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だから僕は人間を辞めた  作者: プリン伯爵『虹色魔導師は目立ちたく無い』発売中!


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第25話 戦闘型新人類

ゼロが両手を開くと腕だけでなく胸や膝も変形しいくつもの銃口が露わになった。

全身兵器とは良く言ったものだ。

歩く兵器庫と呼んでもおかしくはない。


地震のような轟音と共に雨あられと発射された鉛玉やレーザー、果ては小型ミサイルが照準の合わせられたターゲットに向けて飛んでいく。

電磁シールドも何のそのといった具合に突き抜けて、自動機銃や砲台は木っ端微塵に粉砕されていった。


「す、すげぇぞゼロ!」

剛田さんは興奮しているのか目をかっ開き次々と煙が立ち昇る設置兵器をずっと見ていた。


僕も手を貸したいところだが、これでは邪魔になってしまうだろうと何もせずゼロが片っ端から破壊していく様を見届ける事にした。


時間にして一分。

発射され続けた兵器はなりを鎮め、また元の人間体へと戻ったゼロはいつもの表情だった。


「いくぞ」

ゼロがただその一言を告げると、船頭がエンジンを吹かして一気に加速させる。

これで島の中にいるラムナスも気付いたはずだ。

ここからは特に時間との勝負となるだろう。


恐らく各地に点在する新人類を全てこの島へと戻るよう命令を飛ばしているはずだ。

増援が来る前にラムナスを殺さなければならない。



「大我、島の中には俺と同じ戦闘型が何体もいる。ある程度は俺が排除してやるが、全てを受け持つのは不可能だ」

「ああ、分かっているよ。俺は腕がもげても足がなくなってもラムナスの所まで這いずって行く」

「痛覚は遮断しておけ。でなければ痛みで動けなくなるぞ」

ゼロに言われて僕は頭の中で痛覚遮断のプログラムをオンにしておいた。

言われるまで忘れていたな。

もしそのままだったとしたらゾッとする。


「特に肌の色が独特な奴は完全に人間社会に溶け込むつもりがない戦闘狂だ。気を付けろ」

「そんな奴がいるのか?」

「いる。島から外に出るつもりがない奴らだ。そいつらは俺と同等かそれ以上の戦闘力をもつ。お前程度では一瞬で殺されるぞ」

そんな恐ろしい奴がいるなんて、本当にゼロを味方につけておいて良かった。

ゼロですら僕では足元にも及ばないのにそれ以上だなんて、化け物か?




「ぐあぁぁぁッ!」

突然別の船に乗っているメンバーの一人が叫び声を上げた。

何事かと振り返ると肩から血を流して呻いている。


「チッ!急いで着岸しろ!奴ら撃ってきてやがる!」

剛田さんの言葉を聞き咄嗟に島の方へと顔を向けると、数人の新人類が武器を片手にこちらを見ていた。

まだ一キロの距離はある。

この距離で当ててくるなんて、狙撃手でもいるのだろうか。


「厄介な……その程度の武器で俺を殺せると思うなよ」

今度はゼロが"電子連装砲桜弐式"を島へ向かってぶっ放した。

届いているらしく何人かの新人類が倒れていくのは見えた。


弾薬が尽きると、片腕をガトリングへと変形させて相手に撃たせる暇を与えなかった。


「このまま乗り上げるぞぉぉぉ!」

船は加速したまま島の港へと突っ込んでいく。

僕らは衝撃に備え頭を低くし手すりを強く握る。


下から突き上げるような衝撃と共に船は着岸した。

各々武器を手に持ち周囲を警戒しながら下船していく。


僕もプラズマライフル片手に船を降りると、構えながら皆が降りるまで周囲を見回す。


「もう気付かれているはずだ。増援が到着するまでおよそ一時間。時間との勝負だぞ」

「ああ、分かってる!行きましょう剛田さん!」

「よし!全員準備はいいな!突撃ぃー!」


新人類は島の各所から姿を見せた。

僕らを見つけると同時にレーザーライフルやロケットランチャーを構える。

しかし彼らより先にゼロが腕を変形させ新人類を蜂の巣にしていく。

僕らの出番は殆どなかった。


ゼロ一人で島を制圧できるのではないかと思えるほど、次々に新人類を倒し余裕の表情を見せていた。


「ラムナスは島の中央にある宮殿にいる」

「分かった。このまま固まっていけば大丈夫だな?」

「ああ……戦闘型が出てこない事を祈れ」



僕らは集団で宮殿を目指した。

中央に近付くにつれ、新人類の反撃は激しくなっていった。


「クソッ!数が多い!このままだと宮殿に辿り着く前に――ガッ――」

「ウグッ――」

「足がァァッ!」

一人、また一人と被弾しその場に倒れていく。

彼らを助ける余裕などない。

みんな覚悟を決めているんだ。

僕は歯を食いしばりながら前だけを見た。


「足を止めるな!ラムナスを殺すまでは……絶対に!」

剛田さんも振り返りこそしないが悔しさが声に表れていた。

仲間が死んでいくのをすぐ近くで見ているんだ。

誰だって辛い。


「下がれッッ!」

ゼロが突如僕らの前で立ち止まると電磁シールド展開する。

僕の視界は白に染まった。


「なんだ!?」

剛田さんは狼狽えていたが僕には一瞬見えていた。

これも義眼であったお陰だろう。


ゼロがシールドを張ると同時に高出力のレーザーが僕らを襲った。

コンマ数秒遅ければみんな蒸発していたはずだ。


「た、助かった」

「やはり出てきたか……」

僕らの前に立ち塞がるのは一体の新人類。

青い肌をしたソイツは片腕にレーザー砲が取り付けられてあった。


「まさかアレが……」

「俺と同じ戦闘型だ。俺より前に出るなよ」

頼まれても出ないよ。

あんな高出力のレーザーが直撃でもしようものなら、身体が消し飛んでしまう。



「オイオイオイィィ!ゼロワン!アンタなんでそんな奴らと一緒にいるんだ?」

「……お前こそ未だにこの島に残っているとはな」

どうやらゼロと因縁のある相手らしい。

僕らは黙って彼らのやり取りを見守る事にした。


「まさかとは思うが……アンタ、人間に手を貸しているのか?」

「そのまさかだとしたら何だ」

「ギャハハハハッ!よえぇ人間に手を貸して何やってんだよオイィィ!」

「俺の自由だ」

「……正気か?ラムナス様に反旗を翻したってわけか!?イイネェェェ!アンタとガチでぶつかり合えるなんて思わなかったぜぇ!?」

青肌の新人類は喋り方といい見た目といいガラの悪い輩だ。

新人類にも色んなタイプがいるらしい。


「死にさらせぇゼロワンンンンッ!」

先程より更に火力が上がったレーザー砲がゼロのシールドに直撃すると、またも視界は真っ白に染まった。

とんでもない威力だ。

シールド越しでも熱を感じられるほどである。


しかしレーザー砲がシールドを貫けることは無かった。


「馬鹿の一つ覚えか?だからお前は失敗作だと言われているんだ」

「うるせぇぇ!死ねッ死ねッ死ねぇぇ!」

レーザー砲を何度も放ちその度に視界は白く染まる。

数発のレーザーを撃ち終わると青肌の男は肩で息をする程に疲弊していた。


「貴様の弱点はそこだ。対艦レーザーを何度も放てるエネルギーなどその小さな身体では収まりきらん。だから貴様は失敗作だというのだ」

「だ、黙れぇぇぇ!」

ゼロがシールドを解除すると同時に指先をその男へと向けた。


一筋の光が男の心臓を貫くと、時が止まったかのように男は動きを止め膝から崩れ落ちた。


「終わりだ。行くぞ」

「え?いや、え?あれって……戦闘型なんじゃないのか?ゼロと同格だっていう……」

「俺が負けるとは言っていない。ここにいる連中は凶悪な威力を持つ兵器を内蔵してはいるが、欠点が大きすぎて適切に対処さえすれば問題ない」


あまりに呆気ない。

強者感を出しておきながら即座に敗れ去った。

戦闘型新人類が強いのか弱いのかイマイチ分からずじまいだった。


チラッと後ろを振り向くと剛田さんや柊、佐助とみんな呆気にとられた顔になっている。


「おい、何をしている。時間はあまりないぞ」

「あ、ああ。行くよ」

「フン」

全然着いてこない僕らに気付いたのかゼロは振り向き鼻を鳴らす。


ゼロ、どんだけ強いんだよ……。

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