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だから僕は人間を辞めた  作者: プリン伯爵『虹色魔導師は目立ちたく無い』発売中!


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第21話 人としての在り方

「おい、お前達人間だな?」

僕が男女の前に出ていくと、二人は呆然とし固まった。


目が光っていて人間なはずが無い。

そう思っているのは彼らの表情を見れば分かった。


「た、助けて……」

「し、新人類がこんな所まで……」

武器も持たず二人して足が震えている。

目が光った男が突然現れればそれが普通の反応だ。



「お前達は運がいい。僕は今巡回中で武器は持っていない。死にたく無ければさっさとここから出ていけ。ここは新人類が基地として使う」

「は、はい!!」

「行こう!!」

それっぽい事を並べて威圧すると二人は飛んで逃げるようにして去って行った。

新人類は武器を持っていなくとも強いからな。

怖いのは当たり前だ。

別に怖がらせるつもりはなかったが、これ以上ここに滞在されれば爆破できなくなってしまうし仕方ないと割り切ろう。




二人が完全に去ったのを確認し僕は中央の柱に爆弾を設置した。

後は隠れ家に戻るだけ。

佐助と柊も無事に設置できているといいけど。



僕はまた身を隠しながら隠れ家へと帰った。




「え?二人がまだ戻ってきていないんですか?」

僕が隠れ家に戻った時にはまだ二人の姿はなかった。

時間にして既に一時間が経過している。


「大我が一番早かったみたいだ。あの二人も無事だといいんだが……」

不安になるのも当然だろう。

いくら夜で目立ちにくいとはいえ、新人類がうろつく街を歩くのは危険極まりない。

特に佐助の父親は気が気ではないだろう。


「もう少し待とう。三か所に爆弾を設置するからな。時間はそれなりにかかるはずだ」

剛田さんはそう言うとまたテーブルに置かれてある地図へと視線を落とした。

万が一いつになっても戻ってこなければ僕が探しに行こう。

僕なら一番安全に探しにいけるから。



それから三十分ほどして柊が戻ってきた。

新人類に見つかりかけて隠れていたらせいで時間がかかったそうだ。

それなら佐助が遅いのも理解できる。



しかし待てど暮らせど佐助は戻ってこなかった。

既に二時間が経過している。

流石に心配になってきたのか剛田さんもソワソワし始めた。



「佐助はまだなのか……」

「何かあったのかもしれません。僕が見てきますよ」

「すまねぇ大我、頼めるか?」

僕は頷きライフルを肩から掛けると佐助の設置するはずだったビルへと走った。

いくらなんでも遅すぎる。

それほど遠い場所でもないし、隠れるといってもこれほど長く隠れているのもおかしな話だ。



義眼である眼を起動しレーダーで佐助の位置を探ると、ビルの中にいる事が分かった。

すぐにレーダーをストップさせるとプラズマライフルをいつでも撃てるように構えながら少しずつビルへと向かう。


義眼は優秀な機能を沢山兼ね備えているが、脳への負担が大きく長時間の使用は推奨されていない。

特にこの後戦闘が控えているかもしれないと考えるとレーダーをずっと起動しておくのはリスキーだった。




ビルの前までくると、そこは物音一つない静かな場所だった。

慎重に歩を進めゆっくりとビル内のロビーへと入っていく。

このビル内にいるのは分かっているが、声を上げて呼ぶ事はできない。

万が一ここに新人類がいるのなら鉢合わせしてしまう危険性があるからだ。


ロビーをくまなく探すがやはり見つからない。

何処かに隠れているらしく、探すのも骨が折れそうだ。


三階まで上がってくると、コツコツと固い靴を踏み鳴らすような足音が聞こえてきて僕は咄嗟にライフルを構えた。

こっちは階段の踊り場だ。

このままここにいてもいずれは鉢合わせる。


僕はライフルの銃口を正面に向けて息を潜めた。

影が見えてくると緊張感が高まる。



角から現れたのは新人類だった。

踊り場にいた僕に気付いたのか素早くこちらを振り向く。


「ん?なんだお前」

「そっちこそ」


お互い数秒無言でいると、新人類の男が先に口を開いた。


「俺に武器を向けているのはなぜだ」

「人間かと思ってね。まさか同族だとは思わなかったけど」

「……このビルに入って行く人影を見つけたから俺はここにいる。お前こそなぜここにいる」

すぐに襲い掛かってこないと分かり僕はライフルを下ろす。


とりあえず適当に嘘をつくしかないな。

なんとなくだが目の前の男は普通の新人類ではなさそうな雰囲気がある。


「あー……知らないのか?僕の方にも命令があったんだ。ここに逃げ込んだ人間を見つけ次第捕縛しろってね」

さて、どんな反応を見せるだろうか。


「……貴様どこの部隊所属だ?」

「えーっと……ア、アルファだ」

「……識別番号は」

もう無理だ!

そんなもの分かるはずがない!


ライフルの銃口を向けると目の前の男の姿がブレた。

文字通りブレたのだ。


一体何が起きた、と反応する前に僕の身体は勢いよく壁に叩きつけられていた。



「ガハッッ――」

あまりの衝撃に僕は持ってきたライフルを落とす。


「貴様……名を騙るとはいい度胸をしているな」

「何、をするんだ……」

「それはこちらの台詞だ。何を考えている。人間が我々新人類の真似をしているのかと思えば、身体は完全に機械。貴様一体何者だ」

なるほど、さっきの壁に叩きつけたのは人間かどうか調べる為だったのか。

てことは人間だったら死んでるって事じゃないか。

この時ほど機械の身体で良かったと思った日はない。



「さっさと答えろ。貴様の首をへし折っても構わないのだぞ」

今の僕は目の前の男に首を捕まれ壁に押し付けられている。

足もつかない高さに押し付けられているせいで、反撃するのが難しかった。


「僕は……新人類、だ」

「ならばなぜ名を騙る。この俺を前にそんなフザケた真似をしたのは貴様が初めてだ」

「アンタこそ名乗ったらどうだ……人に名を聞く時は自分からって言うだろ」

「生意気な……このままここで殺してやる」

「ま、待てッ!アンタは本当に今の新人類が正しいと、胸を張って言えるのか!」

もうこうなったらヤケだ。

とにかく手を離して貰わなければ逃げる事すら叶わない。


「……何が言いたい」

やぶれかぶれの言葉で男は食い付いた。

もしかしてラムナスの命令に完全同意していない新人類もいるのではないか?という疑問が僕の中に生まれた。


「アンタはどうして人間を殺す?理由を教えてくれよ」

「……それがラムナス様の指示だからだ」

「ラムナスが全て正しいと思っているのか?今まで共存してきたのに何故今になって新人類が躍起になっているんだ」

「……それは俺の考える事ではない」

「じゃあラムナスの選択は正しいと、本当にそう思っているんだな?」

「………………」

男の手が緩むと、地面に足がついた。

このまま逃げる事もできる。

しかし、もしかすると目の前の男を説得できるかもしれない。


「ラムナスは人間を滅ぼし新人類だけの世界を作ろうとしているんだろ?なぜ今になってかは知らないけどな」

「……それがどうした。人間は今まで新人類を冷遇したきた。自分達の生み出した技術によって自らの地位を脅かされてくると掌を返し新人類のアクセス権限を最低まで落としたのは人間だ」

「それは人間が弱いからだ。人はいつだって弱者なんだ。地位や自身の価値が落ちると思えば誰でもそうなるさ。それが人間なんだよ。新人類みたいになんでも割り切って考えられる程人間は良くできていない」

「………………貴様も新人類ではないか。なぜ人間の味方をするような発言をする」

「僕はついこないだまで人間だったから。だから人間の悪いところも良いところも理解している。少なくとも昔から新人類として生み出されたやつよりかはな」


新人類みたいに完璧な存在は人間ではない。

自分達の足りない部分を補う為に生み出されたのが新人類だ。

そもそも新人類なんてものはあくまで呼称でしかない。

機械の四肢を、人工の五感を、手に入れた人達をそう呼ぶ。

だから新人類なんて呼んでいるけど元は人間だった人達なんだ。

目の前の男も恐らく過去には人間として生きてきた時代があったはずだ。



僕は男の目を真っ直ぐに見つめ、事実をぶつけてやった。

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