子供たちを非違キルのだからそれなりの年齢なのは当然だ。そこへ正直にここへきた理由を話すとポカンとした顔をした。
「マジかよ、そんな理由でこんな場所まで来たのか?」
「うむ、定員1名募集中なのじゃ」
少年グループのボスは非常に悩んだ。そして自分がその場所で働くことができるのなら妹を紹介してほしいといった。怪しい場所ならやめさせるし、ほかの連中を選ぶと軋轢を生みそうだったからだ。
快く了解し、最終的にはカルネルが決めることだと伝えてその日は終了した。
「店長!」
「なーに、ヴァリスちゃん?」
「店員じゃ!」
「は?」
「妹をよろしくお願いします」
「おねがいします!」
カルネルは困った。ヴァリスがわがままを言ったときよりも困った。まさかすぐに見つけるとは思っていなかったのだ。そしてスラムの子供。
困った結果、少年ボスの顔が非常に好みだったので引き受けた。
現金なものである。
紆余曲折あり、今後この店はスラムの住人の架け橋になるが今は関係ない話である。