第26話 ゼロの秘密
何度かの戦闘ののち、僕らは宮殿が見える所まで近付いていた。
ここまで来るのに半分の仲間が死んだ。
いや、正確には置いていったという言葉が正しい。
怪我を負った者を連れていける余裕はなかった。
仕方がないと思いつつも、申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
「右!三人!」
「左一人!コイツは俺がやる!」
「後ろから五人だ!時間を稼ぐ!」
各自、自分の判断で対処していく。
もう慣れたものだ。
新人類といえども心臓を破壊すれば生命活動が止まる。
つまり、急所は人間と同じなんだ。
ただ少しだけ人間よりも頑丈なのは当然だ。
だって機械でできているのだから。
そういえばゼロはひっきりなしに内蔵されている兵器を使いまくっているがエネルギー残量は大丈夫なのだろうか?
「ゼロ!飛ばしすぎじゃないか!?」
「ふん……お前に心配されるほど俺はヤワではない」
違う、強がりだ。
この中で誰よりも戦果を上げていて、みんなを引っ張ってくれている。
万が一にもゼロがここぞというタイミングでエネルギーが切れてしまったら、僕らは全員おしまいだ。
「力をセーブしてくれ。僕が前に出る」
「おう、俺もやるぜ!だから少しは楽してくれやゼロ!」
剛田さんもゼロの様子を気遣ってか僕に同意してきた。
実際ここまで来るのに僕らの十倍以上は新人類を倒している。
かなりのエネルギーを消耗しているのは明らかだ。
「人間如きに心配される謂れはないぞ」
「まあいいから休んでいてくれ。たまには僕らにも手柄を譲ってくれよ」
「そうだぜ。こういう時は仲間を頼るってもんだ!」
ゼロは僕達がしつこく食い下がってきたからか、渋々後ろへと下がった。
「よし!やるぞ大我!右は任せた!」
「了解です!そっちはお願いします!」
僕らは左右に広がり立ち塞がる敵を殲滅していく。
エネルギーパックも最後の一つになった。
剛田さんの方も横目でみるとショットガンの特殊弾薬が尽きたようだ。
「数が多いな!この島に何体新人類が隠れてやがる!」
「こっちは後三発です!」
正直もう継戦能力は殆どない。
研究所から持ってきた兵器の類はもう全て弾薬が尽きた。
残っているのは旧兵器ばかり。
鉛玉を射出する武器ばかりだった。
足止め程度はできるが、何十発も撃ち込まないと新人類の生命活動は止められなかった。
「あらあらあら、ゼロワンじゃないのぉ」
やっと敵の姿が見えなくなったと思うと、白衣を着た女性が建物の影から現れた。
コイツもゼロの知り合いらしく、僕らは何も言わずに後ろへと下がった。
既に僕らは見ている。
青肌の男の脅威を。
恐らく目の前の女性の見た目をした奴も何らかの兵器を隠し持っているはずだ。
「何の用だ……ゼロツー」
ゼロツー?
まさかゼロの後継機なのだろうか。
「懐かしい名前ねぇ。今の私はニアよ」
「ふん……人間らしさを捨てたくせに何を今更」
「いいじゃないのぉ。だってゼロツーなんて可愛くないわぁ」
腰をクネクネさせ、微妙に苛つかせる喋りをする女だ。
新人類には癖の強いやつしかいないのか?
「大我……奴は曲者だ。絶対に口を開くなよ」
小さく蚊の鳴くような声でゼロが耳打ちしてくる。
ゼロが曲者だと言うほどだ。
よほど厄介な相手らしい。
「で?その子達は何なのかしら?」
「……貴様に言う必要性は感じん」
「なんでよぉ。私達の仲でしょう?」
「知らんな。たかが同じ型式の機械を使っているからと仲間意識を持たれてはかなわん」
「同じ?いやぁねぇ。私の方が新しいわよ。旧世代の老骨は黙ってちょうだい?」
流石にゼロもイラッとしたのか顔を顰めていた。
相手を煽る事で冷静さを失わせようとしている?
身体も細いし兵器を大量に内蔵しているとは思えなかった。
「それでどうして今更この島に帰ってきたのかしら?もしかしてあのお方を殺す為?」
「良く分かっているじゃないか。そういうお前も昔はあれだけ怨みつらみを吐いていたくせに、今では飼われてしまったか?」
「……言うじゃないのぉゼロワン。でも私は自分の意志よ。貴方とは違うの。あのお方に素晴らしい力を与えてもらったのだから!」
ニアが白衣を開けるとお腹の辺りに巨大なスピーカーが取り付けられていた。
「チッ!」
ゼロは即座に片腕を突き出しガトリングを連射する。
「無駄よぉ!私の音波の前には全て無意味!殺戮の音波で朽ちていきなさい!」
「全員耳を塞げ!」
ゼロが叫ぶと僕らは両手で耳を塞いだ。
それと同じくして不協和音が僕らを襲った。
何人かが間に合わなかったらしく、目や耳から血を流しそのまま地面へと倒れ込んだ。
「ウグゥゥ……頭が、割れる……」
「な、何なんだこれ!」
僕も耳を塞いでいるがそれでも防ぎきれない心臓を掻き毟るような不快な音が脳裏に刻まれていく。
「あらぁ?頑丈な人間もいるものねぇ?それともゼロワン、貴方が何かをしたのかしら?」
どうやらゼロが電磁シールドを咄嗟に張っていたらしく、本当であれば頭が破裂するような威力があったそうだ。
「私の音波で死なないなんて……芸術を理解できないのね!」
更にニアは追撃してきた。
スピーカーから発せられる不協和音は徐々に僕らの頭を蝕んでいく。
「こ、殺してくれぇぇッッ!」
「イヤァァァァッ!」
「グゥゥアァァァァッ!」
みんな頭を抱えながらしゃがみ込み、もはや戦闘はこれ以上不可能な状態へと陥っていた。
ゼロのシールドがあってもこの威力。
生で聞けばそれこそ本当に頭が破裂するだろう。
「相変わらず悪趣味な兵器を積んでいるな……」
「貴方よりはマシじゃない?貴方の心臓には核融合炉が搭載されているし」
僕は耳を疑った。
ゼロの身体に核融合炉が搭載されている?
そんなバカな話があるか。
小型化に成功したといえども無理がある。
「……安心しろ。俺が死なない限り爆発する事はない」
「それってゼロが死んだら爆発するって事じゃないか!」
よくそんな爆弾抱えて最前線で戦っていたな。
こっちが恐ろしくなる。
「簡単に死にはせん。それに万が一の為ロックを掛けられる。死ぬ間際に爆破プロセスを解除しておくつもりだ」
「でもそれって即死した場合には発動しないんじゃないのか?」
「…………即死はせん」
肯定してるじゃないか。
これは絶対にゼロを死なす事はできないぞ。
島が吹き飛んでしまう。
「ちょっとちょっとぉ、私を無視してお話に夢中なの?」
「ゼロツー、お前を殺す方法は簡単だ」
「へぇ……じゃあやってみなさいよ。できないから反撃の一つもしないんでしょう?」
「情けを掛けてやってただけだ。そんなに死にたいなら今死ね」
ゼロが指先をニアへと向けると、一本の細い光線が伸びた。
青肌の男の時と同じようにまたこれで即死かと思ったら、ニアに触れる寸前で光線は霧散した。
「なにッ!」
「ふふふ、私が昔と変わらないとでも思ったのかしらぁ?貴方のそれ、量子分解光線でしょう?当たればどんな物体であろうと分子レベルにまで分解される。でも……光線であることには変わりないわ。つまり……光を屈折させてしまえば当たらないってことなのよぉ!アッハッハッハ!」
なんだか分からないがとにかく凄い光線らしい。
しかしニアは対策済みだ。
ゼロの顔を見ると焦っているどころか冷静そのものだった。
「何よその顔。何をやっても無駄よ!私には――」
ニアの言葉は最後まで紡がれることはなかった。
ゼロの片腕が光を帯びた剣となり、それがニアの胴を薙いだのだ。
上下真っ二つにされたニアはそのまま地面に倒れこみ、ピクリとも動かない。
「だらだら喋っている暇があったら、攻撃する手を止めない事だな」
高速で移動したゼロが一撃でニアを殺した。
できるなら最初からやれよとはみんな思ったが、誰一人として口には出さなかった。
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