表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

冷蔵庫の白雪姫

作者: 日暮栄光

 冷蔵庫を開けると、そこは青い地球だった。


 土は香り立ち、吹き抜ける風は大いなる大地の恵みを含んでいる。

手を伸ばせば、丸々超えた豚や牛。たくましい動物たち。みずみずしい野菜や果物だっている。


 さらに奥を見渡せば。深い蒼を讃えた大海が拡がり、

その上には、海の青を真似っこしたコバルトが、幾千の白くたなびく傍観者を従え、じいっとこちらを見下ろしている。


 蒼のうちでは、銀の光を放つ幾筋もの魚たちが躍り戯れ、ふざけ合い。ときにはいたずらな海鳥たちが混ぜてもらえないことに腹を立て、ちょっかいをかけたりもする。

シャイな深海の住人たちは、必死に上を見上げてはまた黙り、いつまでも鮮やかな色彩の音楽だけを奏でつづける。


 わたしは一度、大きくすうっと一呼吸。

 爽やかな命の息吹がわたしの身体の隅の隅までなだれ込み、わたしの世界を色付けてゆく。


 ああ、そうだ!


 わたしは生きている、多くのみんなと触れ合い溶け合い生きている。

 卵から産まれ、体毛を生やし、目を開け、世界を知覚し、忘れ、再び世界に溶けてゆく。

 当たり前の事、皆の参画社会のこと。

 わたしはどこから生まれたのだろう。今、わたしはどこにいるのだろう。

 どこまでもゆくのかもしれない……、どこにでもいるのかもしれない……、


 冷蔵庫を閉じると、そこはもう。わたしだった。

 わたしの立つ大地だった。

 再び冷蔵庫をあけたとき。わたしはきっと白雪姫。

 氷の大地でいつまでも。

 すやすやと、寝息を立てる白雪姫。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ