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骸骨達のお礼と初めての……

 あっという間に少年の周りを囲むように”モコモコ”と地面が盛り上がっていく。


「う、嘘だろ……」


 少年は思わず神様に祈りたい気持ちになったものの、そもそも神様に遣わされたらしい【神器】たるルークスを見てこれ以上何も期待出来ない事を悟った。

 そして”ボコッ”という音を立て地面から骨が出てきた。


「う、うわっっ」


 恐怖に駆られた少年がこの場から逃げようと足を動かす……。

 すると、動かした右足首を地面から伸びた骸骨の手が掴んだ。

 少年はそのまま地面に前のめりに倒された。


「え……へぶっッッッ」

 ――情けない奴だな。早く起きろ! 囲まれるぞ。


 ルークスは半ば呆れ気味に声をかけた。


「……プハッ、分かってる……」


 慌てて地面から顔を出した少年は状況が想像以上に悪い事に気付いた。

 骸骨達は続々と地面から”ボコッ、ボコリ”と音を立てながらその骨の一部が出てきた。

 そして、さっきの骸骨と同じく骨が組み合わさっていく。

 少年はまるで誰かが人形を組み立てているような錯覚を覚えた。


「ルークス……、どうしよう」

 ――うむ、どうしようも無いな。

「ちょ、無責任だろ!」

 ――何がだ?


 少年はまるで他人事みたいに言うルークスを思わず地面に投げつけたくなったが思いとどまった。

 そうこうしている内に骸骨達が元の姿(?)を取り戻していく。


(……ホントに”動く絵”でみたままだ)


 そこには様々な種類の骸骨がいた。

 元は”人”だったもの、”犬か狼”だったもの、”鳥”だったものと様々な骸骨が目の前にいた。


(ああ、もう駄目だ)


 ほんの数秒、現実逃避していただけだったが骸骨達は少年をすっかり取り囲んでいた。


(はあ……やりたい事がまだまだあったなあ)

 ――おい、抵抗しないのか?

「……そういえば心が読めるんだっけか。いや無理だろこの状況」

 ――お前、妙に諦めのいい奴だなぁ。


 ルークスは少年がこの状況をどこかまるで他人事みたいに淡々としていた事に驚いた。そして、


(普通ならもっと色々と抵抗しそうなモノなんだがな)


 と、思った。


 少年は”目”を閉じて待った。目の前に迫る”死”を受け入れる為に…………。



(――あれ?)


 どの位に目を閉じたのだろうか? 何も起きない事に少年は”違和感”を覚えた少年は恐る恐るゆっくりと目を開いた。


 すると、骸骨達はすぐそばにいた。だが、少年を襲う事もなく立っていた。


「え? 何で」


 困惑する少年をよそに骸骨達は突然、動いた。

 骸骨達は”道”を作ったらしく、その道をヨタヨタと一体の骸骨がゆっくりと歩いてきた。

 その骸骨は他の者とは少し違っていた。

 少年が着ているのとよく似た長衣を纏っており、多分杖のつもりなのであろう木の棒を支えにしていた。


(え~~と、おじいちゃんなのかな?)


 少年はそんな印象を受けた。

 長衣を纏った骸骨が目の前まで来た。すると、

 ”カタカタカタカタ”

 例によって”歯”を鳴らした。どうやら。何かを伝えたいのか、ポッカリと開いた目は真っ直ぐに少年に向けられていた。


 ――ふむ、成る程なあ。


 ルークスがポツリと言ったのに気付いた少年は、


「ルークス、何か分かったワケ?」


 といいながらブンブンとルークスを持つ手を振った 。


 ――ちょ、お前落ち着け!


 慌てるルークスの声と少年のやり取りを静かに見ていた骸骨達が、一斉に”カタカタカタカタ”と歯を鳴らした。


「え? もしかして笑ってるの?」

 ――やれやれ、こんなのは【初期の魔法だぞ?】……出来んのかお前?


 ルークスはさも当然のように話した。ついでに言うと骸骨達も一層歯を”カタカタカタカタ”と大きく鳴らした。


(なあ、ルークス……。もしかして僕は馬鹿にされてる?)


 少年が心の中でそう考えると、ルークスは緑色の光を放った。


 ――聞いてみたいか?

「え? 出来るの?」


 驚いた少年は思わずルークスを目の前に掲げた。


 ――初期の魔法だからな、問題ない。


 ルークスはそう答えるや否や”ピカッ”と淡い緑色の光で少年の身体を包み込んだ。

 その眩しさに一瞬周囲が見えなくなったものの、すぐに視力は戻った。

 すると、


「やれやれ、ホントにこんな子供が……なのか?」

「間違いないよ。彼が【神器】の封印を解いたんだ」


 ”声”が聞こえた。さっきまでは全く聞こえなかった”声”が自分の周囲で。


 ――どうだ? 聞こえるだろう。


 ルークスが確認すると、少年は驚きのあまり言葉が出ないのか首をブンブンと何回も縦に振った。


(魔法ってこんな事も出来んるんだな)

 ――ふふん♪ 凄いだろう。

(……そういや、心を読んでるのも魔法なんだっけ?)


 ルークスが心の中を読んで自慢気に言葉を返すのにも慣れた少年は心の中でそう思った。


 ――ちなみに【心】を読む魔法も確かに存在するが、お前の心を読むのはまた違うモノだ。例えるなら、私とお前の間にだけ魔術的な相互…………

(あ~~もういいや。とにかく……話せるんだよね?)

 ――まあな。


 ルークスが少しふてくされた感じで素っ気なく返事したので、少年は思わず苦笑しながらも、


「あ……あの、僕の声聞こえますか?」


 と骸骨達に尋ねた。

 すると、骸骨達が一斉に少年に振り向く。そして、


「――勿論だとも。私の声も聞こえるのだね?」


 そう返事を返したのは、目の前にいる長衣に木の杖を持った骸骨だった。

 その声はとても穏やかで、彼に敵意が無いのがありありと伝わってきた。


「あ、あの。さっきはすいませんでした」


 少年はそう言うと頭を深々と下げた。


「身を守ろうとして、お仲間を石で……すいませんでした」


 少年は目の前の骸骨達の様子を見て、自分が間違いを犯したと考えた。だからこその【謝罪】だった。


「人間の少年よ。謝るべきは私達なんだよ。すまなかったね」


 そう言うと、逆に骸骨達が頭を下げてきた。

 思いもしなかった展開に少年は驚きを隠せなかった。


「え、え~~と。あ、頭を上げて下さい」

「……許してくれるのかね?」

「許すも何も、ね? ルークス」


 少年は手の中にいるその【神器】に話しかけた。ルークスはただ緑色に軽く光り、返事した。

 すると、骸骨達が「おおおっっ」と声をあげ、その場にひれ伏した。


「ちょ、ちょっと。どうしたんですか? 突然」


 少年があたふたしながら骸骨達に話しかけた。

 一拍程の間を置いて、長衣の骸骨が顔だけを上げると、


「少年よ。その手にあるのは【神器】ですな?」


 と尋ねてきた。


「ええまあ、こんなのでも【神器】らしいです」

 ――おい、こんなのとはなんだよ、こんなのとは?


 聞き捨てならないと言わんばかりにルークスが怒鳴った。


 骸骨達は「お話しになった」とか「やはり本物なんだ」などとザワザワした。


「とにかく、立ってください」


 少年がそう言うと、骸骨達は素直に一斉に立ち上がった。

 そして、長衣の骸骨が一歩前に進み出ると、


「私はこの中で長老と呼ばれ、皆をまとめている者です。以後お見知りおきを【勇者】様」


 と言った。

 少年は全く予想外の話の流れに唖然(あぜん)としていた。

 今日だけで、神器の封印を解き、契約したら呪われて、さらに様々な勇者について教えられて、今は骸骨達に何だか崇められている。

 次々と起こるこれらの出来事に少年の思考回路はショート寸前だった。


「あ……頭が痛い」


 辛うじてそう言うと少年はその場に倒れた。




 ◆◆◆




「う……っ」


 少年が目を覚ますとそこは森では無かった。

 ぼんやりとした目を軽く擦り、身体を起こすと立ち上がった。

 ひんやりとした涼しさにゴツゴツとした地面。壁も同じくゴツゴツとしている。光は特になく、薄暗い。

 少年の頭にはこんな場所は一つしか思い浮かなかった。


「……洞窟なのか?」

 ――お、ようやく目を覚ましたか?


 ルークスがそう言いながら、ふわふわと近付いて来た。この薄暗い洞窟内だと黄色に微かに光るルークスの存在が有り難かった。


「ルークス……」

 ――お前……私は松明(たいまつ)じゃ無いからな。

「いや、その……」

 ――灯りを灯したいのだろう? なら、丁度いい機会だ。お前に【魔力】の使い方を教えてやろう。とりあえず、壁に手を置くんだ。


「……こうか?」


 少年が言われた通りにゴツゴツとした壁面に両手を置いた。


 ――意識を集中させろ。今、お前はどうしたいのかを考えろ。

「え~~と、とりあえず……」

 ――とりあえずじゃない! そうだな……この壁が光るように考えろ。

「壁が光るように……」

 ――そして、壁が光る様子を思い浮かべろ。強く、強くだ。

(壁が光る様子……光れば便利だなあ……)


 少年がそう思った瞬間、いきなりピカッと辺りが光り出し、壁に淡い光が灯っていた。


「ほ、ホントに光った……」

 ――ホントって。……お前疑い深い奴だなぁ。


 ルークスは呆れるように言ったものの、内心では、


(こいつは大したもんだ……ある程度の素養がある者でも初めて魔法を使える迄に一日位はかかるモノなんだがな)


 と感心していた。


「魔法使えたっ! すげえええっっ」


 少年が嬉しさのあまりに跳び跳ねていた。


「ルークスっ、思い浮かべるんだよね?」

 ――ん? ああ、そうだ。

「なら……消えろっ」


 少年が壁に手を置い念じると灯っていた光がかき消えた。


「やった。出来たああっっ」


 成功したことに喜びを爆発させ、少年はこのあと幾度となく灯りをつけては消すを繰り返し…………。限界に達した。


「も……もうダメだ」


 へたり込んだ少年を見たルークスは、


 ――意外と調子に乗る奴なんだな、お前。


 と呆れていた。


「と、ところでさ。どの位気絶してたんだ?」


 少年は時間の間隔を無くしていた。

 質問に対するルークスの回答は、


 ――さあな。


 と、素っ気ないモノだった。

 少年は、「意地悪だなあ」とぼやいた……すると、


 ――私にも時間の間隔はよく解らん。…………何故ならここは【異界】だからな。


 ルークスの言葉に少年は、


「――え?」


 愕然としながらそう言うのが精一杯だった。







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