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嘘の世界1

ひびの瓶

作者: ハル

希望は、棚に並んで売られていた。


町の中央にある、天井の低い店だった。

外から見ると倉庫のようで、何を売っているのかは分からない。


ただ、扉の横に小さく「希望」と書かれていた。

それ以上の説明はなかった。


瓶に入っていて、すべて同じ形だった。

透明で、ラベルもない。

中身は見えない。


振ると音がしたが、何が入っているのかは分からなかった。

軽いとも重いとも言えない音だった。



この町では、希望は使うほど減った。

使うというのが何を指すのかは、誰も決めていない。

ただ、使ったと感じた人の瓶は、次の日に少し軽くなっていた。


反対に、使わなかった人の瓶は、いつの間にか増えていた。

増えると言っても、見た目は変わらない。数が合うように、自然に増えていた。



だから人々は、希望を使わなかった。

使ったつもりにならないように気をつけた。

考えすぎないようにした。期待しないようにした。


瓶は棚の奥に置かれ、布をかけられ、時々位置を変えられた。



店主は毎朝、同じ時間に店を開けた。


瓶を一つずつ拭いた。

売れることはほとんどなかった。

それでも拭いた。拭かない理由がなかったからだ。


客は、来るには来た。

棚の前に立ち、瓶を眺め、数を確かめた。


減っていないことを確認すると、安心して帰った。

買わない理由を説明する人はいなかった。説明は必要なかった。



ある日、ひびの入った瓶が一つ見つかった。

棚の下の段にあった。

前の日にはなかったはずだが、誰も確信を持てなかった。


その瓶だけ、音が違った。振っても、ほとんど音がしない。

中身が少ないのか、詰まっているのか、最初からそういうものなのか、分からなかった。


店主は一度、棚に戻そうとした。

だが、どこに置いてもしっくりこなかった。並びが崩れる気がした。

結局、床に置く。



その夜、町に風が吹いた。

窓が鳴るほどではなかったが、静かでもなかった。


棚の瓶がいくつか揺れた。

倒れたものもあったし、倒れなかったものもある。


朝になると、割れた瓶はなかった。だが、数が合わなかった。

いくつか足りなかった。


売れたわけではない。

盗まれた形跡もない。

ただ、なくなっていた。



人々は集まり、数を数えた。何度も数えた。

減っていることだけは一致した。


何が減ったのかは、誰も言えなかった。


数え終わると、皆ほっとした。

数えられるものは、まだ残っていると分かったからだ。


床には、ひびの入った瓶だけが残っていた。

中から音はしなかった。振っても、振らなくても、同じだった。


誰も拾わなかった。

拾うと、何かが変わりそうだった。

変わることが良いのか悪いのか、誰にも分からなかった。



瓶はそのまま置かれた。

人々はそれを避けて歩いた。

踏む理由も、壊す理由もなかった。


数日後、棚は元の数に戻っていた。

いつ増えたのかは分からない。

最初からそうだったようにも見えた。



希望は、今日も棚に並んでいる。

瓶はきれいで、数も合っている。


床の隅には、ひびの入った瓶がある。誰のものでもないまま、そこにある。


店主はそれを見ないようにしている。

見てしまうと、拭く理由が生まれてしまいそうだからだ。


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