戦いの予兆
遅くなりました。どうぞ。
「ギルドマスター、呼んだかい?」
「ああ、呼んだよ。」
ほんの少し日が傾いたある日。ここ『ブルーラ王国』にある大規模ギルド『光を掲げるもの』の一室、ギルドマスター室にギルドマスターと1人の男がいた。
「例のS級についての話だ。何かわかったことはあるか、ギラン。」
ギランと呼ばれた男。その身長は高くゆうに2mは越えている。そしてその背丈と同じ長さ、幅、厚さを兼ね備えた大剣を背負っている。顔には幾多の戦いを潜り抜けてきたのだろう、多くの傷跡が残っている。だがその傷は彼を醜くするようなことはせず、むしろもともとの顔も相まってより獰猛で、凶暴で、なにより笑った顔を見たくなるような、そんな表情を作っていた。
「わかったことは二つだけ。森にいる、恐ろしく強い。この二つだよ。」
ギルドマスターはその返答に俯く。
「あれから情報を集めようと試みてはみたものの、なにも有益な情報は集まらず、出てくるのは『ギルドの最高戦力がS級モンスターに敗れたらしい』ということしかない。無謀にも奴に挑んだバカは皆死にはしないものの、重傷で帰ってくる始末・・・。」
そう、ギルドの実力者が束になってもかなわなかった上に、A級からS級になったのだ。(A級とは数人の実力者が全力を出してやっと討伐できるされ、S級は国が総力を挙げ綿密な作戦を立て、最高のコンディションで挑めばなんとか勝てる、とされる。このことから、まして単身で挑んだバカには勝てるはずもなくギヤが思いっきり手加減して、重傷なのだ。この点においては指名手配などにせずタダのS級モンスターにしておけばよかったのだ。)A級とS級の差は激しくギランでならA級は1人で討伐できるが、S級は違う。
(あれは段違い、ってもんじゃねぇ。ケタが違った。俺が全力で打ち合って一本とれるかどうか・・・。)
実際ギヤは本気を出せばS級モンスター3体までなら単身討伐できる。そのギヤに一本取れる、と言うのだからギランも大概バケモノである。
「ふう、やはりやるしかないようだね。」
「と、言うことはついにあの作戦をやるのかい。」
「ああ。これより我々は、S級モンスター討伐作戦を発令する!」
「おまえら、聞いてたかい?」
背を向けたままだがドアにむかって語りかける。
「おうよ!」
「やってやるさ。」
「このときのために貯金使い果たしちゃった。」
ドアが勢いよく開きその奥からわらわらと人と声があがる。
「君は本当に・・・はぁ。」
まさか全ギルド員に聞かれているとはしらず、思わずため息がこぼれる。
「ハハッ、許せ許せ。回りくどいのは苦手でね。」
「はぁ、もともと諦めてたよ。・・・全員!戦闘準備!」
すこしうなだれていたが一拍置いてシャキッ!となって全員に聞こえるように宣言した。
「「「「応!」」」」
「これが奴に関しての情報の全てです。」
「ぬぅ・・・これでは全くわからんではないか!」
「ハッ!申し訳ございません。なにぶんギルド側もこれ以上わかってはいないようで、こちらが調べたものもあまり大差なく・・・。」
「・・・もうよい、下がれ。怒鳴ってわるかったな。」
「いえ・・・。」
一礼し騎士が立ち去る。彼が持ってきた報告書にはほぼ噂しか書かれていなかった。だが、報告書を見ていた老人はそのある一カ所をじっ、っと見つめていた。
「攻撃するか、ギルドよ・・・。」
そこには
「S級モンスター以降、『黒騎士』とし、現ギルド最高戦力のSランク8名とAランク63名で総攻撃を予定。」
と書かれていた。
「ふむ・・・おい、いるか!」
パン、と手をたたく。
「ハイ、ここに。」
すると何処からともなく全身に黒の布の服を纏った男が現れた。
「これより我が獅子騎士団はギルド光を掲げるものに味方し、共に黒騎士の討伐に参加する!これを全員に伝えよ。それとそちらのほうでもこの黒騎士について調べて置いてくれ。」
「御意。」
現れたときと同じように、今度はその姿を消した。
こうして後の世に語り継がれる『第一次黒騎士討伐』が始まった。
なにから説明しようか迷ったのですがとりあえずこれだけ。「複線とかの回収、主人公側のお話が書けねぇぇぇぇ!」いきあたりばったりってこわいですねえ・・・。次回、カム森の戦い