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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

ISEKAIゾンビ・オブ・ザ・デッド~おっさんゾンビハンター異世界で無双する~

作者: 鶏ニンジャ
掲載日:2026/04/13

開けた平原を、二人の男女が歩いている。


一人は、白銀のよろいに身を包んだ凛々しい女騎士。

もう一人は、この世界にはおよそ不釣り合いな、ボロボロのチェックの上着に破れかけのジーンズを履いた中年男性だ。


女騎士は堂々と胸を張って進む。

対する男性は、ボコボコに歪んだ鉄製の棒をギュッと抱きしめ、周囲をビクビクとうかがっていた。


「サトウ……いい加減にしろ。そんなに怯える必要はない」

「で、でも、カタリナさん。いきなり襲われるかもしれないし、警戒しないと……」

「この辺の魔物が不意打ちをしてきても、私が負けるはずがないだろう」


おどおどした男性――サトウの言葉に、女騎士カタリナはいら立ちを隠さない。


「貴様も転生者なら、戦う力くらいは持っているのだろう?」

「戦うなんて無理ですよ! だって、相手が死んじゃうじゃないですか」

「戦いとはそういうものだ。まったく、とにかく行くぞ。王都まで急がねばならん」


カタリナが再び歩き出すと、サトウもその後を不安そうについていく。


(まったく……なぜこんなことに)


カタリナは内心で大きなため息をついた。


転生者の反応を確認した国は、カタリナたち騎士団を派遣した。

だが、到着するなり魔物の強襲を受け、カタリナ以外の騎士たちは全滅してしまった。


彼女はたった一人で、このサトウという「無能」に見える転生者を、王都へと護衛しなければならなくなっていた。


「カタリナさん、そろそろ暗くなって来たし休みませんか? ちょうどあそこに、良さそうな空き家もありますし」


しばらく歩いていると、サトウが不意に提案した。

少し遠くに、ボロボロの民家がぽつんと立っているのが見える。


「……はぁ、仕方ないな。早く王都に向かいたいが、街はまだ遠い。今日はここで休むか」

「よかったぁ……。気を使いすぎて疲れ果ててたんですよ。じゃあ行きましょう!」


そう言うなり、サトウは空き家へと駆け出していく。


(……なんなんだ、こいつは)


カタリナはその背中にイラつきながらも、しぶしぶ後を追った。


空き家の中へ足を踏み入れたカタリナは、目の前の奇妙な光景に思わず足を止める。


「……なにをやっているんだ?」


サトウはその辺に転がっていた板を拾い上げ、手際よく窓へと打ち付けていた。


「え? 守りを固めてるんですけど?」

「はぁ……。貴様というやつは臆病が過ぎる。そこまでする必要はないだろう」

「備えあれば憂いなし、ですよ。お酒もあったし、ここはいい拠点になりそうですね」


話しながらもサトウの動きは止まらない。

まるで体に染み付いたルーチンのように、次々と窓を封鎖していく。


(なぜ、こんな男を守らなければならないんだ)


カタリナは呆れ果て、頭を抱えて深い溜め息をついた。



~数時間後~


「カタリナさん、カタリナさん!」

「ん……?」


鎧を身に着けたまま、壁にもたれかかって眠っていたカタリナは、サトウの切迫した声で目を覚ます。


「どうしたんだ?」

「なんか変じゃないですか?」

「変?」


彼女は外の気配をさぐる。

しかし外は静まり返っており、特におかしなところは見当たらない。


「なにも変じゃないだろう。まったく、貴様は心配しすぎだ」

「でも、こんなに静かなのは異常ですよ。動物の声すら聞こえない。これじゃあ、まるで『奴ら』が来る前みたいだ……」

「え?」


もう一度、周囲の気配を意識する。

言われてみれば、確かにおかしい。


夜の静寂というには、あまりに静かすぎた。

虫の音も、獣の遠吠えも、一切が消失している。


「カタリナさん、これは……」


バキンッ!


サトウが言いかけたその時、激しい音を立ててドアが打ち破られた。


「ぐぉぉぉぉぉ……」


壊れた隙間からい入ってきたのは、腐り果てた肉塊――ゾンビだ。


「くっ!」


カタリナは騎士の反射で即座に剣を抜くと、一閃いっせんでゾンビを真っ二つにする。

だが、胴体を斬られた死体は、それでもなお這いずり、カタリナの脚を掴もうとした。


本能的な恐怖と不快感に、カタリナの顔が歪む。


「ひっ!? サ、サトウ! 逃げるぞ!」


それでもカタリナは歴戦の騎士だ。

恐怖を気力で抑え込み、建物の外へと飛び出した。


だが――。


「くっ……。こ、これは!」


周囲はすでに、無数のゾンビに包囲されていた。

逃げ道など、どこにも残されていない。


「うぉぉぉぉ……」


その群れの中に、見覚えのある鎧を纏った者の姿があった。


「ロベルト、ベア……。そんな、昨日までは……あんなに楽しそうに笑い合っていたのに……」


カタリナはその光景に絶句する。

彼らは、彼女と共に戦ってきた大切な部下たちだ。


誇り高き騎士だった彼らが今、生ける屍となって自分に牙を剥いている。

その事実は、カタリナを深い絶望の淵へと突き落とした。


「や、やめろ……。やめてくれ……」


剣を構える手は震え、声は裏返る。

かつていくつもの戦場を共にした仲間。その無惨な姿を前に、体は金縛りにあったように動かなくなった。


しかし、騎士のゾンビたちは容赦なく、ゆっくりと間合いを詰めてくる。


「や、やめてくれ……頼む……神よ……」


カタリナは震えながら祈った。


普通の敵であれば、彼女ほどの騎士が怯えることはない。

だが、動く死体は別だ。

神の教えに反したおぞましい存在。この世界の人間にとって、それは本能が拒絶する悪夢だった。


しかも相手が見知った仲間であれば、その恐怖は耐え難いものとなる。


「うがぁぁぁぁぁぁ……!」

「ひっ!」


カタリナはたまらず、強く目をつぶった。


だが、次の瞬間――。


「そらよ!」

「ぐがっ!」


硬い金属が肉を潰す鈍い音とともに、ゾンビの断末魔が響き渡った。


カタリナが恐る恐る目を開くと、そこには鉄の棒をフルスイングし、ゾンビ騎士の頭を粉砕したサトウの姿があった。


「サ、サトウ……?」

「カタリナさん……」


サトウはどこからか取り出したタバコに火をつける。


その瞳に、先ほどまでの怯えの色は微塵もない。

底の見えない深い悲しみと、暗い狂気が宿っていた。


「このマイケル・サトウ様の活躍、しっかり目に焼き付けておけよ!」


タバコの煙がゆらりと立ち昇り、反撃の合図となる。

これより不浄の捕食者たちは、熟練のゾンビハンター……狂気の殺戮者の獲物へと成り下がった!


「へい! ルーシー! 派手にかまそうぜ!」


サトウは愛用のバットに話しかけながら、ゾンビの群れへと特攻する。


「そらよ! ホームランだ!」


SMAAAAASH!!!


ゾンビの頭が弾け飛び、別のゾンビに激突する。

お互いの頭部がぐしゃりと潰れた。


「あはは! どうだ? ツーアウトってな。……っと、あぶねえ!」


左から迫るゾンビの爪。

サトウは最小限の動きでそれをかわすと、そのまま膝に一撃を叩き込む。


さらに転倒したゾンビの頭へ、渾身の一撃を振り下ろした。


「スリーアウト! でも、まだまだチェンジじゃないぜ? なあ、ルーシー。もっとぶちのめしたいだろ?」


殺戮者は、片っ端からゾンビの頭を叩き潰していく。

大地と彼は、どす黒い血で赤黒く染まっていく。


「あはははは! こっちのゾンビは走らねえし、頭さえ潰せば動かなくなるんだから最高だな! こんなゾンビを用意してくれるなんて、神様、愛してるぜ!」


バットを振り回しながら、サトウはゾンビたちを次々とただの肉塊に変えていく。

その一撃は、熟練の処刑人のように精密で、そして無慈悲だった。


だが、敵の数はまだ尽きない。


「おいおいおい、こいつらには『カクテル』が必要だな!」


サトウはバッグから手製の火炎瓶モロトフカクテルを取り出す。

タバコの火で着火すると、密集した群れに向かって投げつけた。


「ははは! カクテルパーティだ! 燃えるだろう? 好きなだけ飲んでけよ!」


着火、投擲! 着火、投擲!


ありったけの火炎瓶が、次々と炎の華を咲かせる。


「うごぉぉ!」

「ぎゃぁぁぁ!」


燃え盛る炎の中で、赤い殺戮者はさらにバットを振り回し続ける。 ガランと乾いた音を立ててバットが翻るたび、カタリナを絶望させた死者たちは、ただの炭へと変わっていった。


「これで終わりだ!」


SMAAAAAAASH!!!


最後の一匹の頭をフルスイングで叩き潰したのと同時に、東の空から朝日が昇り始めた。 不浄なる者たちへの凄惨な殺戮ショーは、ここに幕を閉じた。


「ふぅ……。こっちのゾンビは感染しないっぽいから助かるなあ」


サトウはタバコを携帯灰皿に押し込むと、大きく伸びをした。

先ほどまでの狂気は完全に消え去り、元のしょぼくれた中年男性の姿に戻っている。


「あ、カタリナさん。大丈夫ですか?」


血まみれのまま、サトウはいつもの優しそうな笑みを浮かべて声をかける。


「サトウ……いや、サトウ様」


カタリナはよろよろと彼に歩み寄ると、その場に片膝をついて深く頭を下げた。


「カタリナさん!?」

「死者を恐れもせずに葬るそのお姿……感銘を受けました。これまでの無礼な態度、どうかお許しください」

「いやいやいやいや。そんなかっこいいもんじゃないですよ。服もこんな血まみれですし」

「いいえ、それこそがあなたが聖者であるという証です。どうか私を、あなたの守護騎士としてお認めください」


カタリナは真剣な眼差しで懇願した。


「えーと……その件はとりあえず王都に行ってからってことで、すいません!」


サトウは逃げるように走り出す。


「お待ちください! サトウ様!」


カタリナもそれを追って走り出す。


こうして、ゾンビ世界を生き抜いてきた男の第二の人生と、彼に仕える自称・守護騎士の冒険が幕を開けたのだった。

※この作品はフィクションであり、実在する、人物 地名 団体とは一切関係ありません。

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