正しいと思った
“正しい行動”をしても、助かるとは限りません。
もしかすると、このゲームが見ているのは――もっと別のものなのかもしれません。
誰も、すぐには動けなかった。
“考え方も評価される”
そのルールが、重すぎた。
「……なんだよ、それ」
誰かが笑う。
乾いた声だった。
「じゃあ、どうしろって言うんだよ」
「“正しいと思い込め”ってか?」
空気が悪くなる。
当然だった。
行動だけじゃない。
考え方まで見られている。
そんなの――
「怖すぎるだろ……」
幼馴染が、小さく呟く。
その手はまだ震えていた。
「……でも」
あの男が言う。
全員の視線が集まる。
「逆に言えば、“自分で正しいと思える行動”なら評価される可能性がある」
「……は?」
誰かが眉をひそめる。
「つまり?」
「他人に合わせる必要はない」
静かな声。
「自分が、本当に必要だと思って動け」
その言葉は。
少しだけ希望に聞こえた。
でも同時に――危険だった。
「……じゃあ」
一人の女が前に出る。
高校生くらいか。
不安そうな顔をしている。
「人を助けるのは……?」
全員が見る。
女は倒れている男たちを見る。
「怪我してる人とか……助けたら」
「意味ある行動になるんじゃ……」
沈黙。
誰も否定できない。
「……確かに」
誰かが呟く。
「助けるのは必要なことだろ」
空気が少し変わる。
希望を探すような空気。
「……やってみる」
女が、小さく言った。
止める声はなかった。
止められなかった。
女はゆっくり歩き出す。
倒れている男の近くへ向かう。
膝をつく。
「大丈夫ですか……?」
返事はない。
でも。
女は震える手で、その男の肩に触れた。
その瞬間。
スマホが震える。
全員が息を呑む。
女が画面を見る。
95 → 97
「……増えた」
小さな声。
でも。
その場の全員に聞こえた。
「おお……」
「マジかよ……!」
空気が揺れる。
“助ける”は正しい。
そう思った。
その時だった。
別の男が、突然走り出す。
「なら俺も!」
止める暇もなかった。
男は別の倒れている人へ駆け寄る。
「助ければいいんだろ!?」
焦った声。
必死だった。
でも――
スマホが震える。
男が画面を見る。
95 → 50
「……え?」
空気が凍る。
「な、なんで……」
男の顔が青ざめる。
「同じことしただろ!?」
その瞬間。
また、スマホが震えた。
50 → 20
「や、やめ――」
20 → 0
男の体が崩れる。
ドサッ
静寂。
誰も、動けない。
「……なんで」
女が震えた声を出す。
「同じことしたのに……」
答えられる人間はいなかった。
ただ一人を除いて。
「……“助けたい”と思ってなかった」
あの男が、静かに言う。
全員がそいつを見る。
「ポイントが欲しかった」
「だから失敗した」
その言葉に。
誰も反論できない。
確かに、あの男は焦っていた。
“加点される行動”を真似しようとしていた。
「……じゃあ」
誰かが呟く。
「本気じゃないとダメってことかよ」
「多分な」
男は短く答える。
「このゲームは、“本心”を見てる」
背筋が寒くなる。
嘘。
打算。
演技。
そういうものが――通じない。
「……そんなの」
幼馴染が震えた声を出す。
「どうすればいいの……?」
答えはない。
でも。
一つだけ、確かなことがある。
このゲームでは。
“正しいふり”をした瞬間に――死ぬ。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
少しずつ、このゲームの恐ろしさが形になってきました。
同じ行動をしても、結果は同じにならない。
それはきっと、“行動”ではなく“中身”を見られているからです。
よければ、この先も見届けていただけると嬉しいです。
――あなたは、本心で動けますか?




