表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
だから僕は人間を辞めた  作者: プリン伯爵『虹色魔導師は目立ちたく無い』発売中!


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/32

第27話 ラムナスの思惑

「ラムナス様、島への侵入者が宮殿に迫ってきております」


薄黄色を基調とした宮殿の奥で、ラムナスとその横に一人の女性がいた。

ラムナスは目を瞑り、ジッと女性の言葉を聞き続ける。


「始末する為出て行ったゼロヨンとゼロツーが戦死。敵側にはゼロワンがいるとの情報も入ってきておりますが」

黙って聞いていたラムナスがゼロワンの名を聞いて、ゆっくりと目を開く。


「そうか……アイツが」

「ゼロワンに対抗できる戦闘型は彼女しかおりませんが……」

ラムナスは難しい表情で、該当の人物を思い浮かべた。


戦闘型を生み出す実験で、最初に成功した実験体SX00。

感情表現を代償にしてしまったが、戦闘能力は極めて高い。

それこそゼロワンを凌駕するほどだった。


しかし唯一の欠点は、感情を持たぬことである。

無表情で人を殺し、命令に忠実。

情を持たぬが故に純粋な殺戮マシーンであった。


これだけ聞けば新人類にとって切り札になり得るのではないかと思えるが、その殺戮衝動の対象は人間に限った話ではない。

人型の全てを対象にしてしまうのだ。


だからラムナスは彼女を幽閉した。

人に近しい見た目を持つ新人類すらをも標的にしてしまう彼女は諸刃の剣であったから。



「ダメだ、ノルは出さん」

「ですが、それではここまで来るのも時間の問題です」

「防衛システムを全て作動させろ。……まあ、奴が本気であればそれも無駄だろうがな」

ラムナスは自身が主導して行った戦闘型新人類の実験で最高傑作と称したゼロワンの戦闘能力を高く評価していた。

島の防衛システムもなんなく突破するほど攻撃力を持ち、条件さえ揃えば一人で国を相手に戦えるような化け物だった。


「ラムナス様、どちらへ行かれるのですか?」

「私が相手をしなければならん。お前は……脱出艇で島の外に逃げるといい。よく仕えてくれた、感謝する」

「な、何を仰っているのですか!?ワタシが邪魔になったのですか?」

ラムナスは泣きそうな女性の肩に手を置くと、優しく微笑む。


「私が世界をひっくり返すと言った時、付いてきてくれたのは感謝している。だが、お前までここで命を落とす必要はない」

「ワタシも一緒に――」

「分かってくれ。お前は人間なのだ。これから始まるのは新人類同士の殺し合い。人間のお前では余波を受けただけでも無事で済まん」

ゼロワンと真っ向からぶつかるのであれば、使える兵器は全て使わなければならない。

そうなれば当然島がめちゃくちゃになり、この島唯一の人間である彼女、長良しおりは死んでしまう。


「長良、お前は生きて私の偉業を後世に伝えろ。それが最後の命令だ」

「なぜ、最後まで一緒にいさせて貰えないのですか……ワタシは、ワタシの目的はこの世界を壊す事。貴方とならそれができると信じていたのに!なぜもう諦めたような事を言うんですか!」


ラムナスは悲痛な表情で訴えかけるしおりの言葉を黙って聞く。


「我々は新人類の為の世界を作る。そう約束したな?だがもう私は疲れたのだよ。人間は新人類と我々を区別し始め、新人類となった者達はその世界の在り方に異議を唱える。争いのない世界を作るには絶対的支配者が必要だった。だから私はここまできた。新人類だけの島を作り世界中に点在する新人類に対して強制的に命令を下せるシステムを作った。……結果はどうだ、世界は今や滅びの道を辿っている。そうは思わないか?」

「ですが……ここで諦めたら理想の世界を作る為に犠牲になった者達へ顔向けができません」

しおりの言う通り今までに実験と称して犠牲になった人間は数知れない。

見方によっては歴史に名を遺す大罪人として記されるだろう。


「分かっている。だから最後の最後くらいは私自ら足掻いて見せよう」

「では、その最後を見届けます。ワタシには貴方の偉業を後世に伝えるという命令がありますので」

もはや何を言ってもしおりがこの場から去ってくれる事はないのだと分かったラムナスはため息をついた。


「……死んでもしらんぞ」

「それならそれで。それと、ノルはずっと檻の中に閉じ込めておくつもりですか?」

「命令を下す。人と共に生きよ、と。殺戮衝動に関しては命令を優先する以上、抑えられるはずだ。恐らくな……」



人間が生み出した科学の結晶。

それが新人類と呼ばれる人間だ。

ラムナスにとってこの世界は生きづらい。


人間を淘汰し、新人類だけの世界を作る。

そう言って立ち上がったのはもう何年も前の話だ。


その頃から共に人生を歩んできたしおりの存在はラムナスにとって大きなものだった。


何年も何十年もかけて新人類の数を増やし、今では世界人口の六割を超える数となった。

それでも人間には勝てない。

何十年もの月日を経てラムナスは気づいてしまったのだ。


新人類を生み出した人間に勝てる道理などなかったのだと。



「島の防衛システムを全て起動!戦闘型も全て投入しろ!最大の敵はゼロワンただ一人だ!」

「全システム起動確認、戦闘型はゼロサン及び試作型も全て投入完了」

「私のそばを離れるなよしおり」

「もちろんです。最後まで見届けますから」


ラムナスはマントを羽織ると宮殿の外へと向かう。

迫る敵は新人類最強の兵器SX01。

ラムナスも真っ向からぶつかり合えば勝てる相手ではない。

正確には長良しおりを殺された時点でラムナスの敗北である。


ゼロワンは制御チップがある為直接ラムナスを殺す事こそできないが、自分の命より大切なしおりは殺すことができてしまう。


「ゼロワン……私がそれほど憎いか」

「え?何か言いました?」

「いや、何もない。派手に行くぞ。世界中にいる新人類に最後の命令だ。新人類の為にこの世界を手にせよ!慈悲など必要ない、人間は全て殺せ!」

しおりは手元のタブレットを素早く操作し、最終プログラムを起動させた。

これでもう後戻りはできない。


このプログラムはもっと新人類の力が圧倒できるまでは起動するつもりがなかったものだ。

しおりは固く目を瞑り、画面上のボタンを押した。



「これで……ワタシも歴史に名を遺す大罪人ですか、ね」

しおりはほんの少しだけ寂し気な表情を浮かべ、どこともなく空を見つめる。


彼女は完全な人間だ。

どこの部位も器官も五感も人間のままだった。


だからか同じ人間をこの手で殺すのかと思うと少しだけ手が震えていた。


しおりの手に持つタブレットは全ての新人類に命令を下すことのできる管理者プログラムが入っている。

ラムナスの指示通りの事しか今までしてこなかったが、最後に一つだけ命令にはない操作を実行した。


タブレットの画面上には”神の眼”と呼ばれるプログラムが表示されていた。


「どうした?」

「いえ、なんでもありませんよ。ちょっと緊張しただけです」

「まあ無理もない。そのボタン一つで全世界の新人類が忠実に命令に従うのだからな。間接的な殺人者だ」

「ですよね。……でも覚悟はしてましたから。最初から……貴方についていく事を決めた時から」



宮殿の外は騒がしい。

激しい爆発音と銃声がひっきりなしに聞こえてくる。


まだ侵入者であるゼロワンの姿は見えなかったが、音は徐々に近づいてきていた。

もう間もなく接敵する。

それは島の全てを把握しているラムナスには気づいていた事だ。


それに、ゼロワンが人間を引き連れてきていることも。


「ゼロワン以外はただの人間だ。恐れることはない。しおり、シールドは張っておけ。いつゼロワンが現れるか分からんのでな」

「はい、大丈夫です。でもどうせゼロワンの兵器ならシールドなんて意味を成しませんけどね」

しおりもよく知っている。

ゼロワンの性能を。

搭載されている兵器を。



彼女もまた、ゼロワンが作られたその実験を見ていたから。

ブックマーク、評価お願いいたします!


誤字脱字等あればご報告お願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ