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第十四話  復習の時間

   第十四話  復習の時間

    

 鈴花たちが居た家は、岩によって玄関前から裏口までの塀は破壊され、植物たちも無残な姿となっていた。家の一部も損傷を受けており、彼女たちは早速中から確認することにした。

「ああ、人の家をこんなにして。」

 該当箇所を家の中から見ると、外からの力で壁が膨らみ亀裂が入っていた。ここに居る誰も直せないだろうからこのままにすることにした。崩れる可能性が出てきたら別の場所に移動しなければならないだろう。

 鈴花はハルに黒い本を預けるとリビングのソファに腰を下ろした。その反対側にハルが座る。

「なんで夜遅くに出てくるのよ。時間なんて全く関係無いわけ。」

 時計を見れば午前を回っていた。それでも眠くは無い。いや、あんな事をした後なのだ。簡単に眠れるほど彼女の神経は図太くない。

 ハルが立ち上がり、テレビの前に立った。

「眠れないならこれでも見て勉強すると良い。」

 ハルは手をかざすと、すぐにテレビに映像が映される。テレビに映し出されたのは数学の各分野の名前である。

「本当はさっき古典文学を映し出そうとしたんだけどな。今後を考えればこっちを見ておいたほうが良いだろう。」

 ハルはテレビの画面を見ながら言った。数学の各分野のお勉強が出来るようだ。ハルに言えば彼が操作してくれるらしい。ざっと中身を見てみると範囲は中学数学だ。夕方戦ったネビュラを見る限り、敵を倒すには数式を解いて答えを書いていかなければならない。理由はどうであれそれが敵を倒す方法なのである。だとしたら、多項式や方程式といった数式の計算を重点的に調べておけば良さそうだ。今は単純な足し算や引き算だけだが、今後それだけでは終わらないだろう。なぜなら、これをハルが出した時点でそれ以外の分野の問題も扱いうると言っているようなものだ。照明のようにこれらは黒い本が裏で行っていると考えられるからだ。黒い本は多くを語らない。しかし、必要と思われるものは提供する。だとしたら、これも必要と思われるものなのだろう。

「部屋に行って紙とペンを探してくる。」

 鈴花はソファを立つとリビングを出て、彼女の部屋へと向かった。耳や目で分かったとしても脳が理解しなければどうしようも無い。手で書かなければ覚えないのだ。彼女は部屋で筆記用具と紙を探す。部屋主には悪いが無駄に浪費するわけではないので見逃して欲しい。机の上にあるペンと机の中にあった何もかかれて居ないノートを取り出す。表紙にはただ彼女の名前が書いてあった。まるで前から自分のものであったかのような感覚と、それでも自分では無い人間のものであるという感覚が混ざり合う。なんとも不思議な気分だ。

 鈴花は写真を見た。眠る前に見た三人が写った写真である。一度眠ったためか、今は落ち着いて見ることが出来た。この三人はこの世界の鈴花とその両親なのだ。彼女は片手で写真に軽く触れる。

「何故こんなことが起きたの。」

 鈴花は写真の中に居るもう一人の自分に問う。この世界で何かが起こったのだ。けど、彼女は何も知らない。知ることができない。

 鈴花は机の引き出しに背中をつけて座った。

「私は誰のために戦っているんだろう。」

 見上げた天井には、ただ鈴花のために光を放つ照明だけがある。

 彼女は軽く首を横に振ると立ち上がった。誰も教えてくれないのだ。誰も。

 

 

 鈴花は紙に数式とその答えを書いていく。基本的な問題でも解法が分からなければ解けない。忘れていた解き方を思い出していく。まるで実力テスト前の状態だ。広範囲の数学を勉強して、試験に挑む。違うのは間違えればただでは済まされない点だ。何故敵を倒すために数式を解かなければいけないのか疑問である。このことはハルも黒い本も教えてくれない。ただ、そうであると理解したほうがよさそうだ。

「もうだめ。疲れた、寝たい。」

 鈴花はソファにもたれかかり、薄目で天井を見上げた。時計を見ていないがそろそろ明るくなる頃かもしれない。

 鈴花はゆっくりと立ち上がりカーテンを開く。瞬間、太陽の光が目に入る。彼女は強烈な光に目を背けた。ゆっくりと目を開くと明るい朝が見えた。

「休んだほうがいいだろう。」

 背後からハルの声が聞こえる。鈴花はゆっくりと振り返った。

「部屋で眠ってくる。消しといてもらえる。」

 鈴花はテレビの画面を見た。今も画面には数式が表示されている。

 鈴花は大きくあくびをすると彼女の部屋に戻ってベッドに倒れこんだ。カーテンを少し開けると部屋の中に差し込んでくる朝日。彼女は疲れたためかそのまま眠ってしまった。

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