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だから僕は人間を辞めた  作者: プリン伯爵『虹色魔導師は目立ちたく無い』発売中!


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第23話 誰も知らない秘密

作戦決行の当日、僕らはみな忙しく準備を進めていた。

夜になればいよいよ作戦開始となる。

それまでに武器の調整や船の動作チェックを終わらせておかねばならない。


陽動の為の爆破を担当する者達と剛田さんは密に連絡を取り合い、秒間隔でタイミングの調整をする。


そして僕は、個人端末で理沙と連絡を取り合っていた。


「理沙、さっきの話は本当か?」

「はい……長良さん、研究室に籠もって丸一日経つんですけど一向に出てこないんです」

長良の事だ。

また何かの研究に没頭しているに違いない。

何もこんな時まで研究に精を出さなくてもいいのに。


「多分だけど、新しい発想でも思い浮かんだんじゃないか?だからなかなか研究室から出てこないとか」

「違うんです……だって長良さん、研究室に絶対入ってこないようにって鍵まで掛けているんです」

鍵を掛けるくらい普通だと思うけどな。

理沙の話はまだ続いていた。


「それに、長良さんの首元に……」

「首元がどうした?」

「バーコードみたいなマークが付いていたんです」

理沙の言葉で僕は固まった。


バーコードが首元に印字されているのは、脳を人工物に変えた者と人造人間(アンドロイド)だけだ。

長良は人間のはず。


「それは見間違いじゃなかったんだな?」

「はい……。私どうすればいいですか?もし長良さんが新人類と繋がっているんだとしたら……この研究所に避難してきた人達みんな殺されてしまうんでしょうか……」

考えたくはないが、可能性としては低くない。

長良が人間じゃないなんて、そんな事が有り得るのだろうか。

アクセス権限もレベル5を持っていて、新人類というのはない。

人造人間(アンドロイド)というのは考えた事もなかったが、アレほど精巧な造りのロボットなど存在するのか?


「大我さん……」

「大丈夫だ。僕からも長良に連絡をいれてみる。理沙ちゃんは念の為武器は持っているか?」

「はい、小さい銃ですけど」

「十分だ。万が一長良が襲い掛かってくるような事があれば、確実に頭を撃ち抜くんだ。脳が活動を停止すれば新人類は死ぬ」

「はい、そうします」


理沙との通話を終えるとすぐに長良へと通話をかけた。

数コール待ってみたが、一向に出る気配がなかった。


本当に人造人間(アンドロイド)なのか?

研究室で何をやっているんだ。


今すぐに戻りたい気持ちを抑え何度も何度も通話を掛けていると、僕の表情を見てか柊が近寄ってきた。


「どうされたんですか?」

「あ、いや……ちょっとね」

この話は誰かにするものでもない。

だから僕は適当に話を躱した。

柊もそんな僕の考えを汲み取ったのかそれ以上言及してくることはなかった。


今夜作戦実行だというのに胸騒ぎがする。

なんとか繋がってくれとの思いで長良に何度も通話を掛けた。



もう何度めか分からないコールで遂に長良が出た。


「はい、なんでしょうか?」

「やっと出たか。おい、長良!単刀直入に聞く!お前は人間なのか!」

これで違うと言われればどうしようと考えていたが、それは奇遇に終わった。


「人間ですが……突然何を言うのかと思えば」

「本当なんだな?」

「ええ、()()人間ですよ」

なんだ、理沙の早とちりだったようだ。

そうだよな、長良が人間じゃない訳ないんだから。


「そっか。いや、悪かったよ。もう今夜作戦決行でさ、変に気が昂っていたのかも」

「まあ人間の頃の感覚というのはいつまでも残りますからね」

「理沙も不安に思っているようだから、うまい具合に安心させてやってくれ」

「ええ、分かりました。それではご武運を」

通話を終えると一抹の寂しさがやってくる。

これが長良と最後の会話かと思うと、少しだけ笑えてしまった。

長良はドライだ。

あまり感情を表に出すようなやつじゃない。

短い付き合いだったが、なんとなく長良の人柄は分かっているつもりだ。



――――――

通話を終えた長良は胸を撫で下ろした。


今しがた手術を終えたばかりで、個人端末を見てみれば数十件もの通知が残っていたのだ。

流石に何かあったのかと思っていると何十回目かも分からない通話が飛んできた。

画面に表示されているのは藤堂大我の名前。

やはり何かあったのだとすぐに応答すると、返ってきた言葉は"お前は人間か"であった。


一瞬心臓が大きく跳ねたが冷静に返答すると大我は納得したのか、再度問うてきた。

また同じ答えを返すと、今度は信用したのか謝罪してくる。


どうしていきなり本質を投げ掛けてきたのか疑問に思っていると、ただ単に気が昂っていただけと返答する大我。

突然相手の心情を読み取る能力が備わったのかとも焦ったが、冷静に考えればそんな事有り得ないのだ。


だから長良は()()と言葉を返しておいた。


この科学が発展した世界でそんな非現実的な力は考えられない。


通話を終えると長い溜め息をつく。


手術を終えたばかりでまさか見計らったかのように人間か否かを聞いてくるとは大我の勘も捨てたものではない。


「お待たせしました理沙ちゃん」

廊下に出ると不安そうな表情で一歩後ずさる理沙がいた。

大我から不安になっているかもと聞いていた為、長良はできるだけ優しい声色で話し掛ける。


「すみません、少し研究に熱を出してしまって」

「………………」

理沙は口を開かずジッと長良を見つめていた。


「どうしたんですか?」

「……長良さんは……人間ですか?」

またこの質問だ、と長良は慎重に言葉を選ぶ。


「もちろんです。なぜそう思ったんですか?」

「……長良さんの首元」

長良は咄嗟に首元を押さえた。

今はもうバーコードは無いのだが、見られては不味いという先入観から、考えるより先に手が動いていた。


「やっぱり……」

「いえ、少し虫が止まったみたいでして。ほら、見てください。ないでしょう?」

長良は髪をかきあげ、首元を見せた。

そこには何の変哲もない肌が露出している。


「無い……うそ……私見たんです!長良さんの首元にバーコードが――」

「恐らく見間違えでしょう。アレは擦っても取れる代物ではありませんし、実際私の首元にはそんなものありません。なんなら触って確認しても構いませんよ?」

長良はここぞとばかりに理沙の顔の近くへと首元を近付けた。

間近で見てもバーコードなんてあるはずもなく、理沙は困惑した表情を浮かべた。


「……すみません、見間違いだったみたいです」

「大丈夫ですよ。私は人造人間(アンドロイド)に間違われたからといって怒るほど器量の狭い人間ではありませんから」

理沙は安心したのかホッとしたような表情になっていた。

しかし長良の顔は笑顔を貼り付けたような顔で、背中には若干の汗が滲んでいた。



「さあ、地下の避難所に急ぎましょう。もうこの研究所にいつ新人類が来てもおかしくはありません」

「わかりました」

「先に地下へ行っててもらえますか?大事な物だけは持っていきたいので」

そう言いながら長良は研究室へと戻ると、また溜め息をついた。


(ふぅ……まさか見られていたなんて。ですが何とか手術の事はバレていないようですね)

長良は心の中で理沙が何の研究をしていたのか言及してこなくて良かったと一安心していた。




長良の身体は以前とは違う。

重い物を持つのも一苦労だ。

長年の感覚が染み付いているのか、いつも通りに研究データの入った端末を持ち上げようとすると、思っていた以上に重く足元がふらつく。


(慣れるまでは時間がかかりそうですね)


持てる物を全て持つと、研究室の電気を消していく。

最後に一枚の紙切れを机の引き出しから取り出すと、シュレッダーにかけた。

これでもう誰も知る事はない。


細切れにされた一枚の紙には"人造人間(アンドロイド)計画"と書かれていた。

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